猫ちゃんにとって宿命ともいえる病気、それは「腎臓病」です。
腎臓病は命に関わる病気なのに、早期発見がとても難しいことが知られています。大切な猫ちゃんの健康を守るため、飼い主さんがすべきことは何なのでしょうか?
今回は、猫ちゃんの腎臓病の症状や治療法、予防方法についてわかりやすく解説します。
猫が腎臓病になる原因
猫ちゃんが腎臓病になりやすい原因は、身体の構造にあると考えられています。
猫ちゃんの祖先は、乾燥した砂漠に住んでいました。水の少ない環境でも生きていけるように、体内の水分をなるべく失わないようにしなければなりません。
そこで活躍するのが「腎臓」です。
腎臓は老廃物をオシッコとして出す、身体の水分量を保つ、血圧を調整するなどの働きがある臓器です。
体内で水分を有効に利用できるように、腎臓で血液をろ過して、老廃物だけを凝縮した濃いおしっこを作ります。この仕組みが、猫ちゃんの腎臓に負担をかけていると考えられています。
猫の腎臓病の症状
猫ちゃんの腎臓病には「急性腎障害(急性腎不全)」と「慢性腎臓病(慢性腎不全)」があります。
急性腎障害(急性腎不全)の症状
急性腎障害は脱水や中毒、感染症、尿結石が原因で急激に腎臓の機能が低下する病気です。
「おしっこが出ない」「食欲がない」「脱水症状がある」「痙攣している」などの症状がありますが、初期段階で治療を行えば回復が見込めます。
慢性腎臓病(慢性腎不全)の症状
慢性腎臓病は腎臓がダメージを受け続けることで、少しずつ腎機能が衰えていき、最終的には機能しなくなる病気です。
初期症状がほとんど見られず、気づいたときには「かなり進行していた」というケースも少なくありません。
猫ちゃんの慢性腎臓病の進行は4つのステージに分けられます。腎機能が25%以下になるまで、症状がほとんどないというのは驚きですね。
ステージ |
腎機能 |
症状 |
ステージ1 |
33%程度 |
・症状なし ・尿検査で異常がみつかることも |
ステージ2 |
25%以下 |
・尿の量が増える ・水をよく飲む |
ステージ3 |
10%以下 |
・口臭がある ・口内炎ができる ・食欲がなくなる ・体重が減る ・嘔吐 ・下痢 ・毛づやがなくなる |
ステージ4 |
5%以下 |
・尿毒症が悪化して、おしっこが出なくなる ・ほとんど起き上がれない ・痙攣 ・意識の低下 |
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猫の多飲多尿には要注意!
「多飲多尿」は猫ちゃんの慢性腎臓病のサイン。
腎機能が低下すると、オシッコを凝縮できなくなり、薄いオシッコを大量にするようになります。水分不足になるので、水もよく飲みます。
多飲多尿の症状に気づくには、普段からオシッコの量や回数、水を飲む量を観察しておくことが大切です。多飲多尿に気づいたら、様子を見ずに、動物病院を受診するようにしましょう。
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猫の腎臓病の治療法
猫ちゃんが腎臓病と診断されたとき、どのような治療が必要になるのでしょうか?
「急性腎障害(急性腎不全)」と「慢性腎臓病(慢性腎不全)」では治療法が異なるので、それぞれ解説します。
急性腎障害(急性腎不全)の治療法
急性症状がある場合は、入院して治療を行います。脱水症状があれば点滴、感染症があれば抗生物質を投与するなど、原因と症状に応じた治療を行います。
早期発見・早期治療で腎機能の回復をめざしますが、回復しなかった場合は慢性腎臓病に移行することがあります。
慢性腎臓病(慢性腎不全)の治療法
いまのところ、慢性腎臓病を根治する薬や治療法はありません。慢性腎臓病によって壊れてしまった腎機能は、残念ながら治療によって回復することはありません。
慢性腎臓病の治療は、血液中の老廃物を排泄しやすくしたり、病気の進行を緩やかにする治療が中心になります。
・点滴療法
水分を補給したり、腎臓病の進行を抑えるための点滴を行います。週に1回以上の頻度で点滴を行う必要があるので、飼い主さん自身が自宅で点滴をすることもあります。
・食事療法
老廃物が身体に溜まりにくくして腎臓の負担を減らすために、ナトリウムやリン、タンパク質の量が調整された腎臓病用の療法食を与えます。
・薬物療法
タンパク尿や貧血、胃潰瘍など、腎臓病による症状を抑える薬が処方されます。老廃物を吸着する活性炭のサプリメントなども処方されることがあります。
・透析治療
特殊な機械が必要になりますが、血液透析や腹膜透析を行う動物病院もあります。
猫の腎臓病の予防法
猫ちゃんは腎臓病になりやすい。しかも、気づきにくくて治らない……。猫ちゃんが腎臓病で苦しむことのないように、腎臓病の予防法を知っておきましょう。
飲水量を増やす
腎臓の負担を減らすために、普段からたくさんお水を飲んでもらいます。
尿路結石の予防にも繋がるので、水飲み場を複数箇所に用意したり、ウェットフードをトッピングしたり飲水量を増やす工夫をしましょう。
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オシッコの量と回数を観察する
慢性腎臓病は「オシッコの量」で気づくことができます。普段からおしっこの量を観察するようにし、いつもより増えたときは要注意です。
また、オシッコの色やニオイでも変化に気づくことができます。多飲多尿の症状が出ると、色が薄くて、独特のニオイの少ないオシッコになります。
中毒の原因になるものを置かない
ユリなど、猫ちゃんが口にすると中毒を起こし、腎臓にダメージを与えてしまうものがあります。
猫ちゃんの生活スペースは常に清潔にし、中毒症状を起こすものは置かないようにしましょう。
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健康でも1年に1回は健康診断を
特に不調がなくても、1年に1回は健康診断を受けましょう。7歳を過ぎたシニア期ころから腎臓病のリスクが増えるので、半年に1回の健康診断がおすすめです。
初期症状がないため、見た目からは気づきにくい慢性腎臓病ですが、血液検査や尿検査で発見できることもあります。
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まとめ
猫ちゃんは具合が悪くても、それを隠そうとする習性があります。
自然界では弱っている、具合が悪いとわかってしまうと、敵に狙われやすくなってしまうためです。
そんな猫ちゃんなので、体調の変化になかなか気づけないかもしれません。飼い主さんが、猫ちゃんの異変を見逃さないように、注意深く観察するしかないのです。
まずは、猫ちゃんの飲水量、おしっこの量や回数などの観察からはじめてみましょう。「猫の健康手帳」にメモしておくと、体調の変化にも気づきやすくなります。
猫ちゃんとの暮らしに、ちょっとだけ新しい習慣を取り入れてみませんか?
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