【獣医師執筆】高齢猫の健康管理ガイド|毎日できるケアと見逃したくない体調サイン

【獣医師執筆】高齢猫の健康管理ガイド|毎日できるケアと見逃したくない体調サイン

猫は7歳を過ぎると様々な病気にかかりやすくなります。そのため、7歳ごろからシニアの始まり、中高齢期とされています。11歳以上を高齢期、15歳以上を老齢期に分類し、ステージに合ったケアが必要になります。今回は高齢猫の健康管理について解説します。

高齢猫の定義と加齢による体の変化

高齢猫の定義と加齢による体の変化

猫の「高齢」は何歳から?

猫の平均寿命は近年延びる傾向にあり、15歳以上の猫が増えてきています。猫は7歳ごろから体の衰えが始まり、慢性腎臓病や関節炎、内臓疾患などシニアに関連する病気が現れ始めます。そのため、7歳を中高齢期とし、シニアの始まりとしています。また、11歳以上を高齢期、15歳以上を老齢期と分類されています。

加齢に伴って変化する体の機能(代謝、感覚、免疫、腎臓など)

人も加齢により、体の機能が落ちてきます。それは猫も同じです。猫は7歳ごろから加齢に伴う変化が現れ、それに伴い関節疾患、腎疾患、内分泌疾患、腫瘍といった様々な病気の発生が多くなります。

代謝は若いころと比べても低下するため、太りやすくなっていきます。また、関節炎などにより活動量が低下したり筋力が低下するため、肥満になる傾向があります。それにより、糖尿病などの内分泌疾患も増加します。腎臓は加齢に伴い、少しずつダメージを受けるため、早い猫では7歳前後から慢性腎臓病の症状が現れます。免疫の変調も現れるため、腫瘍細胞を除去できにくくなり、様々な腫瘍が発生しやすくなります。

病気の兆候がわかりにくい理由

猫は病気を隠す動物と言われています。そのため、猫は亡くなる直前に姿を消すことはよく知られています。そして、亡くなる直前まで元気だったということも少なくありません。

高齢期の猫を飼っている飼い主さんは、「高齢だから食欲も少なくなったり、寝ていることが多くなった」と言われることがありますが、実は病気によって起きていることも少なくありません。しかし、加齢によるものと思い込んでしまうと動物病院に行かないため、目に見える症状が出た時にはすでに手遅れの状態となってしまっています。

毎日できる!高齢猫の健康チェックポイント

毎日できる!高齢猫の健康チェックポイント

食欲・飲水量・排泄の変化を見る

普段から日々の食事量や飲水量、排泄の状態を把握しておくと、異常に早く気づくことができます。今ではこれらをすべて記録してくれるデバイスも販売されているため、そこから異常に気づくこともできます。

被毛・体重・歩き方のチェック

高齢になると、見た目もかなり変わってきます。これは代謝や腎機能、関節などの影響を少なからず受けるからです。

被毛は毛艶がなくなり、ごわごわした感触になります。グルーミングも難しくなるため、毛玉ができることもあります。逆にかなりの高齢でもつやつやな猫もいますが、甲状腺機能亢進症がある場合もあります。

体重や体型も変化します。活動量が減るため、食欲がしっかりしている猫の場合は肥満体型になってきます。しかし、慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症、糖尿病などの疾患があると、急激な痩せが起こることもあります。

猫の多くが、加齢により関節炎を患っていることがわかっています。痛い方をかばった歩き方やとぼとぼ歩きになることがあります。また、動きたがらなくなったり、ジャンプを躊躇するようになります。

ふだんとの違いに早く気づくコツ(行動・鳴き方・睡眠時間)

高齢になると、行動面でも変化が現れます。猫も人と同じように認知機能が低下するため、昼夜逆転や夜鳴き、徘徊が起こることもありますし、トイレの場所がわからず粗相してしまうことも増えてきます。聴覚や視覚も衰えるため、家族を認識できずに不安になり、不安げな鳴き声をあげたり、かなり大きな声で鳴くこともあります。

睡眠時間も長くなります。猫は元々よく寝る生き物ですが、成猫の時は14〜16時間くらいの睡眠時間が、高齢になると18〜20時間ほどに延びます。そのため、「ずっと寝てる気がする」と飼い主さんも思われるかもしれません。

食事・栄養管理でできる健康サポート

食事・栄養管理でできる健康サポート

シニア用フードに切り替えるタイミングと理由

猫のライフステージは、7歳から高齢の仲間入りとされているため、フードの種類も7歳以上や11歳以上、15歳以上というように分かれています。高齢になってくると消化機能が低下したり、代謝が低下することで肥満になったりするため、消化がよくカロリーを抑えたフードになっています。また、腎臓病が増えてくる年齢でもあるため、リンなどを制限していることフードが多くなっています。関節などへ配慮されており、オメガ3脂肪酸を含む食事もあります。

シニア用フードは、猫の年齢に合わせて考えられているフードなので、「まだ若いから若い猫のご飯で十分」と思わずに、年齢に合わせた食事への切り替えが必要です。

嗜好性と栄養バランスの両立

シニアフードは腎臓などへの配慮から、うまみ成分であるリンが制限されています。そのため、今までのフードと比べると食いつきが悪いと感じる飼い主さんもいると思います。特に腎臓病の療法食になると、リンをかなり制限しているため、まったく食べなくなったと言われることもよくあります。だからと言ってリンを多く含む食事を与えてしまうことは、猫にとってよくありません。食べが悪い場合、メーカーを変えてみたり、リンの少ない食材を利用したトッピングをしてみたり、ウェットフードを使ってみるのもよいでしょう。

サプリメント(オメガ3脂肪酸、グルコサミンなど)の活用

シニアフードだけでなく、もうちょっと進んだケアをしたいという方にはサプリを使ってみてはいかがでしょうか。オメガ3脂肪酸などの抗炎症成分などを含むサプリは、シニア期におすすめのサプリです。ただし、サプリはあくまで健康食品であるため、必ずしも効果を期待できるものではないことを頭に入れておく必要があります。また、治療中の場合、治療の補助にはなりますが、サプリだけで治療できるものではありません。

高齢猫の運動とストレスケア

高齢猫の運動とストレスケア

シニア猫でもできる無理のない運動の工夫

シニア猫の多くが変形性関節症にかかっているため、痛みからあまり動きたがらなくなります。動かなくなると肥満傾向になり、さらに関節に負担がかかる悪循環に陥ってしまいます。そのため、無理のない範囲で運動することが必要です。ただし、痛みがある猫は鎮痛剤を使用するなどの配慮が必要です。

関節炎のある猫をたくさん走らせたり、ジャンプさせることはよくありません。そのため、少しでも距離を歩くことから始めます。おやつやフードを投げて取りに行かせたり、どこかに隠して探させるのもよいでしょう。

痛みが軽くなったり、体重がコントロールできてきたら上下運動もよいでしょう。スロープや段差の少ない階段を設置したり、落下したときのクッションなどは必要ですが、キャットタワーや棚の上に乗ると、猫のストレス発散にもつながります。

爪とぎや居場所の確保で安心空間をつくる

高齢猫は自分の活動範囲からあまり動きたがらなくなります。そのため、猫のいる場所の居心地をよくして、ストレスがかかりにくくすることが大切です。猫の活動範囲に必要なものを用意します。隠れる場所や爪とぎも置きましょう。爪とぎは、自分の縄張りを主張する行動なので、爪とぎをあまりしなくても置いておくのが望ましいです。

環境の変化に配慮する(模様替え・来客・多頭飼育)

高齢になると認知機能が低下するため、大きな環境変化は混乱を引き起こします。場合によっては、徘徊や粗相などの問題行動が起こることもあります。そのため、あまり大きな環境の変化は望ましくありません。たとえば模様替えをするのであれば、一度に行うのではなく、少しずつ移動するなどの配慮が必要です。

また急な来客も大きなストレスになります。猫が逃げ込めるスペースを確保し、来客には「そっとしておいて」と伝える必要があります。

多頭飼育の場合、他の猫との関係がよければそれほどストレスになりませんが、高齢猫にしつこく付きまとってしまうようであれば、避難させるなどの対策は必要です。猫を飼っている人の中には、「高齢猫に子猫の相手をさせると若返る」と考えている方もいらっしゃいます。子猫は体力が有り余っており、高齢猫にしつこくしてしまうことが非常に多くあります。それだけでも高齢猫に負担となるため、新しい猫を迎える場合はよく考えてからにしましょう。

定期健診と病気の早期発見が寿命を延ばすカギ

定期健診と病気の早期発見が寿命を延ばすカギ

年に2回の健康診断で見つかる初期疾患

健康診断は病気の早期発見にとても重要です。1〜6歳までは年に1回、7歳以上は年に2回の健康診断が推奨されています。高齢猫に多い慢性腎臓病や腫瘍などは、半年の間に進行が見られるため、早期での発見には年2回の健康診断が必要になります。早期に発見することで治療の幅が拡がり、予後も大きく変わってきます。

血液検査・尿検査・血圧・画像診断などの重要性

病気の早期発見には、一つのデータだけでなく、様々な検査のデータを総合して判断する必要があります。血液検査では異常がなかったけど、他の検査で異常が見つかったケースはよくあります。特に慢性腎臓病の場合、腎機能の75%が失われないと血液検査で異常が現れませんが、尿検査や血圧で異常が出てくる場合がありますし、レントゲンや超音波検査でも異常が現れる場合があります。そのため、これらの検査が一度に行える健康診断が重要なのです。ただし、病院によって検査項目が異なるため、どのような検査を行うかは事前に確認が必要です。

気になるサインがあったらすぐに動物病院へ

猫は体の不調があっても、症状を隠してしまう動物です。それは本能的に、敵に不調を悟られたくないからです。そのため、症状が出たときには、すでに末期の状態になっていることも少なくありません。

嘔吐や下痢、元気がない、食欲がないなどの目に見える症状を見せなくても、なんとなく毛艶が悪くなった、水をたくさん飲む、尿が多い、食欲が少し落ちた、なんとなく痩せたなど、ほんの少しの違和感が早期発見につながることがあります。気になることがあれば、すぐに動物病院に相談しましょう。

まとめ:高齢猫の健康管理は「ちょっとした気づき」の積み重ね

まとめ:高齢猫の健康管理は「ちょっとした気づき」の積み重ね

飼い主が毎日見ているからこそできる予防と早期発見

高齢猫は症状を隠してしまいます。ちょっとした変化が、病気の初期症状の可能性があります。ちょっとしたことでも動物病院に相談しましょう。そして、何もなくても年に2回の健康診断が、病気の早期発見につながるポイントです。

高齢になっても快適に暮らせる工夫を続けることが大切

人も高齢になるとバリアフリーにリフォームしますが、それと同じように高齢猫に合わせた生活環境が必要です。関節に配慮して段差を少なくしたり、動ける範囲にトイレなどを設置するようにしましょう。また、今までの生活環境を大きく変えないことも必要です。猫がストレスを感じないように工夫しましょう。


この記事のご感想をお寄せください!(コメントを書く)

このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。


RuffRuff Apps RuffRuff Apps by Tsun
RuffRuff App RuffRuff Apps by Tsun

ハゲにくい猫首輪に替えませんか?

ぽぽねこ公式オンラインショップ
詳しく見る