最近、SFTSというマダニが刺すことで感染する病気がニュースになっています。犬や猫が感染するだけでなく、人にも感染してしまい、死亡率も高い病気となっています。今回はSFTSについて解説します。
SFTSとは?人にも猫にも感染するウイルス感染症

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは
SFTSは「Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome」の頭文字を取ったもので、重症熱性血小板減少症候群と呼ばれています。
人では2011年に中国で報告され、我が国では2013年に初めて報告されました。犬や猫では2017年にSFTSの症例が確定診断され、そこから症例は増加しています。
ウイルスを媒介するのはマダニ
SFTSの原因はウイルスで、マダニによって媒介されます。元々動物では症状がない状態で感染があった(不顕性感染)と考えられています。猫もマダニが咬まれたことで感染することがわかっています。
人獣共通感染症であり、猫から人への感染例もある
SFTSはマダニが媒介する感染症であり、猫もマダニに咬まれることで感染すると考えられています。人も同様にマダニによって感染することがわかっています。
SFTSの恐ろしいところは、SFTSに感染した猫の血液や体液に触れて感染するところです。人から人への感染も報告されています。
日本国内でも発症例が報告されている
2011年に中国で初めて人での報告があり、日本では2013年に確認されました。猫では2017年に症例の報告があり、年々増加しています。発生地域は西日本の広い地域で確認されていますが、徐々に東日本でも発生が確認されてきています。2024年では全国で977件の発生が確認されています。
猫がSFTSに感染したときの主な症状

高熱・嘔吐・下痢・元気消失など
猫では元気・食欲の低下、39℃以上の発熱、白血球減少、血小板減少、黄疸、嘔吐、下痢などの症状が見られます。致死率も60%以上と高く、急速に悪化し、発症後数日で亡くなることが多いです。
特効薬がなく、治療は対症療法が中心
現段階では特効薬はなく、対症療法のみとなります。皮下補液や静脈内点滴を行い、二次感染対策として抗生剤を使用します。嘔吐がある場合は制吐剤を使用します。
致死率が高く、早期対応が必要
猫のSFTS は経過が早く、発症から5日程度で亡くなってしまいます。また致死率も高く、6割以上となっています。感染猫の体液に触れたり咬まれたりすると、人や他の動物に感染する可能性があります。そのため隔離が必要になります。早期に治療すると改善するというわけではありませんが、感染拡大を防ぐ意味でも早期に対応する必要があります。
猫から人へSFTSがうつることはある?

咬傷・引っかき傷・体液・血液による感染リスク
感染猫との接触で感染した事例があります。感染猫に咬まれた、引っ掻かれた、吐物や排泄物に触れた、血液に触れたなどで感染が成立するとされています。実際、三重県の事例では、感染猫を診察した獣医師にダニの刺し傷はなかったと見られ、診察での行為で感染したと考えられています。他の事例でも、感染猫に咬まれて感染しています。
感染猫との接触には注意が必要(獣医師でも注意喚起)
感染猫との接触は感染のリスクが高くなります。そのため、感染猫は隔離が必要です。感染猫には絶対素手で触らないようにしましょう。何か処置が必要な場合は、マスク、ゴーグル、手袋をはめて行うよう、国立感染症研究所から対応策が出されています。
動物病院で獣医療関係者の感染が出ているため、獣医療関係者はフェイスシールド、ゴーグル、ガウン、マスクを着用して診察するよう感染予防策が提示されています。
SFTSを予防するためにできること

猫にマダニ予防薬を定期投与する(通年推奨)
マダニは草むらに生息し、平均気温が14℃を超える春先から秋ごろに活動が活発になります。マダニは動物や人が近づくと皮膚に移ります。SFTSはマダニが吸血することで感染するため、マダニに吸血させない必要があります。それがマダニ予防薬です。
マダニ予防薬を定期的に投与していると、皮膚に付着しても吸血前に殺虫できます。マダニは平均気温が14℃以上で活発になりますが、近年地球温暖化影響や住環境の向上により冬もあたたかくなっています。そのため、1年中マダニの感染リスクが高くなっています。外に出る猫はもちろんのこと、完全室内飼育の猫でもマダニの感染は確認されています。通年でマダニの駆除が必要とされています。
外に出る猫は特にリスクが高い
外に出る猫は、草むらの中に入ります。マダニは草むらに生息し、猫に移る機会を狙っています。外に出る猫はマダニがついてくる可能性が非常に高いと思って間違いありません。
飼い主も野山・草むらに入るときは長袖・長ズボンで対策を
野山や草むらには、マダニが潜んでいると考えて間違いありません。厚生労働省のホームページには、マダニに刺されないような対策として、長袖、長ズボンを着用し肌を露出しないようにと記載されています。
また、マダニの忌避剤などもあるため、それらを使用するのもよいでしょう。
感染が疑われる猫はすぐに病院へ連れて行き、人との接触は最小限に
SFTSに感染し発症した場合、経過がとても早いです。発症してから5日程度で亡くなってしまいます。そのため、様子がおかしいと思ったらすぐ動物病院に連れて行きましょう。また、感染猫から人に感染することがわかっています。
SFTSと思われる症状がある場合や、体調の悪い野良猫などを触る場合は、グローブやエプロン、マスクなどをして、できるだけ少人数で対応するようにしましょう。抱きしめるなどはせず、接触も最小限にする必要があります。
よくある質問:SFTSは室内飼いなら安心?ワクチンはあるの?

完全室内飼いでも人の衣服からマダニが付着する可能性はゼロではない
完全室内飼育でもマダニがつく可能性はあります。外にはマダニが生息しているため、人の服や靴、鞄などについて室内に持ち込まれ、マダニに噛みつかれることがあります。そのため、リスクはないとは言いきれません。
ワクチンは現在未開発
SFTSウイルスに対するワクチンはまだ開発されておらず、治療法も確立されていません。人では治療薬の検討がされていますが、猫への応用はまだ行われていません。そのため、マダニにかまれないことが大切です。
多頭飼育・犬との同居家庭もリスク管理を
多頭飼育や犬も飼っている場合は、さらにリスクが上がると思ってください。犬は外に散歩に行くため、草むらでマダニをつけてきてしまうことがあります。そこから犬が感染し、同居した動物にマダニや体液を介してかかる可能性があります。また、多頭飼育をしている場合、他の猫が外に出てマダニにかまれていたとしたら、他の猫に感染する可能性が非常に高くなります。より危機意識を持つ必要があります。
まとめ

SFTSは猫だけでなく、人にも感染し、致死率も非常に高い病気です。特に猫の致死率は6割にもなります。SFTSにかからないためにはマダニにかまれないことです。猫を完全室内飼育するだけでなく、外に行く子も行かない子も定期的にマダニ駆除を行いましょう。そして、少しでも疑われる症状があれば、手袋などをして動物病院を受診しましょう。
▼著者が院長を務める動物病院にて配布している注意喚起の資料です。

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マダニ怖いですよね
しかし知ることで予防をしていけるならしっかり勉強しなければです
ところで、体液とはなんでしょう?吐物はわかります。唾液も体液??
だとしたらねこの被毛にさわる、お互い毛繕いする、お水により他ねこにも感染しますか?
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