獣医師が教える:猫の爪切り方法と嫌がる場合の対処法

獣医師が教える:猫の爪切り方法と嫌がる場合の対処法

爪切りは、猫のお世話の中で最も大変と感じるお世話ではないでしょうか。実際、動物病院で爪切りを希望される方はけっこういます。今回は猫の爪切りについて解説します。

なぜ猫の爪切りが必要なのか?その理由とメリット

なぜ猫の爪切りが必要なのか?その理由とメリット

猫の爪切りの重要性

猫の爪は野生で生活する上で非常に重要な役割を果たします。鋭い爪は武器となり、獲物を捕まえたり身を守るのに重要な役割を果たします。また、木に登るのにも役立ちます。そのため、猫は爪とぎをして、爪を鋭い状態に保っています。

しかし、人と生活していく上で、鋭い爪で飼い主さんがケガをしてしまったり、感染症になることもあります。また、爪とぎにより大事な家具を壊してしまうこともあります。さらには、爪をうまく研ぐことができず、肉球に刺さってケガをしてしまうこともあり、そこから感染症になることもあります。

室内で飼われている猫は、定期的に爪を切ってあげないと、思わぬ事故につながることがあります。

猫の爪切りの正しい方法と必要な道具

猫の爪切りの正しい方法と必要な道具

安全に爪を切るための準備

猫は爪を切られるのが嫌いです。抑え込まれたり、肉球を押されるため、爪切りを嫌がってしまいます。そのため、普段から抱っこで落ち着かせたり、肉球を触る練習をしておきましょう。抱っこや肉球を触りながらご褒美のおやつをあげると、嫌がりが少なくなるかもしれません。

爪切りに必要な爪切りだけでなく、ご褒美のおやつ、安心させるためのバスタオル、出血したときに押さえるためのコットンなどを用意しましょう。飼い主さんがケガする恐れもあるため、長袖長ズボンで保護するのもよいでしょう。

簡単なステップでできる爪切りのコツ

まず猫の爪の構造について解説します。猫の爪は普段は肉球の間に収納されていて、肉球に力が加わると出てきます。猫の爪は何層にも層が重なっており、爪とぎをすると外側の層からはがれ降りていきます。爪全体は白いのですが、根本の方からピンクに見える部分が確認できます。その部分を「クイック」と呼びますが、神経と血管が通っています。爪切りは、クイックまで行かない、とがった部分をカットします。

爪切りの3ステップを紹介します。

 STEP1 まず、猫が暴れないように落ち着いた体勢にします。必要なものはあらかじめ準備しておき、飼い主さんも心に余裕を持って行いましょう。猫がリラックスできる時間帯、姿勢で行いましょう。タオルで包み込んだり、視界を遮ると落ち着くことがあります。無理強いをしないことが成功のコツです。
STEP2 次に、肉球を押して爪を出します。普段から肉球を触っておくと嫌がりにくいかもしれません。優しく押して爪を出し、カットしていきます。強く握ると嫌がるので、優しく握るのがポイントです。
STEP3 最後に、時間をかけずにカットしていきます。カットするのは2、3ミリで問題ありません。あまり時間をかけてしまったり、暴れるのを押さえ込んでカットすると、猫にとって大きなストレスとなってしまいます。全部を一度に切ろうとせず、嫌がりだしたらやめましょう。寝ている間に数本ずつ切るのもいいでしょう。

中には、絶対に切らせてくれない猫もいます。そんな子は、動物病院にお任せしてしまうのもよいでしょう。

猫専用の爪切りとその他の便利アイテム

爪切りにはハサミタイプ、ギロチンタイプ、ニッパータイプのものがあります。猫の爪切りはハサミの方が使いやすいかもしれません。

特に子猫は爪が柔らかいため、ハサミタイプの方が適しています。ギロチンタイプは切れ味が鋭いため、硬い爪でも切ることができます。しかし、爪に引っかかってケガをしてしまうことがあるため、使う前に動物病院でやり方を教えてもらいます。

ニッパータイプは硬く太い爪や巻き爪に適しています。老猫など爪が硬くなっている時に使います。爪が巻いてしまって肉球を傷つけてしまっている場合は、治療が必要になるため動物病院を受診しましょう。

猫の爪切りは、猫をいかにおとなしくさせるかがポイントになります。バスタオルで巻いたりネットに入れるとおとなしくなりやすいでしょう。猫の視界を遮ると大人しくなることがあり、猫用のアイマスクも販売されています。つけるときに嫌がらせないために、アイマスクに慣れさせる必要があります。

爪切りを嫌がる猫への対処法

爪切りを嫌がる猫への対処法

猫がリラックスできる環境作り

爪を切るときは猫がリラックスしていないとうまく切れません。飼い主さんが「爪を切るぞ!」と意気込んでいると、猫は察して逃げてしまいます。飼い主さんの気持ちと時間に余裕があるときに行いましょう。猫が安心できる体勢で行うのがポイントです。バスタオルで包んだり、おやつでご機嫌を取るのも大切です。

短時間で切るテクニックと分割作業のすすめ

短時間で爪を切ると、猫もストレスになりにくくなります。そのため、まず飼い主さんが爪切りや肉球の押し方に慣れておく必要があります。一度にたくさんの爪を長く切る必要はなく、数本でも嫌がる前にやめることが大切です。切る長さも数ミリで問題ありません。

猫が寝ているときに、1本ずつ切るのもお勧めです。筆者が飼い主さんに説明する時によく言うのは、「1日1本を寝ている間に切りましょう」です。

爪切りを楽しい体験にするためのご褒美の活用

猫にとって爪切りは楽しいものではありません。嫌な経験を積むと、爪切りの準備をするだけでどこかに隠れてしまうなんてこともあります。そうならないためにも、爪切りをしているときや終わった時にはおやつをあげましょう。爪切りの練習段階からおやつをあげるのも効果的です。爪切りができなかった、数本しか切れなかった場合もご褒美をあげると、「そんなに嫌なことじゃないな」と思ってくれるかもしれません。

猫の爪切りの頻度と注意点

猫の爪切りの頻度と注意点

猫の生活スタイルに合わせた適切な頻度

室内飼育の猫であれば、1か月に1回程度の爪切りで構いません。抱っこした時に爪が食い込んで痛いなと思った時が、そろそろ爪切りの時期になります。子猫は爪が細い上に伸びが早いので、少し早めのタイミングで切っても良いと思います。また、甲状腺機能亢進症を患っていたり、爪とぎがうまくできない老猫は、巻き爪になるのを防ぐため少し早めに切った方がよいでしょう。まず飼い主さんが爪を観察できるようになることが重要です。観察できるようになれば、爪切りのタイミングがつかめます。

あまり頻繁に爪切りをすると深爪をするだけでなく、ストレスを与えてしまうため、爪が鋭くなってきたら切るようにしましょう。

切りすぎ防止と血管の確認方法

猫の爪はうす透明なので、血管がよく見えます。爪を観察すると、根本からピンクになっている部分が確認できます。そこが血管や神経が通っているクイックと呼ばれる部分です。そこまで切ると出血してしまうので、クイックの手前で切りましょう。数ミリカットするだけでも、爪が食い込むなど痛い思いはしなくなります。

もし血管まで切ってしまったら出血してしまいます。その時は慌てずに、コットンやタオルなどで圧迫して止血しましょう。そして、動物病院に連絡してください。爪切りは動物病院が開いている時間にすると、出血したときにすぐに対処してもらえます。

怪我を防ぐための注意ポイント

お互いケガをしないために、猫が暴れないようにリラックスして爪切りすることがポイントです。事前に爪切りの操作に慣れておき、本番になって慌てないようにしましょう。まずは、寝ているときに爪切りさせてもらうと、案外うまくいくことがあります。猫が嫌がったら潔く諦めるのも重要です。

トリミングサロンや獣医師に頼むべきケース

トリミングサロンや獣医師に頼むべきケース

高齢猫や病気の猫の爪切りの注意点

高齢猫や甲状腺機能亢進症の猫、巻き爪を繰り返す猫は、爪が太く変形していることがあります。そのため、通常の爪切りでは切れないことが多く、ニッパーなどで切る必要があります。また肥大型心筋症の猫は、押さえ込まれると心臓への負荷がかかる可能性が高く、急変につながるため、動物病院で爪切りする方がよいでしょう。

体調面で問題ない猫はサロンでも問題ありませんが、病気やケガがある場合は動物病院で診察を受けながら爪切りしてもらいましょう。

猫が極端に嫌がる場合のプロの利用

爪切りを無理に行うと、飼い主さんとの信頼関係にひびが入ってしまうかもしれません。極端に嫌がり、飼い主さんもケガをするような場合にはプロの手を借りた方がよいです。嫌なことはプロに任せましょう。

サロンは予約制のことがほとんどであるため、事前に爪切りの予約をしましょう。動物病院でも予約制のところが増えてきているため、事前に確認してから来院されることをおすすめします。

獣医師による安全な爪ケアの利点

動物病院では、猫が暴れないような保定をします。訓練された獣医師や動物看護師などのケアスタッフがいるため、事故なく爪を切ることができます。万が一出血した場合でも、すぐ止血できるため、そのまま帰宅することができます。

爪の状態から、甲状腺機能亢進症や変形性関節症の疑いが出てくることもあり、それらの病気の発見につながることもあります。爪が変化してきたなと感じたら、動物病院で爪切りしてもらうのもいいかもしれません。

まとめ

まとめ

爪切りは猫にとって嫌いなことですが、ご褒美を用意して手短に行うとできることがあります。そのためには飼い主さんが爪を観察できるようになることが重要です。

あまり嫌がる場合は、プロに任せてしまう方がお互いのためかもしれません。


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