獣医師が解説!猫に保湿は必要?乾燥対策と皮膚を健康に保つ方法

獣医師が解説!猫に保湿は必要?乾燥対策と皮膚を健康に保つ方法

猫の体にフケが出ていることはありませんか?もしかしたら、それは皮膚の乾燥によるものかもしれません。今回は猫の皮膚の乾燥対策について解説します。

猫に保湿は必要?皮膚の役割と乾燥によるトラブル

猫に保湿は必要?皮膚の役割と乾燥によるトラブル

猫の皮膚の基本構造と機能

猫の皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層に分かれています。表皮は外界に接しており、一般的に肌としてとらえられている部分です。表皮は常に新しい表皮細胞が作られ、外側に押し上げられていき、一番外側まで来ると剥がれ落ちます。これを皮膚のターンオーバーと言い、約3週間で皮膚が入れ替わります。

皮膚は外からの刺激を最も多く受ける組織です。そのため、紫外線などの刺激や病原体などの侵入を防ぐバリアの役目を果たしています。

猫の皮膚は人間といくつか異なる点があります。人間の皮膚のターンオーバーは約4週間とされていますが、猫は約3週間と少し短いです。また、人間の皮膚のpHは弱酸性ですが、猫の皮膚は中性~弱酸性で、人よりはやや中性に近くなっています。猫の皮膚は薄く、簡単に傷ができてしまいます。

乾燥するとどうなる?フケや痒みなどの症状

猫の皮膚が乾燥すると、皮膚の水分量が減少するため、皮膚のバリア機能が低下します。皮膚が傷つきやすくなるため、皮膚のターンオーバーが早まります。それがフケです。また、皮膚のバリア機能が低下すると、炎症が起こるため痒みが生じやすくなります。痒みがあるとグルーミングをするため、皮膚の水分や油分がさらに減少し悪化することがあります。

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保湿が必要な猫の特徴

冬場は空気が乾燥し、肌の水分量も低下します。そのため、冬は皮膚が乾燥しやすい季節です。また、もともとアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患があったり、グルーミングを過剰にしやすい猫の場合、肌の水分量や油分が減少しやすいため保湿が必要になります。

猫の乾燥を防ぐ保湿ケアの方法

猫の乾燥を防ぐ保湿ケアの方法

猫に適した保湿スプレーやクリームの使い方

猫の皮膚は人の皮膚とは異なるため、猫用の保湿スプレーやクリームを使いましょう。猫はグルーミングで舐めとってしまうため、猫の口に入っても問題ないものを選びましょう。肌が乾燥しやすい猫はこまめに塗ってあげましょう。スプレーを嫌がる猫は飼い主さんの手のひらにつけてマッサージするのもよいでしょう。ブラッシングの時に保湿スプレーやクリームをつけてあげるのもよいでしょう。シャンプーをする猫であれば、シャンプー後は必ず保湿が必要です。

部屋の湿度を保つための工夫(加湿器の使用など)

猫にとって快適な湿度は40~60%です。冬場は特に乾燥しやすいため、乾燥肌になりやすい季節です。そのため、部屋を加湿してあげましょう。加湿器は便利ですが、猫が倒さない場所に置く必要があります。加湿器は使い方を誤ると思わぬ事故につながります。加湿器を清潔に保たないと微生物が繁殖し、呼吸器感染や喘息を引き起こすことがあります。また、蒸気で火傷をすることもあります。

飼い主さんが家を空ける時間が長いのであれば、濡れタオルを室内に干すことで加湿ができます。

被毛を健康に保つブラッシングのポイント

フケが多く出てしまったり、皮膚がうまくターンオーバーできないと皮膚炎を引き起こしてしまうことがあります。そのためこまめにブラッシングすることが大切です。短毛種なら1日1回、長毛種なら1日2回を目安にブラッシングしてあげましょう。皮膚に適度な刺激を与えると血行促進につながり、健康的な皮膚や被毛を保つことができます。

保湿不足で起こる猫の皮膚トラブルとその対策

保湿不足で起こる猫の皮膚トラブルとその対策

猫に多い乾燥による皮膚炎やフケの症状

皮膚が乾燥すると、いつもよりもフケの量が多くなります。それに伴い痒くなることもあり、皮膚の赤みなども生じます。肉球ではひび割れが起こることもあります。乾燥によるトラブルの場合、冬場に症状が出る、シャンプー後に症状が出ることがあるように感じます。しかし、そのタイミングで症状があったとしても、乾燥による皮膚トラブルでない場合があります。必ず、獣医師に診察してもらいましょう。

獣医師が推奨する対処方法とケア製品の選び方

乾燥による皮膚トラブルの場合、皮膚を保湿することで改善が見られます。また、皮膚だけでなく体全体の脱水によっても乾燥することがありますので水分補給も必要ですし、皮膚に必要なオメガ3脂肪酸なども積極的に取り入れることが大切です。

ケア用品は必ず猫用の物を使ってください。人用の物は猫に合わないため、逆に皮膚トラブルを引き起こしかねません。

保湿ケアで改善が見られない場合の対処法

保湿ケアで改善が見られない場合、乾燥ではなく病的な皮膚トラブルです。原因に対する治療をしないと改善しないだけでなく、悪化させてしまうことがあります。自己流のケアではなく、かならず獣医師の診察が必要です。

猫の保湿ケアで気をつけるポイント

猫の保湿ケアで気をつけるポイント

保湿剤の選び方

保湿剤にはスプレータイプやクリームタイプなどがあります。スプレータイプは広範囲に使用することができ、クリームタイプはピンポイントでの使用に向いています。飼い主さんの使いやすさであったり、猫が嫌がらないかで選んでもよいでしょう。

人と猫、さらには犬ともpHが異なるため、なるべく猫用とされているものを選びましょう。猫はグルーミングをするため、保湿剤を使用すると舐めとってしまう可能性があります。猫用のものであれば、口に入っても害がない成分を使用しています。

保湿の頻度や量の適切な設定

保湿剤は多く使えば効果が出るものではありません。逆に少なくてもよくありません。そのため、使用方法は保湿剤に記載されているとおりに使用しましょう。シャンプーをしたあとは皮膚の油分が落ちてしまうため、ドライヤーをかける前にまんべんなく使用しましょう。

猫が舐めてしまう場合の対応策

猫用の保湿剤であれば舐めても害はありませんが、せっかく塗ったのに効果がなくなってしまうかもしれません。しかし、猫は皮膚についた汚れをグルーミングできれいにするため、保湿剤を使用したあとは必死に舐めてしまうと思われます。保湿剤を使用したあとは、なるべく気をそらすように遊んであげたりするのがよいでしょう。

季節ごとに必要な猫の保湿ケアの変化と予防法

冬場に多い乾燥トラブルの予防策

乾燥による皮膚トラブルは、体内の水分量が減っても起こります。冬場は空気が乾燥し、室内でも暖房機器を使用するため、皮膚から水分が奪われやすい季節です。さらに、飲水量が減るため脱水傾向になります。すると皮膚の水分も減少し、弾力が失われやすくなります。十分な水分を確保するために、部屋の加湿をしましょう。そして、飲み水が常に飲めるように配慮しましょう。ウェットフードを使用して、水分摂取量を増やすのもよいでしょう。

夏の紫外線による皮膚トラブルと保湿の関係

皮膚は紫外線からのダメージを防ぐバリア機能の役割を果たしています。夏は紫外線量が多く、ダメージを受けやすい季節です。保湿が十分でない肌はバリア機能が弱くなってしまうため、紫外線ダメージを受けやすくなります。

年齢や健康状態に応じた季節ごとのケアアドバイス

高齢になってくると、体内に保持できる水分量が減少してきます。加えて高齢猫は慢性腎臓病などを発症しているため、水分を体内にためておくことが難しくなります。もともと猫は水をあまり飲まない動物ですが、冬は寒さのためにさらに飲まなくなります。腎臓病の猫はどんどん脱水傾向になり、皮膚の弾力もなくなってきます。高齢猫や持病がある猫は、室内の加湿だけでなく、飲み水を多く用意したり、ウェットフードを利用して水分を多く取れるようにしましょう。

獣医師からのアドバイス:猫の保湿と全身ケアのバランス

獣医師からのアドバイス:猫の保湿と全身ケアのバランス

保湿だけでなく栄養管理も重要な理由

皮膚の保湿に必要なものは水分だけでなく油分も必要です。また健康な皮膚を保つためには良質なタンパクなど、栄養素が十分に含まれているフードが必要です。市販されている総合栄養食であれば、猫に必要な栄養素が十分に含まれているため、適正な量を与えるようにしましょう。アトピー性皮膚炎などの皮膚トラブルがある猫の場合は、低アレルギー食などの療法食が必要になります。また、抗酸化成分やオメガ3脂肪酸などが含まれたサプリなどは、皮膚を健康に保つ手助けをしてくれます。

健康的な皮膚と被毛を保つための総合ケア

健康的な皮膚や被毛を保つためには、十分な水分、栄養素、保湿、ブラッシングが必要です。人は皮膚を清潔に保つために入浴や洗髪をしますが、猫はグルーミングできれいにするため、シャンプーはあまり重要ではありません。そのため、フケや毛の状態が気になったら、まずは水分やフードを見直し、保湿やブラッシングをこまめに行うようにしましょう。

獣医師に相談するタイミングと診察の重要性

保湿等を行ったけど改善しなかったり、痒みが強い、湿疹ができているような場合は病的な皮膚トラブルの可能性があります。アトピー性皮膚炎やアレルギー、ダニやノミ、カビや細菌など微生物などの感染などが考えられます。場合によっては人に感染するものもあります。皮膚トラブルが見られたら、一度診察を受けて獣医師からアドバイスをもらいましょう。

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まとめ

まとめ

冬場は乾燥しやすいため、乾燥によるフケや痒みが出ることがあります。皮膚を保湿剤で保湿すると改善することもあります。保湿剤以外に、室内の加湿や飲み水、フードの見直しも必要です。改善しない場合は皮膚疾患の可能性があるため、自己判断をせずに獣医師に相談するようにしましょう。


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