骨軟骨異形成症とは、主にスコティッシュ・フォールドに発症する遺伝性の関節疾患です。重症になると関節がコブのように腫れ、歩きにくくなったり痛みが現れます。
今回は猫の骨軟骨異形成症の症状、診断、治療法について詳しく解説します。
骨軟骨異形成症とは?

骨軟骨異形成症(こつなんこついけいせいしょう)は遺伝性の関節疾患で、歩行異常や痛み、関節の変形が起こります。
骨軟骨異形成症について
骨軟骨異形成症は、猫の軟骨や骨に異常が起きる病気です。骨軟骨異形成症のある猫は、関節にある軟骨に異常が起こり、関節がコブのように腫れてしまい(骨瘤)、歩きにくくなったり痛みが生じてくる病気です。骨瘤以外にも、尾に変形が出てくることもあります。この病気は進行性で、骨瘤や変形は成長とともに徐々に悪化します。
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遺伝的要因と発症リスク
骨軟骨異形成症は、遺伝子の異常によって起こります。この病気になりやすい猫種はスコティッシュ・フォールドであり、特徴的な垂れ耳と骨軟骨異形成症が関連しています。
ここで遺伝について説明します。親の遺伝子は通常2本で1組となっていますが、精子や卵子には1本ずつに分かれて存在し、受精により相手の遺伝子と組になります。
垂れ耳は「優性遺伝」といって、親の遺伝子のうち、1個でも異常があると現れます。親猫が垂れ耳の場合、必ず垂れ耳の子猫が生まれます。骨軟骨異形成症は軟骨に異常をきたすため、垂れ耳のスコティッシュ・フォールドには症状の程度に差はありますが、骨軟骨異形成症にかかっている可能性があります。
特に、垂れ耳同士で交配した場合、生まれてきた子猫は関節の異常が強く出る傾向にあります。垂れ耳でないスコティッシュ・フォールドの場合、骨軟骨異形成症になっていないか、なっていても症状が軽い傾向にあります。
遺伝性疾患のため、若齢から発症し、徐々に進行していきます。
スコティッシュ・フォールドが特に有名ですが、アメリカン・カールやヒマラヤン、ペルシャ、マンチカンなども発症しやすいと言われています。
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骨軟骨異形成症の症状と診断方法

骨軟骨異形成症の症状
骨軟骨異形成症の特徴的な症状は、手首や足首の関節に骨瘤と呼ばれるコブが形成されます。関節が固定されてしまうため、ぎこちない歩き方になります。骨瘤は触ってわかるものです。手や足の関節だけでなく、尾にも変形が起こることがありますが、それ以外の肘・肩・膝・股関節には異常が起こりません。
症状としては、歩き方がぎこちなくなったり、足を引きずるようになります。骨瘤が大きいと、歩行時にコツコツと音がすることもあります。骨軟骨異形成症は痛みが伴うため、動きたがらなかったり、ジャンプをしたがらないなど、あまり活発ではなくなります。爪切りを非常に嫌がることもあります。
スコティッシュ・フォールドで見られる、後ろ足を投げ出す座り方を「スコ座り」とも呼びますが、これは変形した足首に負担がかからないような座り方と考えられています。
診断方法
動物病院での診断方法は、まず診察室内で問診、視診、触診を行います。その後レントゲン検査を行い、手や足、尾のレントゲン撮影にて診断します。
骨軟骨異形成症の猫のレントゲン像は、手や足に特徴的な骨瘤や関節の変形が見られます。
猫は診察室では動かなくなるため、自宅での歩き方やジャンプの仕方を動画で撮影していただけると、診断の一助となります。
骨軟骨異形成症の治療とケア

骨軟骨異形成症は遺伝性疾患であり、現代の獣医学においては完治させる治療法は見つかっていません。そのため、痛みのコントロールがメインの治療法となります。
消炎鎮痛剤やサプリメント
骨軟骨異形成症は進行性に軟骨や関節が変形していくため、根治的な治療法はなく、痛みをコントロールしていく対症療法がメインとなります。消炎鎮痛剤による痛みのコントロールや、サプリメントで関節の保護や痛みの軽減などが行われます。飲み薬がほとんどですが、関節炎に対する注射薬なども使用されることがあります。
放射線療法
大きく骨瘤が形成された重症例では、放射線を照射することで改善が見られるとされています。放射線療法を行える施設は、大学病院などの二次診療施設と呼ばれる病院に限られており、全身麻酔下にて実施されます。そのため、治療費用は高額となります。
手術
関節炎により骨に骨棘とよばれるトゲが形成され、強い痛みが出ることがあります。その骨棘を除去する手術などが行われることがありますが、一時的な症状の緩和を図ることが目的となります。
骨軟骨異形成症のケア
骨軟骨異形成症になると、歩き回ったりジャンプすることができないだけでなく、痛みにも悩まされます。そのため、まず早期発見・早期治療を行うことでQOLの改善を行います。
おうちの中では関節に負担をかけないために、段差があるところにスロープを設置したりするのもよいでしょう。トイレの段差を越えることが難しくなるため、段差が少ないトイレなどに切り替えることも大切です。水や餌は猫の行動範囲の中に置くようにしましょう。
体重が増えると関節への負担はより大きなものになります。カロリーオーバーにならないよう、食事量をコントロールすることも大切です。
早期発見のためのポイント

骨軟骨異形成症は遺伝性疾患のため、予防法はありません。現在、スコティッシュ・フォールドの場合、垂れ耳同士の交配は行わないように指導されていますが、垂れ耳のスコティッシュであれば、発症する可能性は大いにあります。好発猫種とされるスコティッシュ・フォールド、マンチカン、ペルシャ、チンチラを飼育する場合、骨軟骨異形成症になるかもしれないと頭の中に入れておくことが重要です。
骨軟骨異形成症は治療法がないため、症状が出たら痛みをコントロールする対症療法がメインになります。症状が出た段階で、すでに痛みがひどくなっていることもあるため、早期発見により早く痛みを取り除くことでQOLの改善につながります。
そのためには、子猫時代から定期的に動物病院にかかり、体重測定をしてもらいながら関節の動きを診てもらうなど、定期的に診察してもらいましょう。また、1歳過ぎたら手足の関節のレントゲンを撮影し、関節の異常をなるべく早い段階で診断することも大切です。
まとめ

骨軟骨異形成症は遺伝性疾患であり、予防法も治療法もありません。痛みを伴い、動きにくくなるため、猫にとってストレスとなります。スコティッシュ・フォールドなどの好発猫種を飼育しているのであれば、定期的に診察を受け、なるべく早く痛みから解放してあげましょう。
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