猫は自分で毛を舐めとるグルーミングを行い、皮膚を清潔に保ちます。しかし、何らかの原因で過剰にグルーミングをしてしまうことがあり、これを舐め壊しと言います。舐め壊しがひどくなると、ひどい皮膚炎になってしまうことがあります。
今回は、猫の舐め壊しについて解説します。
猫の舐め壊しとは?猫が過剰に舐める原因を探る

猫の舐め壊しとは?
猫は自分の毛や皮膚を正常に保つために、自分の舌できれいにお手入れをします。これをグルーミングと呼びます。グルーミングが何らかの原因で過剰になってしまうことがあり、これを舐め壊し、または過剰グルーミングと言います。舐め壊しには皮膚炎や感染症など病気が原因で起こるものと、不安やストレスなど精神的な要因で起こるものがあります。
舐め壊しが多い場所は、お腹、内もも、後ろ足、お尻、背中など、猫が舐められる範囲になります。
原因1 皮膚の痒みや感染によるもの
アレルギーやアトピーなどによる皮膚炎は強い痒みを引き起こし、舐め壊しの大きな原因ともなります。また、ノミやダニなどの外部寄生虫、細菌やカビが感染すると、やはり強い痒みを引き起こします。痒いところを集中的に舐める傾向にあります。耳などは舐めることができないため、足で頻繁に掻く仕草が見られます。
原因2 ストレスや不安によるもの
ストレスや不安などの精神的な要因で、過剰にグルーミングをすることがあります。引っ越し、家族が増えた、留守番が長かった、ホテルを利用したなど、今までの生活が変化することで、猫は大きなストレスを感じます。過剰なグルーミングから皮膚が傷ついてしまい、出血や二次感染を起こし、さらに舐め壊してしまう悪循環に陥ってしまいます。
舐め壊しが引き起こすリスク

脱毛や皮膚炎に進行することも
猫の舌にはざらざらとした突起がついています。その突起はグルーミングの時に毛を絡めとる役割を果たし、毛や皮膚の状態を清潔に保ちます。しかし、過剰にグルーミングすることで脱毛が起こり、皮膚を傷つけてしまいます。皮膚が傷つくと出血したり、傷口から病原体が侵入し化膿することもあります。皮膚炎の状態になると痒みが伴うため、さらに舐めてしまい悪化してしまいます。
毛球症や嘔吐の原因にも
過剰にグルーミングすることにより、毛をたくさん飲み込んでしまいます。少量の毛であれば問題なく便として排泄されますが、大量の毛は消化管の中で毛球(ヘアボール)となり、嘔吐や食欲不振の原因にもなります。毛球を吐き出せればよいのですが、消化管で詰まってしまい、腸閉塞になることもあります。
猫の舐め壊しを防ぐための治療法と対策

舐め壊しは原因によって治療法が異なります。まず、様々な検査から原因を探り、原因に対する治療が行われます。
薬物療法
舐め壊しの原因がノミ・ダニ、細菌、カビなどの感染によるものであれば、それらに対する治療が行われます。ノミ・ダニであれば駆除剤、細菌やカビであれば抗生物質や抗真菌剤を使用します。アレルギー性やアトピー性皮膚炎が原因であれば、ステロイド剤などで痒みをコントロールが行われます。
精神的な要因が強い場合も薬物療法が行われることがあります。あまりにひどく舐め壊しているのであれば、向精神薬を使用することがあります。ストレスを軽減するサプリメントを使用することもあります。
シャンプーや皮膚保護服
シャンプーはノミやダニ、痒みの原因物質となるものを物理的に取り除くことができます。ただし、猫のシャンプーはかえってストレスになることもあるため、獣医師の指示に従って行いましょう。また、市販のシャンプー剤ではなく治療用のシャンプー剤が必要になることもあります。
舐め壊しは、舐めることでさらに刺激になり、どんどん舐めてしまう悪循環が成立します。そのため、皮膚保護服やエリザベスカラーなどで舐めさせない対策を取ることがあります。


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食事療法
アレルギー性皮膚炎の場合、フードに原因があることがあります。そのため、低アレルギー食を使用することがあります。使われるフードは療法食となるため、動物病院での処方が必要です。
ストレスによる舐め壊しでも、食事療法が行われることがあります。尿石症対策フードなど特定のフードには、ストレスを軽減するための成分が添加されていることが多く、補助的に使用されることがあります。
ストレスを軽減する対策を
ストレスが原因の舐め壊しは、自宅でのケアも重要になります。まず、ストレスの原因を考えることが重要です。引っ越し、家族(人や猫)が増えた、留守番が増えた、新しい家電が増えたなど、今までの生活から変化が起こるとストレスを感じやすくなります。
猫のストレス対策として、スキンシップの時間を長くする、おもちゃを使って運動遊びをする、猫の逃げ場所を設けるなど、ちょっとした工夫でストレスを緩和することができます。「最近構ってあげられなかったな」、など思い当たることがあれば、スキンシップを増やして猫を満足させてあげましょう。
動物病院ではスプレーや拡散器などのフェロモン剤を使用して、家でのストレス緩和を図ることもあります。
舐め壊しを予防するための家庭でできるケア

日常の観察と早期発見のポイント
猫は正常でもグルーミングをしますし、ちょっとしたストレスでも舐めることはあります。舐め壊しの場合、頻繁に舐めて毛が抜けてきてしまうため、普段のグルーミングの頻度や、毛が薄くなってないか観察することが大切です。体を触ってみて、かさぶたができていたり、皮膚が赤くなっていないかもよく見てみましょう。
お手入れ習慣の見直し
猫は自分でグルーミングをしますが、やはり飼い主さんがブラシなどでブラッシングしてあげることも大切です。ブラッシングは、猫のグルーミングで取り切れなかった毛を取ってあげるだけでなく、皮膚の血行を促進するなど、皮膚を健康に保つことができます。また、余分な毛を飲み込まないため、毛球症の予防にもなります。そして、猫のストレス発散にもなります。
猫が快適に過ごせる環境作り
猫のストレス軽減のために、ストレスとなるような物はなるべく置かないようにしましょう。例えば、洗濯機など大きな音がする家電のある部屋には入らせないようにしましょう。
猫が過ごす部屋にはキャットタワーを設置したり、窓から外が見えるような家具に配置にするのもよいでしょう。猫が逃げられるスペースも必要です。猫のトイレは十分な数を置いてあげましょう。
獣医師に相談すべきタイミング

「舐め壊しくらいで」と思わず、普段よりグルーミング回数が多かったり、脱毛や赤みがあるようであれば動物病院を受診しましょう。
舐め壊しには皮膚トラブルやストレス以外にも、様々な原因が隠れていることがあります。痛みによっても舐め壊すことがあります。筆者が過去に診察した症例で、お腹の舐め壊しがあり、原因は膀胱炎だったということもあります。様子を見ずに、なるべく早く診察を受けましょう。
診察では皮膚の検査を行うため、直前に自宅でシャンプーや消毒を行ってしまうと、原因がわからなくなってしまいます。自己判断で行わず、必ず獣医師に確認しましょう。
まとめ

猫の舐め壊しは病気によるもの、精神的な要因によるものに分かれます。様子を見ても改善しないことが多いため、気づいたらなるべく早く動物病院を受診しましょう。ストレスなどによる舐め壊しであれば、猫が快適に過ごせる環境を整えてあげましょう。
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