私たち人間は、職場や学校などで定期的に健康診断を受ける機会があります。健康診断は、今の健康状態を知るだけでなく、病気を早期に発見するという重要な役割を持っています。猫も人間と同じく、定期的に健康診断を受けることが望ましいとされています。
今回は健康診断の重要性について詳しく解説します。
猫の健康診断が重要な理由
猫の祖先はリビアヤマネコとされており、野生生活を営んでいました。そのため、常に敵に襲われる環境で生活をしていました。体調が悪かったり、弱っているところを敵に見られると、すぐに襲われてしまう恐れがあったため、体調を悪く見せないようにふるまったり、隠れて出てこなくなります。
猫の死期が近づくと、今までよりも急に元気になったり、隠れて出てこなくなることがあるのは、野生時代の名残と言われています。そのため、猫は体調不良を隠す動物としても有名です。
いよいよ体調が悪くなり、動物病院を受診した時には、末期で余命宣告を受けることも少なくありません。病気をなるべく早期に発見するために、猫の健康診断は非常に重要と言えます。
猫の健康診断はどの猫種・年齢においても必要です。特に、遺伝性疾患が起こりやすい猫種や、血縁にそのような疾患がある場合は、幼いうちから健康診断を受けることをお勧めします。
健康診断を受けるタイミングは特にありませんが、多くの病院が1歳から定期的に健康診断を受けることを推奨しています。1歳までは成長期であるため、血液検査で一部高値となる項目があります。1歳を越えると安定した血液データとなるため、1歳からの健康診断を勧めています。ただし、先にも述べましたが、遺伝性疾患の可能性がある場合は、生後半年ごろから受けてもよいでしょう。
健康診断で行う検査は病院によっても異なりますが、通常の診察で行う検査よりも項目が絞られていることがあります。症状がある場合は健康診断の検査ではなく、診察を受けて必要な検査を受けるようにしましょう。
猫の健康診断の基本的な検査内容
健康診断の内容は、動物病院によっても異なりますので、詳しい検査内容は動物病院に問い合わせましょう。
一般検査
健康診断で行われる検査は、問診、視診、聴診、触診、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、糞便検査、尿検査、血圧測定、心電図測定などがあります。健康診断コースがいくつか分かれていることもあるので、獣医師と相談して決めることもできます。
問診、視診、聴診、触診は猫への負担はあまりなく、大まかな異常を見つけることができます。人間の感覚に頼った検査になるため、担当獣医師の経験やスキルによっても精度が異なります。
血液検査、尿検査
血液検査は猫を抑えて採血するため、猫にとってストレスがかかる検査になります。しかし、内臓の状態や血液疾患、感染などを検出できるため、見えない部分を判断するのに重要な役割を果たしています。
尿検査は腎臓病の早期発見や尿石症の検出などに役立ちます。慢性腎臓病の早期では血液検査でも異常が出ないことがあり、尿検査で尿比重が低くなる(尿が薄くなる)ことがあります。
画像検査
レントゲン検査や超音波検査は内臓の状態を目で見て確認することができます。血液検査で異常が見られていなくても、画像検査で異常が検出されることがあります。レントゲン検査は白黒画像で形や大きさなどを判断します。1回の撮影で広い範囲の検査が行えるのもレントゲンの強味です。
体内に溜まった液体や結石、腫瘍などの検出が可能です。超音波検査は、内臓や心臓の構造などをピンポイントに見ることができます。レントゲン検査ではわかりにくかった腸管の状態などが詳しくわかるのが超音波の強味です。ただし、基本的には仰向けで行うため、猫を抑えなければならず、検査には時間がかかる上、体全体の評価には向きません。また、担当獣医師の技量によっても精度が変わってきます。
その他、内視鏡検査や心臓超音波検査、がん検診などを行っていることもあります。
猫が健康診断を受ける年齢と頻度
子猫からシニア猫までの診断頻度
1歳までの子猫期は、避妊手術や去勢手術を行う際に血液検査やレントゲン検査を行います。
通常の健康診断は1歳から6歳までは年1回、シニア期に入る7歳以上は年2回の健康診断が推奨されています。
猫の年齢に応じた特別な検査
6歳までは一般的な健康診断でもよいと思いますが、7歳以上は様々な疾患が出てくるため、検査項目を増やす方がよいと思います。シニア期に見られる疾患としては、変形性関節症、慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症などがあります。シニア期に勧められる検査としては、四肢のレントゲン、血圧検査、甲状腺ホルモン測定などがあります。
定期診断を怠るリスクとその影響
定期的に健康診断を受けていると、今までの検査データが蓄積されているため、変化が見つかることがあります。それにより、早期に疾患が見つかる可能性があります。健康診断を怠ると、病気を早期に見つけることが難しくなり、進行した状態で見つかってしまうかもしれません。
愛猫が健康診断を受けたあとは
健康診断を受けて、結果がよければ今までと同じ生活でよいでしょう。ただし、健康診断は1回受けるだけでは意味がないので、定期的に受けることが必要です。
結果で要注意や異常が指摘されたら、獣医師の指示に従うようにしましょう。場合によっては即治療が必要なこともあります。そのあとは、獣医師の指示のもと定期的な診察を受けるようにしましょう。
健康診断を受ける前に準備しておくこと
猫をリラックスさせましょう
健康診断当日に慌ててキャリーケースを出したり、飼い主さんがバタバタしてしまうと、猫も緊張して隠れたり怒ったりします。また病院に着いてからも緊張してしまい、攻撃的になる猫もいます。血圧測定がある場合は、高く出ることもわかっています。
まず、事前にキャリーケースに慣れる練習をし、自分でキャリーケースに入れるようにしておくとよいでしょう。緊張しやすい猫は、キャリーケースに入れたあと、タオルをかけて目隠しするのもよいでしょう。
あまりに緊張したり攻撃的になる猫は、自宅で鎮静剤を服用してから来院をお願いすることもあります。
健康診断前に確認すべきこと
健康診断は予約で検査することが多いため、当日希望してもできないことがあります。どのように健康診断を受けるのか、どのようなコースがあるのか、あらかじめ電話や窓口で確認しましょう。また、検査の都合から絶食で行うこともあるため、食事に関する注意点も確認しましょう。その他、必要なことは予約時に確認するようにしましょう。
まとめ
健康診断は健康な猫でも定期的に受けることが大切です。特に7歳以上のシニア猫は、様々な疾患が出てくるため、年に2回の健康診断が必要です。健康診断を受けることで、病気の早期発見に努めましょう。
症状がある場合は、健康診断ではなく診察を受けるようにしましょう。
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