家の中に虫が入ってきてしまい、愛猫が夢中に追いかけまわしているのを見かけたことはありませんか?虫に夢中になり、口の中に虫が入ってしまうことも。「愛猫が虫を追いかけて食べてしまったけど大丈夫?」と、きっと飼い主さんは不安になることでしょう。実は、猫が虫を追いかけるのは狩猟本能や好奇心によるものであり、猫が虫を食べるのは珍しいことではありません。ほとんどの場合はトラブルなく経過しますが、中には注意しないといけない虫もいます。今回は、虫の誤食について解説します。
猫が虫を食べるのはなぜ?

狩猟本能が刺激されるから
猫が虫を食べてしまう理由を脳の構造から説明します。人も猫も基本的には脳の構造は同じで、情報の分析などを行う大脳皮質、情動や本能を司る大脳辺縁系、情動を制御し理性を司る前頭葉、生命の維持に関わる脳幹部があります。人は前頭葉がずば抜けて発達しているのに対し、猫はあまり発達していません。
そのため、本能や好奇心を制御しきれず、虫を見かけると「あれはなんだ?おもしろいぞ!捕まえてやる!」とスイッチが入ってしまいます。特に生命の維持に関わる本能はより強く現れ、獲物を捕まえて食べるという狩猟本能は、室内飼いでも常に見られる行動になります。狩猟本能は空腹と一致しないことが多く、「お腹が空いているから虫を捕まえて食べる」とは限りません。
好奇心から遊んでいるうちに食べてしまう
猫は理性より本能が優位になるため、動いているものに興味を持ちます。野生の猫は食糧確保のために獲物を捕えるため、一瞬にして仕留める行動を取ります。これは母猫から教えられます。
しかし、室内飼育の猫の場合、獲物を取るための行動を学んでいないため、獲物をおもちゃのようにして遊んでしまいます。虫を捕まえた後、口から離して転がしたりします。そして、口に入れているうちに食べてしまいます。
虫の動きや音に興味を引かれるから
虫は飛び回ったり物陰に隠れたり、見えないのに羽音やカサカサという音を出します。その様子が、猫の好奇心や狩猟本能に一気に火をつけてしまいます。家の中でこんな動きをしている虫はいませんか?クモやハエ、蚊、ゴキブリなど、あまり出て欲しくない虫たちが思い浮かぶことでしょう。これらの虫たちは、猫にとって面白い獲物になります。
食べ物として認識している場合もある
猫にとって小さな昆虫は、とても面白い獲物になります。猫は虫をおもちゃとして見ているのではなく、狩りの対象つまり食べ物としての獲物と認識していると思われます。そのため、口に入ってしまうと食べてしまうことが起こり得ます。ただし、飼育下の猫は栄養が十分に足りているため、「虫を食べる=足りない栄養素を補給している」のではありません。
猫が食べても大丈夫な虫は?

| 虫 | 基本的な注意点 |
|---|---|
| ハエ | 基本的には問題にならないが、寄生虫や病原体が付着している可能性がある |
| 蚊 | 基本的に問題にならないが、刺されることによる皮膚トラブルやフィラリア症の危険性はある |
| バッタ | 基本的には問題にならない |
| コオロギ | 基本的には問題にならない |
| クモ | 問題にならないことが多いが、種類により毒があるため注意が必要 |
| ゴキブリ | 虫自体に毒性はないが有害な病原体や殺虫剤など付着しているため、接触させない方がよい |
猫が食べると危険な虫は?

毒を持つ虫
ハチ、ムカデ、毒グモ(セアカゴケグモなど)、ドクガの幼虫(イラガ、チャドクガなど)は注意が必要です。これら以外の虫で、その地域に生息する有毒生物も注意が必要です。
これらの虫は「食べたこと」よりも、捕まえている最中に「刺された・噛まれた」ことが問題となります。
殺虫剤・農薬が付着している可能性がある虫
虫自体は無毒・無害であっても、殺虫剤や農薬などが付着していたり、体内に取り込んでいる可能性があります。殺虫剤を使用した部屋やスプレーを使用した場合、虫の体に高濃度に殺虫剤成分が付着している可能性があります。また、ゴキブリ駆除剤などはゴキブリの体内に成分が取り込まれます。
ほとんどの殺虫剤がピレスロイド系のものであり、動物の体内ですぐ分解されるため、猫にとっても毒性は低いものではあります。しかし、たくさん摂取してしまうと嘔吐や下痢、よだれなどの症状が現れることがあります。
注意が必要なのは、園芸用の殺虫剤や農薬であり、有機リン系やカーバメイト系の物は中毒を起こしてしまいます。ご自宅でそのような物を使用されていたり、農業が盛んな地域では注意が必要です。
猫が虫を食べた!まずどうすればいい?

まず虫の種類を確認する
可能であれば写真を撮ったり、虫の残骸があれば保存しておきましょう。画像検索などで虫の種類や毒性を調べることができます。また屋外であればどのような場所だったのか、周りの草の状態なども記録しておくと良いでしょう。
無理に吐かせない
自己判断で吐かせることは絶対にやめましょう。インターネットで検索すると、吐かせる手段(多量に水を飲ませる、食塩水を飲ませる、オキシドールを飲ませるなど)が出てきますが、これらの方法は中毒や消化管の損傷を起こす可能性が高いため推奨されません。必ず動物病院に相談し、必要があれば受診するようにしましょう。
その後の様子を観察する
愛猫が虫を食べてしまった場合、1日はしっかり様子を見ましょう。次のような症状があれば、すぐ動物病院に相談しましょう。
- 嘔吐
- 下痢
- よだれ
- 元気がない
- 食欲がない
- 口を気にする
- 顔や口の腫れ
- 呼吸がおかしい
- ふらつき
- けいれん
ハチに刺された場合、命に関わるアナフィラキシーショックを起こすことがあります。その場合、30分以内に呼吸困難、開口呼吸、意識消失などが起こることがあるので注意が必要です。農薬等の中毒も症状の出現は早く、やはり数十分~数時間で症状が出てきます。また、虫自体は無害であっても、虫に付着した病原体や寄生虫が感染した場合、1日~数週間経ってから症状が出ることもあります。
こんな症状があれば動物病院へ

嘔吐や下痢が続く
虫自体に毒性がなくても、病原体や寄生虫により体調を崩すことがあります。その場合、原因を治療しなければ症状が続きます。細菌感染などは胃腸炎を起こすことがあり、嘔吐や下痢が続きます。また、寄生虫感染でも嘔吐や下痢が起こります。
大量によだれが出る
農薬や殺虫剤がついた虫を摂取すると、中毒を起こす可能性があります。摂取してから短時間で大量のよだれが出てきます。また、ハチや毛虫などの有毒昆虫を摂取して口を毒針でさされてもよだれが出ます。中毒やアナフィラキシーショックの可能性があるため、緊急性が高い症状です。すぐ動物病院を受診しましょう。
口・顔が腫れている
ハチなどの有毒昆虫に顔や口を刺されたり、毒や薬剤に対するアレルギー反応によって口や顔が腫れることがあります。痒みや痛みを伴うことが多く、この後に全身状態が悪化する可能性もあるため、早めに受診しましょう。
呼吸が苦しそう
猫のアナフィラキシーショックの場合、犬と比較して呼吸困難が強く出ることがわかっています。呼吸を苦しそうにしたり、口を開けて呼吸する開口呼吸する場合、重篤な症状が出現している可能性があります。すぐに受診しましょう。特にハチに刺された場合はアナフィラキシーショックによって呼吸困難が出る可能性があるため、要注意な症状です。
ぐったりしている・ふらつく
毒や薬剤の症状で神経症状が出たり、アナフィラキシーショックで血圧が低下しても、これらの症状が現れます。全身状態がかなり悪化しているため、すぐに受診が必要です。
けいれんがある
農薬や殺虫剤の中には神経に作用するものが多く存在します。そのような薬剤が虫に付着していると、けいれんなどの神経症状が現れることがあります。アナフィラキシーショックで低血圧になると、脳への血流が低下しけいれんが起こることもあります。すぐに受診が必要です。
毒虫・薬剤が関係している可能性がある
前述した症状のほとんどが、毒虫や薬剤が関係している場合に現れる症状です。特に、ハチに刺された場合、30分以内の「呼吸困難・顔の腫れ・意識障害」はハチ毒によるアナフィラキシーショックの可能性があります。命に関わる状態であるため、ハチに刺されたらすぐに動物病院を受診しましょう。また、明らかに薬物が付着した虫を口にしている場合も、動物病院への受診が必要です。
猫が虫を食べないようにするには?

網戸や窓から虫が入らないようにする
誤って虫を食べないようにするには、虫を物理的に室内に入れない対策が必要です。虫は網戸や窓、玄関から侵入します。
そのため、窓や玄関は必ず閉め、網戸も目の細かいタイプを選択し、穴が開いているのであればすぐ張り替えるなどの対策が必要です。ペットに無害な忌避剤などを使用するのも良いでしょう。
室内を清潔に保つ
ゴキブリなどの害虫は、人の食べ残しなどをエサに増殖します。室内を清潔にし、ゴキブリが住みにくい環境にしましょう。
食べ物や生ゴミを放置しない
食べ物や生ゴミを放置すると、ハエやゴキブリが集まってきます。食べ残しは虫が入らないように保護をしたり、食べないのであればすぐ処分しましょう。
また、生ゴミはビニール袋に入れ、口を縛って捨てるようにしましょう。生ゴミは蓋のある容器に入れ、虫が侵入するのを防ぎましょう。必ずゴミ収集日に捨てるようにし、ゴミを溜めないようにしましょう。
殺虫剤の使用には注意する
室内で使用する殺虫剤の多くが、猫に無害な成分を使用していますが、密閉された部屋では濃度が濃くなる可能性があります。殺虫剤を使用する際は換気を行い、猫に直接かからないようにしましょう。
園芸用の殺虫剤には、中毒を起こす薬剤が使われていることがあります。購入する際に、使用上の注意をよく読み、なるべく動物に害の少ない物を選ぶようにしましょう。
虫を見つけても猫の前で追いかけ回さない
猫は人間のことを、大きな猫と認識していると言われています。また、自分の母猫や狩りのできない猫と認識されているとも考えられています。
そのため、猫の前で虫を追いかけると、「獲物を見つけてもらえた」とかえって興奮させてしまうため、虫を見つけても猫の前で追いかけず、なるべく静かに行動するようにしましょう。
狩猟本能を満たす遊びを取り入れる
猫は本能が優位なため、本能が満たされないとストレスを感じるようになります。普段の遊びで狩猟本能を満たしてあげると、虫を追いかけなくても十分満足できます。
猫じゃらしやボールなどは猫もよく好み、虫に動きを似せたり、隠してみたりすると猫も楽しく遊ぶことができます。転がすとエサが出るような知育玩具も、猫は頭を使いながら狩りを楽しめるおもちゃとなります。
遊ぶときの注意点は、飼い主さんと一緒に遊ぶことです。猫だけではすぐ飽きてしまうだけでなく誤食の危険性もあるため、必ず一緒に遊び、遊び終わったらおもちゃを回収し、誤食しないようにしましょう。
室内飼いの猫でも虫を食べることはある?

虫との接触が少ない猫でも、本能的に虫を追いかける習性はあります。食べようとして食べるというよりは、遊んでいるうちに食べてしまう可能性はあります。
虫は網戸の小さい網目からでも侵入してきます。その他にも、玄関、窓、ベランダなど、外と繋がっているところから入ってきます。見たことのない虫に猫の好奇心は掻き立てられてしまいます。
猫が虫を食べるのは病気のサイン?

虫を食べるというだけでは何かの病気のサインとは判断できません。まず虫だけを食べるという症状は、おそらくないと思われます。
しかし、急にいつもは食べないもの(虫を含む異物)を食べるようになった、食欲が異常に増えた、食べているのに体重が減った、嘔吐が増えた、行動や性格が変わったなどの症状がある場合は要注意です。甲状腺などの内分泌疾患や脳の疾患のなど、重大な病気の症状の可能性があります。その場合は獣医師に相談しましょう。
まとめ|猫が虫を食べるのは珍しいことではない

猫が虫を食べるのは、狩猟本能や好奇心によって起こります。虫を食べること自体、たいてい問題なく経過します。しかし、有毒昆虫や農薬や殺虫剤などが付着した虫を食べた場合は注意が必要です。
もし「何の虫を食べたか分からない」「症状が出ている」「薬剤が関係している可能性がある」場合は、自己判断せずすぐに動物病院に相談しましょう。






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