粟粒性皮膚炎(ぞくりゅうせいひふえん)という皮膚炎をご存知ですか?猫の皮膚に粟のような小さな赤いブツブツができる皮膚炎です。今回は猫の粟粒性皮膚炎について詳しく解説します。
粟粒性皮膚炎とは?猫に起こる皮膚の炎症性疾患

粟粒性皮膚炎の定義と特徴
粟粒性皮膚炎とは、猫の皮膚炎の中でも最もよく見られる皮膚炎です。粟の実のような小さなブツブツが体の一部、もしくは全身に現れます。皮膚の表面が小さく盛り上がった丘疹とかさぶたができるため、触るとざらざらとした感触です。
アレルギーやノミなどが関与していることが多い
猫の粟粒性皮膚炎は、アレルギーが原因と考えられています。その中でもノミアレルギーによるものが多いとされています。その他にも、蚊やダニ、花粉、ハウスダスト、カビ、フード、アトピーなども原因になることがあります。
猫の粟粒性皮膚炎の主な症状と見た目の特徴

小さな赤いブツブツ、かゆみ、かさぶた、脱毛
赤い丘疹は体の一部、もしくは全身にできます。この丘疹は痒みを伴うため、舐めたり掻いたりします。丘疹は時間が経つとかさぶたができ、掻いてしまうことで脱毛することがあります。かさぶたがはがれてフケとして現れることもあります。
よく見られる部位
粟粒性皮膚炎は、頭、首、背中にできやすく、特に背中に多く見られます。
他の皮膚疾患との違い
粟粒性皮膚炎は小さな丘疹がブツブツと出来てきますが、痒みで舐めたり掻いたりすると、その場所に細菌などの二次感染が起こります。そうなると、細菌性皮膚炎にも見えてしまいます。脱毛することがありますが、広く抜け落ちたり、舐めて毛が切れたりするため、真菌による円形脱毛とは違って見えます。
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原因はさまざま:ノミ・アレルギー・ストレスも関係

ノミアレルギー性皮膚炎との関連
ノミアレルギーが粟粒性皮膚炎の主な原因と考えられています。ノミアレルギーの猫の35%に、粟粒性皮膚炎の症状があったという報告もあります。ノミの唾液にアレルギー反応を示し、全身的に粟粒性皮膚炎が現れることがあります。
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食物アレルギー、環境アレルギーの可能性
フードやハウスダスト、花粉なども粟粒性皮膚炎の原因になります。フードであれば、特定のフードにすると症状が出ることがあります。環境アレルギーは季節性があることがあります。
精神的ストレスや免疫異常も原因になることがある
精神的ストレスにより免疫が低下すると、細菌やカビなどが感染して粟粒性皮膚炎を起こすことがあります。自己免疫性疾患は自分の体を免疫が攻撃しますが、それにより粟粒性皮膚炎が起こることがあります。
猫の粟粒性皮膚炎の診断と治療法

動物病院での診断方法
動物病院ではまず問診、視診、触診が行われます。問診では、ノミやダニの駆除の有無、食事内容などを確認します。視診や触診では皮膚炎の発生部位や丘疹の状態を確認します。丘疹ができている部分の細胞を採取し顕微鏡で確認します。これによって、細菌やカビ、細胞の種類をチェックします。アレルギーが疑われる場合は、アレルギー検査を行うことがあります。
これらの検査で原因が見つからない場合、血液検査などが必要になることもあります。
ステロイド・抗ヒスタミン薬・外用薬での治療
粟粒性皮膚炎は痒みを伴い、ストレスになります。そのため、痒みのコントロールが必要になります。痒みはヒスタミンと呼ばれる物質が関与しているため、軽度の症状であれば抗ヒスタミン薬を内服します。症状が強い場合は、ステロイド剤で痒みをストップさせることが必要です。皮膚炎のできている場所が少なかったり、痒みが抑えられているようであれば、ステロイドの外用薬を使用することもあります。
ノミの駆除やアレルゲン除去も重要
粟粒性皮膚炎はノミアレルギーで多く見られます。そのため、ノミの駆除をしていなければ、必ずノミの駆除が必要です。ノミは春から秋にかけて発生するため、そのシーズンで駆除薬を投与しますが、ノミアレルギーの場合は通年で投与することが望ましいでしょう。
食物アレルギーや環境アレルギーの場合は、アレルゲンの除去が必要です。食物アレルギーであれば、フードを低アレルゲン食に変更することが必要です。ハウスダストなどの環境アレルギーの場合は、掃除をこまめに行うなどの対策が必要です。
自宅でできる予防と再発防止のポイント

ノミ予防を一年中行う
ノミは平均気温が14℃を超えていれば活動します。外にいるノミは、飼い主さんの靴や服、カバンなどに付着し、室内に入り込みます。室内に入り込んでしまうと、室温が14℃を常に超えている可能性もあり、一年中活動的になる危険性があります。そのため、ノミアレルギーでなくても通年で予防することにより、予防や再発防止に繋がります。
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食事の見直しとアレルゲン対策
粟粒性皮膚炎は食物アレルギーでも起こることがあります。食物アレルギー自体を予防することはできませんが、質の悪いフードを与えるのは栄養面や健康面からも避けた方が良いでしょう。アレルギーがあるのであれば、アレルゲンを除去することで症状が軽減、再発予防になる可能性があります。
ストレスの少ない環境づくりと定期的な健康チェック
ストレスは粟粒性皮膚炎だけでなく、様々な病気の引き金になります。ストレスを溜めないために、猫の過ごしやすい室温に調整し、常に水分が摂れるようにしましょう。トイレも猫の頭数+1個は用意しましょう。逃げ込めるような避難場所も用意するといいですね。
また、猫の毛は密なため、わずかな粟粒性皮膚炎は気づかれないこともあります。ブラッシング中に、フケの量が多くなっているなどで気づかれるケースもあるため、こまめにブラッシングやスキンシップを取ることも大切です。少しでも異常を感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。そして、定期的な健康診断も大切です。
粟粒性皮膚炎の症状に気づいたら、早めに動物病院へ

放置すると悪化・慢性化のリスクあり
粟粒性皮膚炎はアレルギーが関与しているため、アレルゲンがある状態では皮膚炎が続いていきます。放置することで痒みが強くなり、その部分を傷つけてしまいます。すると、そこに細菌が感染し、膿が出てしまうなど悪化した状態になります。粟粒性皮膚炎で亡くなることはありませんが、免疫低下などがある場合は敗血症につながる恐れもあります。
他の猫や人への感染の可能性は?
結論から言いますと、感染することはありません。しかし、ノミアレルギーが主な原因で起こるため、ノミの寄生がある場合があります。ノミは他の動物や人にも飛び移り吸血するため、こまめな掃除と定期的なノミ駆除が必要です。
まとめ

粟粒性皮膚炎は何らかのアレルギーが原因で起こる皮膚炎です。小さな丘疹や痂皮、痒み、脱毛が主な症状ですが、痒み対策とアレルギー対策が必要です。特にノミアレルギーが大きな原因となるため、こまめな掃除と定期的なノミ駆除が必要です。
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