猫は“自分”を理解しているの? 発達心理学から見えた人間との自己認知の違い

猫は“自分”を理解しているの? 発達心理学から見えた人間との自己認知の違い

36歳にして大学生になり、心理学を猛勉強している私。仕事と勉強の両立は大変ですが、心理学を学ぶ中では心の仕組みの奥深さに面白さを感じています。

最近、特に勉強しているのは発達心理学。人間の発達を学ぶ中では、猫と人間の発達の違いに驚かされもします。

例えば、猫の自己認知は不思議です。発達心理学を学んでいると、人間と猫では「自分は他者とは違う」という自己認知の形成のされ方には違いがあるのかも…と思わされます。 

人間の自己認知を知る実験法「マークテスト」

人間の乳幼児は生後1歳を過ぎると、鏡に映った他人は実物ではないと認識できるようになります。そして、2歳頃には6割以上が鏡に映った自分を「鏡に映った自分」と認識できるようになると言われています。

人間の自己認知を知る実験法「マークテスト」

こうした発達段階は、「マークテスト」という実験で証明されているようです。「マークテスト」とは、乳幼児の鼻先に口紅でマークをつけて鏡の前に連れて行き、鏡に映った自分を「自分」と認識して口紅を取ろうとするかを検証するもの。

この実験では、1歳頃までの乳幼児は鏡に映った自分を「自分である」と認識できないことが分かりました。乳幼児には鏡の裏に回ったり、鏡を叩いたりするなどの行動が見られたそうです。

この実験では、1歳頃までの乳幼児は鏡に映った自分を「自分である」と認識できないことが分かりました。乳幼児には鏡の裏に回ったり、鏡を叩いたりするなどの行動が見られたそうです。

そんな興味深い実験結果を知った時、頭に浮かんだのは「あれ?猫の自己認知はどうなってるんだ?」という素朴な疑問でした。 

猫は自己認知できていないのか?

もちろん個別差はありますが、猫は鏡に映った自分を「私(僕)だ!」と認識していない子も多いように思えます。YouTubeでは、鏡に映った自分を威嚇するなどユニークな行動を取る子の姿も公開されていますよね。

もちろん個別差はありますが、猫は鏡に映った自分を「私(僕)だ!」と認識していない子も多いように思えます。YouTubeでは、鏡に映った自分を威嚇するなどユニークな行動を取る子の姿も公開されていますよね。

こうした行動を人間の発達心理学に当てはめると、「鏡に映った自分を認識できない=自己認知できていない」という結論になりますが、猫の場合はそうとは言えません。なぜなら、日常の中では「自分のことを自分だと分かってるな」と思う行動が多く見られるからです。 

例えば、名前への反応。上智大学の研究チームの調査では、猫はイントネーションが同じ別の単語と自分の名前を識別できることが明らかになっています。

例えば、名前への反応。上智大学の研究チームの調査では、猫はイントネーションが同じ別の単語と自分の名前を識別できることが明らかになっています。

また、2022年に京都大学が発表した論文によると、猫は同居猫の名前や飼い主たちの名前も認識していそうなことが分かりました。こうした研究結果を踏まえると、猫は自分と他者をある程度、区別しながら暮らしている可能性が高いと言えます。 

ちなみに、人間の乳幼児の場合、自分と他人の名前を識別できるようになるのは1歳5ヶ月頃だと言われています。1歳頃には自分の名前が意味を持ち始めますが、この時期はまだ他の子の名前にも反応するそう。

ちなみに、人間の乳幼児の場合、自分と他人の名前を識別できるようになるのは1歳5ヶ月頃だと言われています。1歳頃には自分の名前が意味を持ち始めますが、この時期はまだ他の子の名前にも反応するそう。

家族や周囲から呼ばれる呼び名で自分のことを呼ぶ(例:「ゆかちゃん」など)ことができるようになるのは、1歳8ヶ月頃からだと言われています。

鏡に映った自分を自分と理解することが難しい一方で、自分の名前は分かっている猫。人間の発達を照らし合わせて猫という生き物を見つめてみると、生物としての奥深さに驚かされます。 

鏡映像での自己認知の検証は人間基準なのかも?

「鏡映像に映った自分を識別できるかどうか」は、人間にとっては自己認知の習得を知る上で大事な指標です。でも、猫の場合は違い、別のプロセスで自己認知を習得しているのかもしれません。

そうした違いが生まれるのは、人間と猫が違う種であるからだと思います。例えば、人間は五感の中でも視覚から得る情報がとても多い生き物ですが、猫は視力が低く、識別しにくい色もあります。

そうした違いが生まれるのは、人間と猫が違う種であるからだと思います。例えば、人間は五感の中でも視覚から得る情報がとても多い生き物ですが、猫は視力が低く、識別しにくい色もあります。

そうした違いがあるから、視覚を重視する人間は「鏡映像」で自己認知の獲得を知ることができますが、猫の場合は「鏡に映った自分を識別できるかどうか」が自己認知の習得を知る指標にならないのかもしれません。

人間よりも視覚から得る情報を重視しない一方で、猫は鋭い嗅覚を活かして多くの情報を得ています。もしかしたら、猫は自分たちとって重要な嗅覚をフルに使って自己認知を形成しているのかもしれません。

愛猫と暮らす中で感じる”自己認知”

実際、猫と暮らしていると、「この子は自己認知できている」と感じる瞬間が多々あります。名前を呼ぶと反応してくれるのはもちろんのこと、怒るとふてくされるし、自分がその時にしたいことをやり遂げる決断力もある。

実際、猫と暮らしていると、「この子は自己認知できている」と感じる瞬間が多々あります。名前を呼ぶと反応してくれるのはもちろんのこと、怒るとふてくされるし、自分がその時にしたいことをやり遂げる決断力もある。

甘えたい時には自分から近づいてきてくれるのに、構われなくない時には驚くほどそっけなくなるのも、猫あるあるです。

そういう行動って、「自分と他者は違う」と分かっていないと見られないものだと思うんですよね。

自己認知できるからこそ、人間は自分とは違う他者との関わり方に悩むこともあるものです。自分とは違う考えや価値観を持っている他者とどう関わればいいのだろう…。そう悩んで空気を読みすぎて、自分の本音を見失ってしまうこともあります。

一方で、猫は自己認知しながら他者と関わるのが上手い生き物です。いつも、自分の気持ちに素直。自分と他者の間に上手く境界線を引き、自分を満たしながら暮らしているように見えます。

そんな猫の生き方から、学ぶものは多くあります。私たちは協調性の高い行動が美徳とされる社会の中で周囲に合わせることを選びがちですが、時には猫のように自分の心に正直になって、自分を生きる日も大切にしたいものです。

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