猫が突然噛んできたり、引っ掻いてきたりしたことはありませんか?猫は自分の身を守るときやじゃれつくときに噛んだり、引っ掻いたりします。今回は、猫が噛む・引っ掻くについて解説します。
猫が噛む・引っ掻く本当の理由とは?

遊びの延長(子猫・若い猫に多い)
特に子猫や若い猫は、遊びの延長で噛んだり引っ掻いたりしてくることが多く見られます。猫の遊びは狩りの模擬練習なので、遊びながら噛みつきや引っ掻きをしてしまうのは、本能によるものです。始めは甘噛みや爪を出していませんが、興奮してくると本気の噛みつきや引っ掻きをしてくることもあります。
遊びは狩りの練習だけでなく、有り余った体力を発散させ、ストレスを解消する役割があります。手を使って遊ぶのではなく、おもちゃを使って遊びましょう。困った行動が多くなってきた場合、一度遊びをやめてクールダウンさせることも必要です。
ストレス・不安
ストレスや不安が強くあると、急に飼い主さんたちを攻撃することがあります。ストレスや不安の原因として、急な来客や工事、大きな音が出る家電(洗濯機や掃除機)、新しい家族(人だけでなく動物も)が増えた・減ったなどです。今までの環境から急に変わるとストレスを強く感じます。猫にもよりますが、小さな子供を嫌う傾向があるため、子供が来るときは別の部屋に避難させるなどの対策が必要です。
多頭飼育の場合、今まで何もなかったのに急に関係が悪くなることがあります。今まで保っていた縄張りのパワーバランスに変化が起こると、猫同士のストレスが強くなり、お互いを攻撃し始めることがあります。
痛みや病気のサイン
病気などにより痛みや不快感がある場合、そこを触ると凶暴になることがあります。その時の噛み方は本気で噛んでくることが多く、体を触って強く噛まれた場合は痛みなどがある可能性が高いです。特にシニア猫の場合、関節炎や腫瘍などで痛みを感じている可能性があります。また、シニア猫は甲状腺機能亢進症を発症していることがあり、甲状腺ホルモンの過剰分泌により、性格が凶暴化します。
触ったときに本気で噛んできた、触ったところに変な感触があった、性格自体が変化した、急激に痩せてきたなどの症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
猫が噛む・引っ掻く時の正しい対処法

叱らない・手を払わない
猫が噛んだり引っ掻いたりしたときに、強いリアクションをとってしまうと逆に興奮させてしまい、余計に攻撃されてしまうことがあります。叱ったり、手で払わないようにしましょう。もし噛まれたりしてしまったら、無言で猫を引き離し、距離を取って興奮が冷めるのを待ちましょう。
正しい遊び方でエネルギーを発散
子猫や若い猫は遊びが足りないと噛みついてきます。遊びを取り入れ、しっかり遊んであげることが大切です。1日に5~10分程度の遊びを1日に2~3回取り入れましょう。猫用のおもちゃを使い、おもちゃを獲物のように横に動かしたり、細かく振ってみたり、隠してみると猫は楽しくなってきます。手で遊ばせると、手に噛みつくようになります。絶対に手で遊ばせないようにしましょう。また、猫だけで遊ばせないようにしましょう。すぐ飽きてしまいます。
引っ掻き対策は「爪研ぎの環境」と「動線」
引っ掻きは攻撃の一つでもありますが、自分の匂いをつけるマーキングとしての行動でもあります。ズボンに爪とぎに来たりするのは、マーキング目的です。
十分に爪とぎをさせることで人や物に対する引っ掻きが減ることもあります。猫は自分の縄張りを主張するために、他の猫よりも高い位置に爪とぎをしようとします。そのため、縦型と横型の爪とぎを用意するのが望ましいです。家具や柱の角に爪とぎする傾向があるため、そこに縦型の爪とぎを用意したり、爪が刺さりにくいシートなどで保護しましょう。ソファーも爪とぎの被害に遭う場所です。ソファーはカバーをしてもらうなどの対策をしましょう。
多頭飼育の場合、それぞれの縄張りで爪とぎの場所が異なります。そのため、爪とぎの数や場所を多くする必要があります。どの猫がどこで爪とぎをするのかよく観察して設置しましょう。
どうしても止まらない時は?
これらの対策をしても噛みつきや引っ掻きが止まらないことがあります。痛みや病気によるものであれば、治療によって改善することが多いため、まず原因を調べることが必要です。その噛みつきなどがストレスなどによるものであれば、ストレスを軽減することが必要です。
ストレスの軽減方法として、生活環境を見直す必要があります。多頭飼育の場合、他の猫との関係性が悪くなってないか確認しましょう。今まで仲が良くても、ある日突然、関係が悪化することがあります。一頭での飼育でも、飼育環境に変化(工事があった、家電が増えた、家族に変化があった)があると、ストレスが強くかか
ってしまいます。隠れ場所やリラックスできる場所を設けましょう。また、猫のフェロモン製剤(フェリウェイ®️)を使用するのも良いでしょう。
対策をしてもどうしても改善しない場合、抗不安薬などが必要になる場合があります。動物行動学に詳しい獣医師や行動診療科を受診するようにしましょう。
猫が安心して暮らせる「噛まない・引っ掻かない」環境づくり

猫の「安心できる場所」を増やす
猫が安心して暮らせるように、「安心できる場所」を用意しましょう。キャットタワーを用意したり、隠れ家をいくつか用意しましょう。隠れ家は人から見えにくい場所や高いところなどが良いでしょう。隠れ家は猫が入れるサイズの段ボールなどで構いません。その中に猫が使っているクッションやおもちゃを入れておいたり、タオルで目隠しをすると安心できます。高いところに設置する場合は、落下防止の対策が必要です。
多頭飼育では「距離」が最重要
多頭飼育の場合、猫同士の距離が近くなりすぎると衝突が起きやすくなります。特に、元々関係があまりよくない猫同士は、必要以上に距離が近くならないようにすることが重要です。
特に問題となるのが、食事場所、トイレ、寝る場所です。まず食事場所は、猫同士が密集しないように設置するのがよいでしょう。関係のよくない猫同士は距離を離したり部屋を分けることも必要です。
トイレは猫の頭数+1個設置するのが望ましいです。いつでも使えるトイレがあることでストレスが軽減されるだけでなく、膀胱炎や尿路結石といった泌尿器疾患の予防にも繋がります。また、トイレも同じところに置くのではなく、離して設置するのがよいでしょう。
寝る場所や隠れ場所もトラブルを起こしやすい場所になります。1匹1匹がそれぞれ休める場所を用意する必要があります。
スキンシップは猫が望んだ時に
どの猫もスキンシップが好きというわけではなく、触られるのが苦手な猫もいます。積極的に来られると、引いてしまう猫もいます。スキンシップは猫が望んだ時に行うようにしましょう。また、触る場所にも注意が必要です。頭や顔は猫も撫でられたい場所ですが、弱点であるお腹や感覚が敏感な手足は避けましょう。触りすぎにも注意が必要です。猫は「愛撫誘因性攻撃行動」と呼ばれる、撫でられすぎると攻撃が始まってしまう行動があります。突然始まることが多いのですが、耳の向きが後ろに変わったり、しっぽをたたきつけたり、体をこわばらせるなどは、猫が攻撃するサインになります。そのような様子が見られたら、触らずそっとしましょう。
噛む・引っ掻く行動で困った時のQ&A

Q1:眠い時に噛んでくるのは?
眠いときに噛んでくるのは、甘噛みであれば甘えによるものと思われます。興奮して強く噛んでくるのであれば、刺激が気になっている可能性があります。そのときは触るのをやめて、距離を取るようにしましょう。
Q2:子どもが引っ掻かれました。どうすれば?
猫は子供が苦手な傾向にあります。その理由として、突然動いたり大声を出したり、急につかんでくるからです。また、子供は加減を知らないので、猫を触る力が強い可能性もあります。そういった時には猫も本気で引っ掻きに来ます。その場合、まず子供と猫の距離を取る必要があります。猫が落ち着けるよう、静かな部屋や隠れ家に避難させるのがよいでしょう。絶対に猫も子供も叱ってはいけません。子供が話を理解できる年齢であれば、「猫の耳の向きが変わったら(後ろにいったら)触らないように」「少し触ったら終わり」などのルールを作りましょう。低年齢であるのであれば、必ず親がそばにつくようにし、子供と猫だけにならないようにしましょう。
Q3:急に噛むようになった
急に噛むようになった場合、痛みや病気によるものの可能性があります。すぐ動物病院を受診するようにしましょう。そのほか、強い精神的ストレスでも性格が変化することがあります。このような場合、自宅でのケアが難しいこともあるため、不安を和らげるような薬が必要になります。やはり動物病院を受診する必要があります。
まとめ:噛む・引っ掻く行動は「理由と対処」が分かれば必ず減らせる

猫は自分の身を守ったり、狩りの練習としての本能行動により噛む・引っ掻くことが起こります。また、自分の縄張りを主張するためにも爪とぎとしての引っ掻きもあります。それだけでなく、痛みや病気の症状としても同じことが起こります。
ストレスが原因の噛む・引っ掻くは、遊びでストレス発散をしたり、リラックスできる環境を用意することで落ち着いてきます。叱っても悪化するだけなので、叱らず対策を取りましょう。対策をしても改善しない場合、痛みや病気、強いストレスの可能性があります。動物病院に相談することを強くおすすめします。






この記事のご感想をお寄せください!(コメントを書く)