【獣医師執筆】猫の術後、エリザベスカラーと術後服はどっちがいい?メリット・デメリットと選び方

【獣医師執筆】猫の術後、エリザベスカラーと術後服はどっちがいい?メリット・デメリットと選び方

猫ちゃんの手術が決まると、飼い主さんが悩まれる問題の中に「術後のケア」が挙げられます。傷口を舐めてしまって開いてしまったら・・・。この質問は、診察室で非常に多く聞かれます。傷口対策グッズとして有名なのが、エリザベスカラー術後服ではないでしょうか。

「エリザベスカラーと術後服、どっちがいいの?」という疑問に対し、獣医師の視点からそれぞれのメリット・デメリット、そして愛猫に合った選び方を詳しく解説します。

結論!猫のエリザベスカラーと術後服はどっちを選ぶべき?

結論!猫のエリザベスカラーと術後服はどっちを選ぶべき?

比較表で見る!エリザベスカラーと術後服の違い

比較項目 エリザベスカラー
(透明)
エリザベスカラー
(視界を遮るタイプ)
術後服
視界
トイレのしやすさ
着脱のしやすさ
傷口の保護力(腹部)

選び方の基本は「手術部位」と「猫の性格」

エリザベスカラーも術後服も、どちらがよいかは「手術部位」「猫の性格」によって答えが変わります。術後の保護に関しては、まず獣医師からエリザベスカラーか術後服の提案が行われます。傷の場所が腹部や背部であれば術後服の方が良い場合もありますし、手足であればエリザベスカラーの方がよい場合もあります。

また、猫は普段から服を着る習慣がないため、術後服でパニックになることがあります。これはエリザベスカラーにおいても同じです。猫の性格に合わせて、よりストレスが少ない方が選ばれることもあります。

エリザベスカラーのメリット・デメリットと向いている猫

エリザベスカラーのメリット・デメリットと向いている猫

エリザベスカラーのメリット

エリザベスカラーは、猫の顔が出ないように調整して装着するため、傷口を舐められないように物理的にブロックできる構造です。傷口をほぼ確実に保護できるメリットがあります。また、スナップボタンで装着するものが多く、着脱が比較的簡単なのもメリットに挙げられます。

エリザベスカラーのデメリット

猫の顔をプラスチックのカラーで遮ってしまうため、正面しか見ることができなくなります。カラーの種類によっては透明なものもありますが、完全に透明ではありません。視界が遮られるため、いつも壁や隙間にカラーをぶつけてしまい、その音に驚いてしまうこともあります。また、ヒゲが当たるため、いつもと感覚が変化しストレスになる可能性があります。

こんな猫ちゃんにおすすめ!

顔周りや手足の手術、胃ろうチューブなどのカテーテルが出ている場合はエリザベスカラーがおすすめです。

服を着せられると固まって動けなくなってしまう猫はエリザベスカラーの方が良いかもしれません。

術後服のメリット・デメリットと向いている猫

術後服のメリット・デメリットと向いている猫

術後服のメリット

エリザベスカラーのように視界を遮らず、首回りに重さを感じないため、術後も普段通りに生活しやすいメリットがあります。猫の感覚を遮らないため、家具への衝突やトイレの入りづらさなどもありません。

術後服のデメリット

術直後など、痛みや違和感が強いと、服の上から傷口を舐めたり噛んだりしてしまう可能性があります。

服にはサイズがあるため、サイズが合わないと脱げてしまい、もう一度着せるのが難しくなってしまいます。服に抵抗がある猫は、服をビリビリに引き裂くこともあります。

こんな猫ちゃんにおすすめ!

避妊手術、腹部の手術、背中の手術などをした猫は傷が服に隠れます。胃ろうチューブなどを装着した猫は、チューブを保護できるタイプの術後服もあります。

エリザベスカラーをつけるとパニックになって暴れてしまう猫は多いため、そんな子にもおすすめです。

【獣医師の臨床経験から】術後ケアで気をつけたい3つのポイント

【獣医師の臨床経験から】術後ケアで気をつけたい3つのポイント

1. 傷口のチェックは毎日行い、術後診察は必ず受診を

近年、傷のケアに対する消毒のあり方が変化しており、消毒を頻繁に行わないケースが増えています。また、入院日数も短縮化しているため、術後は自宅で過ごすことが多くなっています。それに伴い、自宅で傷を観察していただく必要が出てきます。術後に起こりうる合併症には感染や傷が開く(離開)ことがあります。毎日傷口を観察し、傷口がジュクジュクしていないか、血が出ていないか、赤く腫れていないか、縫った糸がなくなったり傷が開いていないかを観察しましょう。術後に傷を確認するための診察がある場合、必ず受診しましょう。受診日よりも前に傷口の異常を見つけたら、すぐに獣医師に相談してください。異常に気づいても診察日まで様子を見てしまい、傷が開いていた、感染して傷が悪化していたケースは何度も経験しています。

2. 食欲と排泄の様子をよく観察する

術後は麻酔の影響や痛み、ストレスなどで食欲が低下したり、下痢などが起こることがあります。多くの場合、すぐに回復してくることがほとんどです。しかし、全く食べない、嘔吐が続く、排泄のトラブルが2日以上続く場合は、感染や何らかの術後の合併症が起きている可能性もあります。消化管の手術の場合、腸が破れてしまっていることもあります。少しでも様子がおかしければ受診しましょう。

3. どうしても「どっちも嫌がる」時の対処法

猫は服を着る習慣がないため、エリザベスカラーや術後服で強いストレスを感じてしまうことがあります。動けなくなったり、食事も摂れなくなってしまうこともあります。そのような場合は、柔らかい布製のエリザベスカラーやドーナツ型のエリザベスカラーをおすすめすることがあります。また、傷口を包帯などで保護し、術後服やエリザベスカラーを装着しないこともあります。この場合、定期的に診察を受ける必要があります。

エリザベスカラーが壁などにぶつかってしまって恐怖を感じることがあるため、エリザベスカラーの周囲にテープを巻いて衝撃を抑えたり、エサ皿の高さを高くしてご飯を食べやすくしてもらうなど、ストレスを少なくする環境づくりも重要です。

4. 術後服やエリザベスカラーを信用しすぎない

多くの動物病院が、術後の傷口保護として術後服やエリザベスカラーを装着した状態で退院にします。「動物病院でつけてもらったから大丈夫」かというとそうでもありません。

術後服やエリザベスカラーを信用しすぎないことが大切です。猫は体が柔らかいので、服やエリザベスカラーをしていても、傷口に届いてしまうこともあります。

当院では腹部の手術であれば術後服を採用しており、麻酔から覚める前に装着していますが、自宅で脱いでしまったり、布の上から傷を噛んでしまい離開した経験があります。少しでも傷を気にする素振りがあれば、次の手段を考えなければなりません。

まとめ:愛猫に合った選択で、ストレスフリーな術後を!

猫用エリザベスカラー
術後服

エリザベスカラーと術後服、どちらが良いかは「手術部位」「猫の性格」次第です。獣医師からのアドバイスを参考に、愛猫のストレスが少ない方を選んであげましょう。

術後は飼い主さんも不安が大きいと思いますが、この記事を参考に、猫ちゃんにとって快適な療養期間を作ってあげてくださいね。

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