ストーブを囲む冬、黒猫と白猫と私

ストーブを囲む冬、黒猫と白猫と私

はじめましての方も、そうでない方もこんにちは。ミニマリストの阪口ゆうこです。


今年の冬、わが家に黒くて大きくて無骨なストーブがやってきた。

家電のくせに妙に威圧感があって、リビングの真ん中にドーンと居座るその姿は、どう見ても「来てやった」という顔をしている。

まさか家電に存在感で負ける日が来るとは思わなかった。

エアコン限界説と道産子の教え

ここ数年、私は冬はエアコンで乗り切る派だった。

しかし、電気代の高騰は容赦がない。

「エアコンを強めにしたら財布が泣く。弱めたら私が泣く。」

どちらに触れても財布か私のどちらかが風邪を引く地獄のような冬を何年か経験し、ついに悟った。

エアコン限界説と道産子の教え

そこで私は、冬のプロこと道産子に意見を求めてみた。

即答で返ってきたのは「あたたかさを得たいならストーブ一択だよ」という極めてシンプルな答えだった。


この潔さに背中を押され、私はついに決断した。

灯油も決して安くはないけれど、どうせお金を出すなら暖かさが強いほうを選びたい。


そこからは、どのレベルのストーブがわが家に合うか、どれだけ暖かいのか、灯油の減り方はどうか。

ひたすら現実的な計画を重ねていった。

そこからは、どのレベルのストーブがわが家に合うか、どれだけ暖かいのか、灯油の減り方はどうか。  ひたすら現実的な計画を重ねていった。

本音は「猫たちを幸せにしたかった」

正直に言う。

ストーブを迎える本当の理由は、猫たちだった。


この時期にSNSでよく見かける、こたつやストーブにぎゅうぎゅう集まる猫の写真。あの幸せの塊みたいな光景を見るたびに思っていた。


暖房器具のチェンジのキッカケは「うちの黒猫と白猫にも、あんな冬を味わわせたい」という気持ち。

そして決め手は「私もあの塊に顔を埋めたい」という、欲望だった。

冷蔵庫の上の猫たち

ストーブを迎える前、黒猫と白猫はいつも冷蔵庫の上にいた。


冬の冷蔵庫の上は、実はほんのり暖かい。

猫たちはそういうことを一切の迷いなく理解している。

夏には一番涼しい場所、冬には一番暖かい場所へ。

その移動の正確さたるや、サーモカメラでも内蔵しているのかと思うほどだ。

冬の冷蔵庫の上は、実はほんのり暖かい。 猫たちはそういうことを一切の迷いなく理解している。 夏には一番涼しい場所、冬には一番暖かい場所へ。 その移動の正確さたるや、サーモカメラでも内蔵しているのかと思うほどだ。

ただ、深刻な問題があった。


冷蔵庫のフィルター掃除をしたときのこと。

ふたを開けた瞬間、私は固まった。

膨大な毛が詰まっていたのだ。

集めたらジャンガリアンハムスター1匹分くらいにもなりそうな…冷蔵庫が壊れても不思議じゃない状況だった。


まめにメンテナンスをすればいい話なのだが……。


「絶対できない」


この未来がリアルに見えてしまった。

私は決して自分を過信しないタイプである。


だから、猫の方から冷蔵庫に距離を置いてもらいたかった。

その誘い水として、ストーブはほぼ唯一の希望でもあった。

そして11月、運命の日:ストーブ点火

ある11月の寒い日、私はついにストーブを点火した。


ボッ、と静かに灯り、

じんわりとゆっくりと温かい空気が広がる。しかしその暖かさは「本気」と書いてマジと読む。

暖かいというか、もはや暑い。

一瞬、真夏のカリフォルニアかと思った。

行ったことないけど。

ボッ、と静かに灯り、 じんわりとゆっくりと温かい空気が広がる。しかしその暖かさは「本気」と書いてマジと読む。 暖かいというか、もはや暑い。 一瞬、真夏のカリフォルニアかと思った。 行ったことないけど。

その時だった。

黒猫と白猫が 「待ってました」 という顔で近づいてくる。

暖かさの気配を0.1秒で察知し、一直線でストーブ近くへ。

その判断力たるや、現代に生きる若者たちに、模範として見せたいレベルだった。

その時だった。  黒猫と白猫が 「待ってました」 という顔で近づいてくる。  暖かさの気配を0.1秒で察知し、一直線でストーブ近くへ。  その判断力たるや、現代に生きる若者たちに、模範として見せたいレベルだった。

ベンチの上で溶ける猫たち

ストーブの前には小さなベンチがある。

すると白猫はその上にふわっと乗り、とろ〜んと溶けていった。


黒猫は壁際で熱い空気を吸い込む。

姿勢を少し変えながら、目は半開き。呼吸は最小限。“だらしないの極み”を全身で表現し、完全に“悦の冬”を味わっていた。

黒猫は壁際で熱い空気を吸い込む。  姿勢を少し変えながら、目は半開き。呼吸は最小限。“だらしないの極み”を全身で表現し、完全に“悦の冬”を味わっていた。

あんなに毛まみれなのにさらに暖を欲するなんていささか信じられないが、実際に猫たちは、暑いぐらいのカリフォルニア気候が好きなのだ。

行ったことないけど。


その姿を見るためにストーブを買った私は、静かに心で泣いた。

一瞬でストーブ代の元がとれた気分になり、私も猫と同様、悦に入った。

ストーブで気をつけたいこと

ただ、ストーブを導入してみてわかった。

暖かさの裏には、油断と落とし穴がある。


まず、猫がストーブ前に集合しすぎること。

ゼロ距離すぎて心配になる。

あまりに近いので、つい前髪(というのか知らんけど)が焦げるのでは?と思ってしまう。

ただ、ストーブを導入してみてわかった。 暖かさの裏には、油断と落とし穴がある。  まず、猫がストーブ前に集合しすぎること。 ゼロ距離すぎて心配になる。 あまりに近いので、つい前髪(というのか知らんけど)が焦げるのでは?と思ってしまう。

しかし猫という生き物は、熱さの限界も正確に把握しているらしく、ほぼギリギリのところで踏みとどまり、危険を回避する。

この危険予知力も、現代社会で働きすぎの若者たちに見てもらいたい。


そして、ストーブ前の暖かさは、人間にも猫にも平等に魔性だ。

猫がとろけるのは可愛いが、その横にいると飼い主であるこちらまでつい一緒に溶けてしまう。

「ちょっと座るだけ」のつもりが、気づけば猫と横並びで1時間ほどぼーっとしていたりする。

ストーブの前では、猫も人間も思考が蒸発するらしい。

そして、ストーブ前の暖かさは、人間にも猫にも平等に魔性だ。  猫がとろけるのは可愛いが、その横にいると飼い主であるこちらまでつい一緒に溶けてしまう。  「ちょっと座るだけ」のつもりが、気づけば猫と横並びで1時間ほどぼーっとしていたりする。  ストーブの前では、猫も人間も思考が蒸発するらしい。

さらに小言を言わせて貰えば、「灯油の消費、思ってたより早くね?」という静かな心のざわめきと「給油がシンプルにダルい」という苦労がある。

しかも黒だからホコリも目立つ。

当たり前だが、ストーブにも管理が必要なのだ。


しかし、そんな悩み、ストーブ前でとろける猫たちを見てしまえば一瞬でどうでもよくなる。猫が溶ける姿は、すべてを「これが正解」と思わせる力がある。

冬の主役が変わった

今、わが家のリビングには、黒いストーブと黒猫と白猫が並ぶ冬の景色がある。

火の揺らぎと、猫の呼吸。

その静かな交互運動が、冬の生活音になった。

ああ、この光景のためにストーブを買ったんだな、としみじみ思う。


今年の冬、わが家の主役はもう決まっている。


ストーブと猫。

私はただの両者のお世話係である。


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