動物病院で、治療のために療法食を勧められたことがあるかもしれません。「療法食と普通のフードと何が違うの?」「うちの猫にも必要なの?」と疑問を持つ飼い主さんは少なくありません。本記事では、獣医師が猫の療法食の基礎知識と上手な取り入れ方を分かりやすく解説します。
猫の療法食とは?基本の理解から始めよう

療法食と総合栄養食の違い
総合栄養食は、猫にとって必要な栄養がバランスよく配合されており、そのフードと水だけで健康を維持できるように配合されたフードです。総合栄養食に似ているものとして、一般食というものがありますが、これは栄養バランスなどは配慮されておらず、嗜好性を高めるためなどに使われる食事です。療法食は、病気の治療のために設計された、獣医師から処方される特別なフードです。
総合栄養食はペットショップやホームセンターで市販されていますが、療法食は獣医師からの処方が必要なため、動物病院など限られたところで販売されています。
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療法食が必要になる猫の主な病気(腎臓病・尿路結石・肥満・糖尿病など)
療法食はかなり種類があり、下痢や嘔吐に対応した物から腎臓病など長期的に使用される物まであります。療法食が必要になる主な病気としては、腎臓病や膀胱結石などの腎泌尿器疾患、糖尿病などの代謝性疾患、減量用フード、アレルギー性疾患に対応するフードなどがあります。
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療法食は薬ではなく「食事による治療」の一環
療法食が必要になるのは、治療に時間がかかったり、一生涯治療が必要になる疾患がほとんどです。病気によっては、食事中の成分を制限しなければならないこともあります。例えば、腎臓病であればタンパク質を制限したり、糖尿病であれば糖分の制限が必要になります。それらは薬ではコントロールができないこともあり、治療の補助として食事でコントロールしていくことが必要になります。
猫に療法食を与えるときの注意点

獣医師の診断に基づいて始めることが大切
療法食は獣医師の処方が必要です。処方といっても、実際は診察中に療法食を提案され、それを購入するものですが、獣医師が治療に適したフードを判断しています。そのため、基本的には飼い主さんの自己判断で購入しないようにお願いしています。
また、療法食はフードの量も獣医師から指示されます。過去にあった事例では、飼い主さんがネット販売を利用して自己判断で療法食を購入し、量も自己判断で与えてしまったために体重過多や体調不良を起こしたケースがありました。もし療法食で気になるフードがあるのであれば、一度かかりつけ医に相談しましょう。
猫が食べてくれないときの工夫(切り替え方、匂いや温度の工夫)
療法食は総合栄養食とは異なり、成分の調整が行われています。そのため、療法食を食べない猫は少なからずいます。特に腎臓病食は猫が旨味を感じるタンパク質を制限しているため、なかなか受け入れられないことはよくあります。
療法食を始めるときは、2週間程度かけて前のフードから切り替えをしていきます。療法食の味に慣らすためと、療法食も食事であることを猫に理解してもらうためです。療法食に切り替えないといけない気持ちから、焦って急に切り替えてしまうことがありますが、時間をかけて切り替えましょう。まず、今までのフードの10%を療法食に置き換えます。食べにくい場合はもっと少ない量からでも構いません。毎日療法食の量を10%ずつ増やしていき、約2週間かけて切り替えていきます。
フードを少し温めると匂いが強くなるため、猫の興味を引くことができます。与える前にフードが熱すぎないか確認してから与えましょう。ウエットフードを利用したり、少しふやかしてみるのもよいでしょう。
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多頭飼い家庭での注意点
多頭飼育をしている家庭では、他の猫にフードを食べられたり、逆に他の猫のフードを食べてしまうことがあります。療法食を食べなければならない猫が、しっかり食べれていないこともあります。多頭飼育の家庭で療法食を与える場合、ご飯の時間は隔離する方がよいでしょう。フードは出しっぱなしにせず、ご飯の時間に用意するようにしましょう。他の猫のフードも同じようにしまうようにしましょう。
猫の療法食に関するよくある質問(FAQ)

療法食は一生続ける必要があるの?
病気の内容にもよりますが、一時的でよいものもあれば、一生継続する必要があるものもあります。療法食の継続は獣医師が判断するため、自己判断で中断しないようにしましょう。
普通のキャットフードと混ぜても良い?
療法食は療法食のみで与えましょう。ただし、フードの切り替えの時は混ぜて与えることはあります。フードについてわからない点は、獣医師に相談するようにしましょう。
療法食はネット購入しても大丈夫?
療法食は獣医師の処方が必要です。療法食のメーカーもネット販売を制限しているところが多く、限られたサイトでしか購入できないようになっています。購入の際も、動物病院の紹介などが必要です。獣医師の処方でネット購入が許可されている場合、継続してネット購入することができます。ネット購入は自宅に配達してもらえ、配達日を指定できるメリットがあります。もし、フードの種類を変更するのであれば、一度獣医師に相談する必要があります。
猫が嫌がる場合の代替案は?
どうしても猫が療法食を受け入れない場合、療法食のメーカーを変えてみるのもよいでしょう。また同じメーカーでも、味の種類がいくつかあることがあります。まずは療法食な中で食べられるフードがあるかを探しましょう。フードをふやかしたりするのもよいでしょう。それでも受け入れにくい場合は、医薬品で治療していくことになります。
療法食以外の物を自己判断で与えるのはよくありません。必ず獣医師に相談しましょう。
まとめ|猫の健康に合った療法食を選ぶために

療法食は病気の治療のために必要な食事です。療法食は治療の補助であり、それにより猫の健康的な生活を送ることができます。
療法食は獣医師の処方が必要になります。自己判断でフードを購入したり中断せず、必ず獣医師に相談して購入しましょう。
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