保護猫が夜泣きをする原因と対処法を獣医師が解説

保護猫が夜泣きをする原因と対処法を獣医師が解説

保護猫をお迎えした後、夜泣きで悩まされてしまうことがあります。夜泣きが起こると、飼い主さんの睡眠が妨害され、ストレスが溜まってしまいます。

猫は夜行性だから仕方ないのでしょうか?

猫が夜泣きをしてしまうのには原因があります。その原因と対処法について解説します。

猫の1日の行動について

猫の1日の行動について

猫が夜泣きをする原因を解説する前に、猫の1日の行動について解説します。

猫の1日の睡眠時間は、成猫で約16時間ほど眠ります。元々狩りをする動物であるため、狩り以外の時間に休んで体力を温存します。

猫は夜中ずっと起きているのではなく、空が薄暗くなる早朝と夕方に活動する「薄明薄暮性」と呼ばれる行動パターンを取っています。そのため、その時間帯になると活発に動き始めたり、鳴き始めたりすることがあります。

また保護猫は外で生活していることが多く、人の動きが少ない夜に活動する傾向があります。

猫が夜泣きをする原因

猫が夜泣きをする原因

猫が夜泣きをするのは、先程述べた行動パターンによるものだけではありません。これらの夜泣きが一晩中続くものではなく、時間が経つと静かになります。

飼い主さんが寝れないほどの夜泣きの主な原因は、ストレス、要求、発情、疾患、認知症に分かれます。それぞれについて解説します。

ストレス

保護猫が家に来てすぐは、強いストレスに襲われます。個体差もありますが、慣れるまでに成猫であれば2週間以上、長ければ1年以上かかることもあります。その間、保護猫は不安が強くなるため、昼夜問わず大きな声で鳴くことがあります。

要求

保護猫が慣れてくると、食事や遊び、トイレの掃除を要求して鳴くことがあります。信頼関係ができてきた証拠にもなり非常に可愛いものですが、要求鳴きはずっと続きます。特に若い年齢の猫であれば、活動量が非常に多いため、家の中での生活ではうまく発散できなくなり、要求による夜泣きが起こります。

発情

保護猫は成猫が多く、避妊手術や去勢手術といった不妊手術が行われていないこともあります。

発情シーズンになると、不妊手術を受けていない猫は出会いを求めて夜中に活動的になります。発情が起こると、発情特有の鳴き声を出し異性にアピールします。その声は非常に耳障りで大きな声なので、びっくりすることでしょう。

不妊手術済みの猫でも発情経験があると、発情シーズンが来るとソワソワすることもあります。

疾患

疾患によって夜泣きが起こることがあります。夜泣きが起こる疾患は非常に多くありますので、特に夜泣きが多い甲状腺機能亢進症について説明します。

・甲状腺機能亢進症

甲状腺は喉にある組織であり、甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺が大きくなったり腫瘍化すると、甲状腺ホルモンが異常に多く分泌されるようになります。これが甲状腺機能亢進症です。

甲状腺ホルモンは体を活発にする働きがあるため、甲状腺機能亢進症になると異常に活動的になります。そのため、食べても痩せていき毛艶がなくなってきます。今までおとなしかった猫が、怒りやすくなります。夜中も活動的になるため夜泣きをします。


この他にも、腫瘍や腎臓病でも夜泣きが起こります。これらの疾患は痛みや吐き気が強く起こるため、辛さから鳴きます。昼夜問わず鳴く傾向にあります。

また、耳が聞こえない、目が見えない場合でも、夜泣きが起こることがよくあります。

認知症

猫も高齢になると、認知症を発症します。認知症の症状として、夜泣き、徘徊、排泄障害などがあります。認知症になると、寝る時間が長くなるため、昼夜逆転現象が起こりやすく、夜に活動するようになります。

また、高齢の猫は視覚や聴覚が衰えてきます。視覚や聴覚が衰えると、不安から大きな声で鳴くようになります。夜起きて大きな声で鳴くので、高齢猫の介護で一番ストレスになる部分でもあります。

夜泣きの対処法

夜泣きの対処法

夜泣きの主な原因を5つ挙げました。夜泣きは飼い主さんにとっても非常にストレスになるので、早めに対処していく必要があります。対処法について解説していきます。 

不安を取り除く

保護猫が来てしばらくの間は不安が強く、夜泣きをする可能性があります。不安を軽減するために、ケージをタオルで覆って目隠しをしましょう。

動物病院では、猫の不安を軽減する薬、サプリ、フェロモン剤を取り扱っています。このような薬剤などを使用することで、保護猫が落ち着きを取り戻し、夜泣きが改善する可能性があります。

食事やトイレ掃除に注意する

食事の量が少なかったり、トイレの掃除が行き届かないと、夜中に飼い主さんを起こします。

フードの袋に書いてある給餌量は、あくまで目安であり、体型や運動量、排便の状態を見ながら、実際の給餌量を決定します。夜中に食事を要求する場合、食事量が足りない可能性があります。寝る前にフードを少し与えてから寝るのも一つです。ただし、寝る前におやつを与えると、逆にもっと要求される場合があります。

猫は、前の排泄物が残っているとトイレ掃除を要求します。寝ているときにトイレをする猫も多く、そのたびに起こしてくるかもしれません。泌尿器系の病気にならないためにも、こまめにトイレ掃除をし、特に飼い主さんが寝る前には念入りに掃除をした方がいいでしょう。

たくさん遊ぶ

若い猫ほど1日の活動量は多く、室内飼育下ではうまく発散できないことがあります。それにより、夜間も興奮して鳴いたり走り回ったりします。まさに夜の大運動会が開催されるのです。

夜寝る前に15分程しっかり遊んであげましょう。ポイントは、飼い主さんも一緒に遊ぶことです。猫だけで遊んでいても楽しくありません。おもちゃを活き活きと動かしてあげましょう。

猫は狩りをする動物なので、おもちゃを振り回すだけでなく、少しずつ動かしたり、急にスピードを早めたり、物陰から動かしてみたり、猫の本能をくすぐる動きをすると猫は非常に満足します。

日中留守になりやすいご家庭の場合、転がすと餌やおやつが出る知育玩具を使用すると、楽しくお留守番ができます。

不妊手術を行う

発情によって夜泣きが起こりやすいため、早めに不妊手術を行うことをお勧めします。

不妊手術のメリットは、夜泣きの改善だけでなく、発情に伴うスプレー行動(臭い尿を壁に吹きかける)や脱走を防ぐことができます。また、手術した猫の方が、していない猫よりも寿命が延びることが研究によって分かっています。若いうちに手術を行うと、乳腺や生殖器の疾患を防ぐこともできます。

しかし、全身麻酔下での手術なので、必ずリスクが伴います。また、すでに発情を経験している成猫の場合、発情に伴う行動は手術を行っても改善できないことがあります。その場合は、抗不安薬を使用することもあります。

動物病院に相談する

猫の夜泣きは疾患や認知症の可能性があります。特に保護猫は、年齢がわからない成猫がほとんどです。家に迎えたときには、すでに7歳以上のシニア期に入っていることも少なくありません。

シニア期に入ると、様々な疾患が出てきます。先ほど解説した甲状腺機能亢進症や腫瘍性疾患、腎臓病も高齢になってから発症します。早めに動物病院にかかることで、病気の発見につながるかもしれません。治療により、夜泣き自体が改善する可能性があります。

認知症についても動物病院に相談しましょう。認知症は治りませんが、症状の改善に役立つサプリの処方ができます。あまりにも夜泣きがひどい場合は、睡眠薬を使用する場合もあります。

まとめ

まとめ

猫の夜泣きは、睡眠時間を削られてしまうため、かなりのストレスになります。

夜泣きには必ず原因があります。原因が分かると対処法も分かります。まず、ストレスや要求がないか、遊びが足りているかを確認しましょう。不妊手術をしていない子は、なるべく早めに手術を受けましょう。

夜泣きが病気によることもあります。一度動物病院で診察を受けることをお勧めします。

夜泣きで悩まされるとつらくなりますが、決して一人で抱え込まないようにしましょう。


コメント:1


  • ソナ

    3日前、5年間毎日餌をやり続けた猫をついに捕獲し連れてきたのですが、毎夜、夜泣きが酷く、1秒おきに泣きます。抱っこしたり、布団の中に入れて寝ても泣き止みません。仲間に会いたいのでしょうか?元に戻した方が猫にとっては良いのでしょうか?年齢は8歳位だと思います。


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