猫を飼育している人の中には、複数飼っている方も少なくありません。「兄弟猫を一緒にお迎えした」「一匹だとさみしいかも」と、様々な理由で多頭飼いされています。多頭飼いは猫同士で遊べるメリットがありますが、絶対仲良しになれるとは限りません。最悪の場合、一緒に住めない状況になることもあります。
今回は、仲が悪い猫について解説します。
猫同士の不仲の主な原因とは?

縄張り意識と環境の変化
猫は元々単独行動をします。オス猫は繁殖のために縄張り意識が強く、自分のテリトリーを守ろうとします。去勢をしていないオス猫の場合、特に強くみられることがあります。新しい猫が来ることは、自分のテリトリーに敵がやってきたとみなされることがあります。新入りの猫にとっても、見知らぬ環境で緊張してしまうため、攻撃的になりやすくなります。初対面がうまくいかないと喧嘩になってしまい、不仲になってしまうことがあります。
トイレの個数や食器の位置、水飲み場の数、猫個人のスペースの減少なども不仲の原因になります。猫はもともとは喧嘩を好まないため、お互いの距離をうまく取ることで争いを回避しています。お互いに十分なスペースの確保が必要になります。
また、元々仲の良かった同居猫でも、猫の通院・入院により関係が悪くなることがあります。病院という嫌いなにおいをつけて戻ってくるため、他の猫にとっては恐怖でしかなくなるためです。
年齢差や性格の違い
多頭飼育をするときは、なるべく近い年齢が望ましく、理想的には年齢差が3歳以内であれば成猫同士でもうまくいくことがあります。年齢差が少ないと、体力や興味などが近いため、一緒に遊べることがあるようです。シニア猫のいるところに子猫が入ってくると、子猫の体力にシニア猫が参ってしまうため、その場合は部屋を分けるなどの対策が必要です。
性格も重要です。怖がりな性格の猫は多頭飼育には向きません。好奇心旺盛な猫の方が、他の猫を受け入れやすいことがあります。
発情期やホルモンの影響
発情期は繁殖のためにテリトリー意識が強まったり、攻撃的になりやすくなります。オス猫だけでなく、メス猫も気性が荒くなることがあります。そのため、普段は仲がいい猫同士でも喧嘩に発展することもあります。
体調不良やストレス要因
猫も体調が悪いと、気性が荒くなることがあります。特に痛みがある場合、近づくだけで威嚇したり、強めのパンチが飛んでくることがあります。また、ストレスが強い環境だとイライラしやすくなります。さらにストレスが溜まってしまうという悪循環が起きてしまいます。
猫同士の関係を改善するためのステップ

初対面の際の適切な導入方法
新しく猫をお迎えする場合、いきなり猫同士を対面させてしまうと大喧嘩に発展することがあります。そのため、まずはお互い隔離をし少しずつ慣らしてていくことが必要です。新しい猫が環境に慣れる必要があるため、いきなり先住猫に合わせると強いストレスになります。数日はケージなどで新しい環境に慣らしてから、先住猫に対面させましょう。猫同士が慣れるのに、2週間から1か月程度の時間が必要です。
家に慣れてきたらすぐ合わせるのではなく、お互いのにおいを交換します。そうすることで、お互いの存在を知ることができます。タオルなどをそれぞれの体にこすりつけ、においをつけます。におい交換は1から2週間ほど行います。
においに慣れてきたら、新しい猫をキャリーケースなどに入れて対面させましょう。その時、おやつを入れておくなど、楽しい経験をさせてあげましょう。初めての対面は5分程度とし、少しずつ時間を延ばしていきます。
お互い強い威嚇が見られなければ、飼い主立ち合いの元、キャリーケースから出して触れ合わせます。どちらかが攻撃していたり、ひどくおびえているようであれば、すぐに離しましょう。初めは5分程度から始めます。特に問題なければ、少しずつ時間を延ばしていき、同じ部屋の中で過ごすようにします。必ず飼い主さんが立ち会ってください。特に問題なく接しているようであれば、半日一緒に過ごすなど時間を延ばします。
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トイレや個別のスペースなどの確保
仲が良い猫同士でもちょっとした環境の変化で不仲になることがあります。トイレの個数が足りなかったり、自分のスペースが確保できなかったりすると喧嘩に発展し、そのまま不仲になることがあります。トイレは猫の頭数+1個以上を用意し、場所を分けて設置しましょう。餌皿や水飲み場も考える必要があります。他の猫との距離が近いと喧嘩になることがあるため、少し距離を空けたり場所を分けて用意しましょう。猫のベッドなども同様です。
多頭飼育をしていると、なんとなく関係が悪い猫がわかるかと思います。逃げ込める場所を用意したり、部屋を分けることも考えましょう。
フェロモン製品などでストレスを緩和
多頭飼育をしていたり、新しい猫を迎えるときは猫にとっても大きなストレスになります。ストレスを緩和するためにフェロモン製品やストレスを和らげるサプリなどでストレスケアをしましょう。猫の顔から分泌されるフェロモン剤を製品化したものがあります。スプレーやディフューザーなどで、猫のいる空間にフェロモンを満たすと猫が安心できます。引っ越しや猫をお迎えするときに使用されます。サプリの中にはストレスを緩和するものがいくつかあります。
共通の遊びやポジティブな経験の提供
まだまだ若い猫であれば、遊びに誘うと喜んでくれることでしょう。不仲な猫同士でも、一緒に遊ぶうちにまた関係を取り戻せることもあります。おやつをそれぞれの猫にあげて、少しずつ距離を縮めるのも良いでしょう。
ただし、関係性がかなり悪い場合は改善しないことが多いでしょう。
避けるべき行動と注意点

強制的な接触のリスク
仲が本当に悪い猫は、一緒に過ごさせることは非常に難しくなります。普段はお互いに距離を取り接触しないようにしますが、何かのきっかけで距離が近くなるとひどい喧嘩に発展し、ケガをしてしまうことも少なくありません。猫同士がかなり距離を取っている場合やお互いの行動を見張っているとき、猫同士の視線が合うと耳を反らして威嚇の体勢に入る場合は、いつ喧嘩が起きてもおかしくない状況です。そのような猫たちは部屋を分けるなど、接触させないことがお互いのためになります。強制的に接触させることはケガをさせるだけでなく、お互いに嫌な経験を蓄積させてしまいます。
叱責や罰の逆効果
猫は人の言葉を理解しません。飼い主さんのエゴで仲の悪い猫同士を無理矢理近づけたり、攻撃したら叱ったりたたくなどの罰を与えてしまうと、「お前のせいで嫌な思いをした」と猫同士が思ってしまい、余計仲が悪くなってしまうかもしれません。飼い主さんとの関係性にもひびが入ってしまうかもしれません。もし喧嘩に発展しそうな場合は、お互いにタオルをかけて視界を奪い、その間に部屋を移動させるなどの対処が必要です。
猫のサインを見逃さない
猫が他の猫を嫌っていると、距離を取ろうとします。嫌いな猫からなるべく遠くなるように距離を取り、近くを通るときもなるべく遠ざけて通る行動をします。また、嫌いな猫の行動を目で追っていることが多く、近づいてきたらすぐ逃げます。耳や姿勢にもサインは出ています。耳が反り返ったり、背中を丸めている姿勢は要注意です。そのような状況であれば、猫同士を隔離するなどの対策が必要です。過剰グルーミングなども現れることもあります。
専門家への相談が必要な場合

行動専門医や獣医師への相談タイミング
仲が悪い猫同士は距離を取ることが一番ですが難しい状況であったり、ひどいケガをするレベルの喧嘩が何度も起きてしまう場合には、専門家の力を借りる必要があります。ストレスが溜まりすぎて、過剰グルーミンググルーミングになっていたり、膀胱炎や食欲不振などの精神的・身体的不調が現れている場合も獣医師に相談しましょう。
専門家の介入方法
専門家はまず猫同士のプロフィールを確認します。必要であれば猫の診察をして、痛みなどがないかを確認します。猫の自宅での様子は動画で確認することもあります。住宅環境についても確認し、対処方法をアドバイスしていきます。必要であれば抗不安薬やサプリ、フェロモン剤などを提案します。
まとめ

猫同士が仲良しであれば喜ばしいことですが、残念ながら仲が悪い猫もいます。特に新しい猫を迎えたり、環境などが変わると関係が悪化することがあります。仲が悪い猫はお互いにサインを出しています。サインに気づいたら、すぐ距離を取れるようにしましょう。猫同士がひどい喧嘩をしないことが重要になります。
猫同士を仲良くさせようとするのは飼い主さんのエゴであることを忘れないようにしましょう。
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