獣医師が解説!猫のアミロイドーシスとは?症状・診断・治療法と予防策は?

獣医師が解説!猫のアミロイドーシスとは?症状・診断・治療法と予防策は?

アミロイドーシスという言葉を聞いたことがありますか?アミロイドーシスとは、アミロイドというタンパク質が腎臓などの臓器に沈着することによって起こります。今回は猫のアミロイドーシスについて詳しく解説します。

猫のアミロイドーシスとは?獣医師が病気の特徴を解説

猫のアミロイドーシスとは?獣医師が病気の特徴を解説

アミロイドーシスの基本情報と原因

アミロイドはタンパク質の一種ですが、感染、炎症、腫瘍などさまざまな全身性疾患によって作られる、繊維状の異常蛋白です。全身性疾患により免疫が反応することでアミロイドが作られ、臓器の細胞と細胞の間に沈着し、臓器の機能障害を起こすことをアミロイドーシスと呼びます。体のどこにでもアミロイドは沈着しますが、特に腎臓や肝臓に沈着しやすいことがわかっています。アミロイドーシスの発生自体は比較的稀な病気ですが、治療方法や予防方法などは確率されていません。近年、肝アミロイドーシスは増加傾向とも言われています。

どんな猫がリスクが高い?年齢や品種などの傾向

アミロイドーシスは、遺伝が関与すると考えられています。アビシニアンやシャムは好発猫種と考えられていますが、どの猫種でも発症の可能性はあります。特にアビシニアンは、遺伝的にアミロイドの構造が変わっており、腎臓でのアミロイドーシスの発生率が高いとされています。

アミロイドーシスは7歳前後での発症が多いのですが、アビシニアンの場合は1歳未満で発症することがあります。

猫のアミロイドーシスの症状

猫のアミロイドーシスの症状

アミロイドーシスの症状

アミロイドーシスはアミロイドが臓器に沈着し、臓器に機能障害が起きる病気です。全身の臓器に沈着しやすいですが、特に腎臓と肝臓に多いとされています。腎臓や肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気がかなり進行した状態まで症状が現れません。そのため、初期の段階で病気を見つけることはかなり難しいでしょう。

次のような症状がある場合は注意が必要です。

  • 元気、食欲がない
  • 痩せてきた
  • おしっこの量が多い
  • 体がむくんでいる、お腹だけが膨らんでいる
  • 嘔吐や下痢
  • 目や皮膚が黄色い(黄疸)
  • 出血傾向

障害された臓器によって症状が異なりますが、腎アミロイドーシスや肝アミロイドーシスはこのような症状に注意が必要です。

重症化すると、タンパク質が失われてしまうため、血圧低下や貧血が起こることもあります。肝アミロイドーシスの場合、肝臓がもろくなるため、破裂する恐れがあります。

他の病気との鑑別点

アミロイドーシスの診断は組織生検という、臓器の一部を採取する検査によって診断されます。そのため、血液検査や画像検査から診断することは非常に難しい病気です。そのため、腎臓病や肝臓病として診断されることも少なくありません。

アミロイドーシスの診断方法:獣医師が行う検査の流れ

アミロイドーシスの診断方法:獣医師が行う検査の流れ

血液検査や超音波検査

血液検査は全身状態を反映しますが、初期の段階で検出することは難しいと思われます。特に腎臓は、腎臓の75%の機能低下が起こると血液検査の異常値として現れます。タンパク質の低下、血小板の低下、貧血、黄疸、肝機能、腎機能などの評価を行います。

超音波検査は腹部の臓器をより精密に検査することができます。肝臓や腎臓などの臓器の構造、大きさをチェックし、腹水が貯留しているかを確認することができます。

臓器の組織生検とその重要性、コスト

アミロイドーシスは組織生検のみで診断が可能です。臓器に針を刺す細胞診では診断できません。そのため、開腹手術にて臓器の一部を切除します。アミロイドーシスに罹患している組織は、切除によって大出血する恐れがあります。そのため、大出血に対応できる二次病院などで行うことが望ましい検査です。開腹手術による検査のため、麻酔費用や手術費用、病理検査費用、入院費用などがかかります。十万円以上はかかる高額な検査になります。

アミロイドーシスの治療法と生活管理のポイント

アミロイドーシスの治療法と生活管理のポイント

内科的治療と対症療法の選択肢

アミロイドーシスは残念ながら治療法はなく、沈着したアミロイドを除去することもできません。全身の炎症が原因となっているため、原因を取り除く治療と症状に合わせた対症療法を行います。

浮腫や腹水などが見られる場合は利尿薬などを使用します。腹水が多く溜まっていると呼吸困難になるため、腹水を抜くこともあります。腎アミロイドーシスでは慢性腎臓病の症状が出るため、皮下点滴や降圧剤を使用します。肝アミロイドーシスでは止血がうまくできない凝固異常が起こることがありビタミンKを使用したり、肝臓を守る肝庇護剤を使用します。

浮腫が起こるため低ナトリウムを心がけた食事が必要です。タンパク質は腎機能が著しく低下している場合は制限が必要になります。

獣医師の立場から見る予後改善のための管理法

アミロイドーシスは根治することはできず、長期的な生存も見込めません。そのため、症状を緩和しQOLを高めることが重要になります。アミロイドーシスは全身の炎症が原因となります。口内炎や感染症、腫瘍などがあると発症する可能性があります。腫瘍の予防はできませんが、定期的なワクチン接種や駆虫、口腔ケアを行い、炎症を取り除くことが大切です。また、アミロイドーシスと診断されたら、塩分を制限した食事などに切り替える必要があります。

現時点でアミロイドーシスを予防することはできず、確定診断にたどりつくのが難しい病気です。そのため、炎症が起きるような病気にかからないように気を付けること、口腔ケアをすること、適切な食事を与えることが重要です。また早期発見はまずできないため、少しでも体調の変化に気づいたら診察を受けるようにしましょう。

患猫との日々の生活で気を付けること

ストレスがかかることはアミロイドーシスの悪化要因と考えられています。ストレスがかからないように配慮し、なるべく安静を保つようにしましょう。アミロイドーシスにかかっている臓器はもろく、特に肝アミロイドーシスは腹部をぶつけたりすると、肝破裂を起こしお腹の中で大量出血を起こしてしまい、命に関わります。運動はなるべく控えるようにしましょう。

まとめ

まとめ

アミロイドーシスは、全身の炎症によりアミロイドが臓器に沈着する病気です。それにより臓器の機能障害が起こります。アビシニアンやシャムは遺伝的に発生が多いとされていますが、全身的な炎症がある猫は発症する可能性があります。治療法がないため対症療法が治療のメインとなります。

また予防法はなく、早期発見も難しく、診断に至ることができないことも少なくありません。何かの病気になったら早めに治療を行い、炎症が続かないようにしましょう。もしアミロイドーシスになってしまったら、食事や薬による管理を行い、なるべく安静に過ごすように心がけましょう。


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