「愛猫がスーパーのビニール袋を舐めちぎっていた」「お気に入りの毛布に穴が開いている」…そんなヒヤッとする経験はありませんか?食べ物ではない布やビニール、紐などを噛みちぎって食べる行動は、単なるイタズラではなく「異食症」という問題行動の可能性があります。
今回は、獣医師が猫の命に関わる異食症の危険性と、飼い主様が今日からすべき対策について解説します。
猫が布やビニールを食べるのはなぜ?「異食症」4のつの原因

1. 早期離乳による「母猫への甘え・愛情不足」
生後間もなく母猫と引き離された保護猫などに多く見られます。毛布やタオルなどの柔らかい布(ウール素材など)を母猫のおっぱいと勘違いし、吸っているうちに噛みちぎって飲み込んでしまうケースです。早期離乳により毛布などをフミフミして吸う行為はウールサッキングと呼ばれ、早期離乳した猫が安心感を得るために行う行動です。しかし、ウールサッキングがエスカレートしてしまうと、毛布などを噛みちぎって飲み込んでしまうようになります。この状態はウールサッキングではなく、異食症の状態となります。
2. 環境の変化や退屈による「ストレス」
運動不足、留守番が多い、引っ越し、新入り猫の登場など、強いストレスや不安を感じた際の「転位行動(気を紛らわせるための行動)」として異食に走ることがあります。また、猫は狩りをする生き物であるため、狩猟本能が強く残っています。運動不足などで狩猟本能が満たされないと、本来齧ってはいけないものを齧って飲み込みます。
3. ビニールの「音や食感」が狩猟本能を刺激する
スーパーの袋など、カサカサという音や、噛みちぎる時の弾力が、獲物(鳥の羽やネズミ)の感覚に似ているため執着する子がいます。また、紐やリボンも、獲物に見立てて遊んでしまい、飲み込んでしまうことが多い危険なアイテムです。
4. 消化管疾患がある
猫の異食症と消化管疾患は関連があると言われています。鉄欠乏性貧血やミネラル不足の場合、床を舐めたりトイレ砂を食べようとすることがあります。また、異食症と慢性腸症(下痢や嘔吐が慢性的に起きる病気)や炎症性腸炎、寄生虫感染症でも異物を食べやすいと言われています。
放置はNG!猫がビニールや紐を食べると起こる「腸閉塞」の危険性と症状

命に関わる「腸閉塞」と開腹手術のリスク
猫の舌はザラザラしているため、一度口に入れた紐やビニールは吐き出しにくく、そのまま飲み込んでしまいます。飲み込んだ物のサイズや長さが大きいと胃や腸に詰まってしまい、「消化管閉塞(腸閉塞)」を起こし、最悪の場合は消化管の壊死や腹膜炎を起こし、命を落とします。
飲み込んですぐであれば吐かせたり、内視鏡を使って除去することもできますが、小腸まで流れていたり、閉塞がひどく消化管の損傷が疑われる場合は開腹手術が必要になります。消化管閉塞は全身状態が悪くなっていることが多く、手術リスクも高くなります。消化管のダメージが強く、消化管の切除が必要な場合、かなり高額になる傾向があります。
こんな症状が出たら要注意!見逃してはいけないサイン
ビニールや布、その他食べてはいけないものがなくなった形跡があり、以下の症状が出た場合は緊急事態です。
- 何度も嘔吐する、または吐こうとするが何も出ない
- 食欲が全くない、水も飲まない
- お腹を触られるのを極端に嫌がる・うずくまっている
様子を見ても改善しないため、すぐに動物病院を受診してください。
もし猫がビニールや布を飲み込んだら?自宅で絶対やってはいけないNG行動

【警告】口やお尻から出ている紐を「引っ張る」のは厳禁!
紐やビニールの端が口やお尻から見えている時、絶対に無理に引っ張らないでください。消化管のどこかに引っかかっていることがあり、体の外に出ている紐やビニールを引っ張ると、腸管がたぐり寄せられてしまいます。腸管の中でピンと張った糸などは、腸管を内側から切り裂いてしまうため、消化管穿孔や腹膜炎などの命に関わる状況になってしまいます。
体に出ている部分を短く切るのは問題ありませんが、絶対に引っ張らずそのままの状態で、大至急動物病院へ連れて行ってください。
無理に吐かせようとせず、すぐに動物病院へ
異物を飲み込んだ場合、インターネットなどには吐かせる方法が簡単に見れるようになっています。しかし、素人が安易に行ってしまうと、かえって状況を悪くしてしまうため、絶対に行わないようにしましょう。
いつ、何を、どれくらい食べたのか(残りの破片など)を持って、すぐに獣医師の診察を受けてください。
異食症を防ぐ!今日からできる愛猫のための対策とストレスケア

物理的に「隠す・片付ける」が最大の予防策
異食症は完全に直すのが難しい行動です。食べてしまう子は何度でも異物を食べてしまいます。まずは「猫の届く場所に布やビニールを絶対に置かない」ことが基本です。
ゴミ箱は蓋付きにする、衣類はクローゼットにしまう、ジョイントマットは撤去するなど、生活環境を徹底的に見直しましょう。意外と盲点になるのが、サンダルなどのウレタン素材やヘアゴムなどです。飼い主さんが気づかないうちに飲み込んでいて、手術をして明らかになることもあります。少しでもおもちゃにしていたら、絶対に隠すようにしましょう。
噛みごたえのある「安全なおもちゃ」で欲求を満たす
噛む欲求を満たすために、飲み込めないサイズの蹴りぐるみや、安全な素材の猫用おもちゃを用意し、飼い主様が一緒に遊んで狩猟本能を満たしてあげてください。紐の先にねずみなどがついた猫じゃらしもありますが、非常に誤食率が高いおもちゃです。これらのおもちゃは猫がとても喜びますが、絶対に一人遊びをさせたり、出しっぱなしにしないようにしましょう。
首輪やベッドなど「肌に触れるもの」を快適にしてストレス軽減
些細な不快感がストレスとなり、異食の引き金になることがあります。
首輪によるストレスがあるのであれば、軽くて肌に優しいコットン製の首輪に変えるのも良いでしょう。多頭飼育や飼育環境の変化によるストレスは、猫が落ち着ける隠れ家ベッドを用意するなど、愛猫がリラックスできる環境を整えてあげましょう。
まとめ:愛猫の異食症は叱らずに「環境」で解決しよう

猫が布やビニールなどの異物を食べる行為は、本能やストレスからくるものであり、決して悪気はありません。見つけても大声で叱らず、冷静に取り上げてください(叱られると隠れて食べるようになります)。愛猫の命を守れるのは飼い主様だけです。危険なものを徹底的に排除し、心穏やかに過ごせる環境づくりを心がけましょう。
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