愛猫が後ろ足で何度も首のあたりを激しく掻いていると心配になりますよね。猫が首や顔をしきりに足で掻いてできた傷を、「頭頚部掻爬痕(とうけいぶそうはこん)」いわゆる掻き壊した状態のことを指します。一度傷ができると、気になってさらに掻くという悪循環に陥りやすいのが首まわりのトラブルの怖いところです。
今回は、獣医師が首の掻き壊しの原因と、飼い主様がすべき正しい対処法、そして皮膚を守るための予防策について解説します。
なぜ?猫が首を「掻き壊し」してしまう5つの原因

1. ノミ・ダニや真菌(カビ)などの「感染症」
屋内飼いの猫でも、飼い主の衣服や靴裏に付いてノミやダニが侵入することがあります。また、外に出てしまったり、野良猫を保護した場合、ノミやダニ、疥癬、真菌などの病原体が原因で皮膚を掻き壊すことがあります。
これらの感染症の中には人に感染して痒みを引き起こすだけでなく、特にノミやダニは命に関わる疾患を媒介します。
2. アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎(非ノミ非食物アレルギー性皮膚炎)
牛肉、乳製品、魚などの食物アレルギーや、ハウスダスト、花粉などが原因で皮膚に炎症が起きることがあります。アレルギーの場合、首や顔まわり、耳の周辺をひどく痒がる傾向があります。
ノミなどの外部寄生虫、細菌や真菌が否定され、食物アレルギー用フード(除去食)で改善しない場合、除外的に非ノミ非食物性アレルギー性皮膚炎、いわゆる猫アトピーと診断されます。
3. 環境の変化や不安からくる「ストレス(心因性)」
新入り猫の登場、引っ越し、模様替え、トイレが汚いなど、猫は強いストレスを感じると、気を紛らわせるための転位行動として過剰に掻いてしまったり、体を執拗に舐め続けることがあり、皮膚炎へと進行します。
4. 外耳炎
外耳炎により痒みや違和感が生じると、しきりに頭を振ったり足で顔回りや首を引っ掻いてしまいます。外耳炎は、細菌やカビ、ミミヒゼンダニ(耳ダニ)によって引き起こされ、耳から強い匂いがしたり、真っ黒な耳垢や耳垂れが生じます。
5. 硬い・重い「首輪」による摩擦(ハゲ・接触性皮膚炎)
実は非常に多いのが、首輪による肌トラブルです。
ナイロンなど化学繊維の硬い首輪や、重い飾りがついた首輪が皮膚と擦れることで「ハゲ(脱毛)」ができ、それに違和感を覚えて後ろ足で掻いてしまうケースです。
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出血や化膿を引き起こす「細菌感染」
猫の爪や口の中には多くの細菌がいます。掻き壊してできた傷口から細菌が入り込むと、化膿してジュクジュクとした状態になり、強い痛みを伴います。マラセチアや皮膚糸状菌といった真菌感染自体は強い痒みではありませんが、掻き壊して細菌感染が起こると強い痒みが生じ、掻きむしったり執拗に舐めたりします。周囲の健康な皮膚へも細菌感染が広がり、全身的な皮膚炎になることもあります。
動物病院へ行く目安は?首の過剰グルーミングに気づいた時の対処法

血が出ている・ジュクジュクしている場合はすぐ受診を
すでに皮膚が破れて出血している、汁(浸出液)が出ている、広範囲に脱毛している場合は、自宅で様子を見ず、すぐに動物病院を受診してください。
掻き壊しは原因によって治療法が異なります。また、二次的に細菌感染が起きていると、適切な抗菌剤を使用しつつ、原因へのアプローチが必要です。そのほか、獣医師の診断のもと痒み止めや駆虫薬、精神的ストレスによるのであれば向精神薬の検討も必要になります。
患部を物理的に保護する(エリザベスカラー・皮膚保護服)
治療と並行して、これ以上傷を悪化させないために「物理的に掻けない・舐められない」環境を作ります。
傷が首にある場合、プラスチック製の硬いエリザベスカラーは患部に当たって痛むことがあるため、柔らかい布製のエリザベスカラーや、皮膚疾患用の皮膚保護服(全身が覆えるタイプ)の使用が必要になります。獣医師と相談して、猫に合ったものを選びましょう。
愛猫の肌を守る!家庭でできる「首の掻き壊し」予防策

定期的な爪切り
首の掻き壊しは、頻繁に首を掻きむしることだけでなく、爪が伸びていると皮膚を傷つけやすくなり、皮膚炎が悪化します。
定期的なノミダニ駆除
完全室内飼育の猫であっても、ノミやダニが寄生する可能性があります。ノミやダニの寄生による皮膚炎は痒みや違和感があるだけでなく、感染症の原因にもなってしまいます。掻き壊しの有無に関わらず、定期的なノミダニ駆除を行いましょう。
ストレスフリーな環境づくり
心因性の過剰グルーミングを防ぐため、トイレは常に清潔にする、安心できる高い場所や隠れ家を用意するなど、生活環境を見直しましょう。同居猫との相性が気になる場合、部屋を隔離するなど、対策は必要です。
首輪を見直す!「軽くて肌に優しい素材」へ切り替えを
首の皮膚トラブルを防ぐために最も見直していただきたいのが「日常的に着けている首輪の素材」です。猫の皮膚は被毛に覆われていますが、実は非常に薄くデリケートです。重いものや硬い素材は避け、コットンやリネンなど、通気性が良く肌あたりの柔らかい布製の首輪を選んであげましょう。
雑菌の繁殖を防ぐため、定期的に洗って清潔に保つことも重要です。
まとめ:猫の「首の掻き壊し」は早期発見・早期対策がカギ

猫が首を掻き壊してしまう原因は、感染症からストレス、首輪の摩擦まで多岐にわたります。首を掻く頻度を観察し、脱毛や赤み、傷、耳の中の異常がないかを、日々のスキンシップの中でこまめにチェックしてあげてください。
愛猫のデリケートな肌を守るためにも、異常があれば早めに動物病院へ相談し、普段身につけるものは「肌への優しさ」を第一に選んであげましょう。






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