ペットショップやホームセンターで猫用の「ノミ取り首輪」を見かけることがあります。
安価で便利そうですが、本当に効果があるのでしょうか? 猫ちゃんに副作用はないのでしょうか? いろいろ心配になってしまいます。
今回はノミ取り首輪の効果や必要性について詳しく解説したいと思います。
猫のノミ取り首輪の仕組み
猫のノミ取り首輪は、ノミの駆虫薬を染み込ませた首輪のことで、猫ちゃんの首に着けるだけで効果を発揮するというものです。
主な有効成分はピレスロイド系の殺虫剤で、首輪から少しずつ染み出しながら全身に広がるという仕組みです。3~6か月間は効果が持続します。
首輪そのものの素材はポリ塩化ビニル(PVC)でできていることが多いです。はさみでカットしてサイズ調整をすることもでき、強い力が加わると切れるようになっているノミ取り首輪もあります。
ポリ塩化ビニル製の首輪に揮発性のオイルを浸透させたもののほか、首輪が身体にこすれることで駆虫薬が粉末状になって塗布されるものもあります。
猫のノミ取り首輪の効果は?
ぽぽねこのお客様から「猫のノミ取り首輪を着けていたのに、ノミがたくさんついていた」という話を聞くことがあります。
残念ながら、市販のノミ取り首輪ではノミを駆除することはできません。
ホームセンターやペットショップで購入できるノミ取り首輪は「医薬部外品」といって、ノミの「忌避」の効果のある成分が使われています。ノミを弱らせたり、追い払うことはできても、駆除はできないということです。
また、効果は首の周りだけに限られてしまいます。ノミがノミ取り首輪に接触しないと効果がなく、すでに寄生しているノミは駆除できないことが多いです。
市販のノミ取り首輪は、ノミを寄せ付けない予防効果が期待できるものの、ノミを完全に駆除する効果はないということを覚えておきましょう。
ノミ取り首輪はダニに効かない
耳や頭部に激しいかゆみを起こす「疥癬(かいせん)」は、ヒセンダニという小さなダニが原因です。屋外で寄生することが多いのですが、ノミ取り首輪では予防することができません。
ノミ取り首輪で脱毛や副作用の危険も
殺虫成分が染み込んだ首輪を着けていて、猫ちゃんに悪影響はないのでしょうか?
安価で使用方法がかんたんというメリットがあるノミ取り首輪ですが、デメリットにも注目してみましょう。
アレルギー反応が出ることも
ノミ取り首輪の副作用でいちばん多いのは「皮膚炎」です。首輪の接触部分に湿疹や炎症を起こすアレルギー反応が出ることがあります。
重篤な場合は発作を起こすこともあるため、アレルギー体質の猫ちゃんは使用できません。また、異変に気づけるように、ノミ取り首輪の使用中は猫ちゃんから目を離さないほうが良いでしょう。
首輪ハゲの原因に
ノミ取り首輪はポリ塩化ビニル(PVC)というプラスチックでできていることが多いです。綿100%の猫首輪にくらべて、重くて硬いというのが難点。
重くて硬い、それから通気性の悪い首輪は皮膚トラブルの元。蒸れてかゆくなる、毛が抜けて首輪ハゲになるなど、猫ちゃんのストレスになってしまいます。
子猫・シニア猫には使わないで!
ノミ取り首輪に含まれる成分には、嘔吐や下痢などの副作用を起こすものがあります。
そのため、ノミ取り首輪は生後3か月未満の子猫ちゃん、体力のないシニア猫ちゃんへの使用はおすすめできません。
子猫ちゃんやシニア猫ちゃんと同居している場合も、舐めたり、かじったりしないように注意が必要です。
猫のノミの効果的な駆除方法
猫ちゃんに寄生するノミは「ネコノミ」といいます。ネコノミは猫ちゃんの血が大好物。体表に寄生して吸血し、産卵して繁殖します。
ネコノミに吸血されると、ネコノミの唾液でアレルギー反応を起こして激しい痒みが現れます。掻きむしってしまって傷口から二次感染することも。
またネコノミの繁殖シーズンは春から夏ですが、室内なら年中繁殖が可能。あっという間に繁殖してしまうので、ネコノミの被害を食い止めるためには徹底して駆除を行わなければなりません。
まずは動物病院へ
猫ちゃんの身体や室内でノミを見つけたら、まずは動物病院へ連れて行きましょう。
「とりあえずノミ取り首輪で様子を見よう」というのはダメです。市販のノミ取り首輪だけではノミを完全に駆除することはできません。
動物病院で処方されるノミ駆除薬は「動物用医薬品」といって、有効性の高い成分が使われています。
市販のノミ取り首輪などの「医薬部外品」では忌避程度の効果しか期待できませんが、「動物用医薬品」のノミ駆虫薬なら、ノミの成虫だけでなく、ノミの卵やサナギも駆除する効果があります。
首筋に垂らす「滴下式ノミ駆除薬」が主流で、副作用の心配もほとんどありません。スプレータイプや内服薬のノミ駆除薬もあります。
滴下式では「フロントラインプラス」が有名ですね。1か月に1回滴下することで、ノミ、マダニ、ハジラミを駆除することができ、さらに卵や幼虫の発育も阻止できるというものです。
動物用医薬品のノミ駆除薬は定期的な滴下が必要になるため、必ず獣医師の指示に従うようにしてください。
ノミ取りクシとシャンプーでノミを取り除く
自由外出の猫ちゃん、保護したばかりの元野良の猫ちゃんでノミが大量に寄生している場合、シャンプーをすることでノミの成虫や卵を洗い流すことができます。
シャンプーが難しい場合は、ノミ取り用のクシを使う方法もあります。猫ちゃんの毛をとかすとノミが取れるので、水入りバケツなどに入れて退治します。虫が苦手な人にはちょっと勇気がいる作業ですが……。
いずれにしても動物病院処方のノミ駆除薬と併用することで効果を発揮するため、獣医師に相談しながら駆除を進めましょう。
掃除を徹底する
ネコノミは猫ちゃんの身体だけでなく、カーペットやソファーなどでも繁殖するため、室内の掃除を徹底して行うことが大切です。
ネコノミの寿命は1~2か月ですが繁殖力がとても強く、手ごわいです。産卵後2~3日で孵化し、1週間から3週間ほどでさなぎになり、数日~数週間で成虫になります。
そのため、最低でも3週間は念入りな掃除が必要です。掃除機には殺ダニ用の掃除機パックを使用する、掃除機をかけた後にスプレー式のノミ駆除薬を吹きかけるなどの対策を行います。
また、猫ちゃんが使っているベッドや毛布も1週間に1回くらいの頻度で洗濯し、天日干しをするようにしましょう。
完全室内外の徹底を
完全室内飼いの猫ちゃんなら、それほどネコノミ寄生の心配はありません。
自由に外出をさせることでネコノミがくっついてしまうため、完全室内外を徹底するようにしましょう。ノミが寄生した猫ちゃんとの接触でノミがうつることもあるため、外猫との接触も避けるようにします。
まとめ
猫用のノミ取り首輪をよく見かけますが、実はノミの駆除効果はほとんどありません。
逆にノミ取り首輪を着けることで、皮膚炎などのアレルギー反応や下痢や嘔吐などの副作用があることも。また、ノミ取り首輪は硬くて重い素材のため、首輪ハゲの原因にもなってしまいます。
ノミを完全医駆除するなら、動物病院で処方される滴下式のノミ駆除薬を使用します。ノミ取り首輪よりも費用はかかってしまいますが、ノミの駆除効果が高く、安全性も高いので安心です。
ノミの寄生を防ぐには完全室内飼いをして、他の猫と接触しないことがいちばんです。ですが、脱走のリスクはどの猫ちゃんにもありますし、災害によって他の猫といっしょに共同生活をしなければならなくなるかもしれません。
完全室内飼いでも定期的なノミ駆除は必要です。猫ちゃんの健康のためにも、ノミ取り首輪ではなく、動物病院処方のノミ駆除薬を選びましょう。それからノミを寄せ付けない環境作りも大切です。
ノミの「駆除」と「予防」で猫ちゃんの快適な生活を守ってくださいね。
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