メイン・クーンは非常に大型の猫ですが、穏やかな性格から「ジェントル・ジャイアント(穏やかな巨人)」と呼ばれ、人気の高い猫種です。メイン・クーンにはいくつかの遺伝性疾患が確認されており、突然死などのリスクがあります。
今回はメイン・クーンがかかりやすい病気について解説します。
メイン・クーンの特徴と健康上の注意点

メイン・クーンの基本情報
メイン・クーンはアメリカ原産の猫ですが、その起源には様々な説があります。
メイン・クーンの風貌からアライグマの混血と考えられ、メイン州のアライグマ(racoon:ラクーン)という意味で、メイン・クーンと名づけられた説、クーン船長がアメリカに連れてきた猫を祖先とする説、マリー・アントワネットがアメリカのメイン州に亡命を計画しており、その時に連れて来られた猫を祖先とする説などがありますが、ヴァイキングの船猫がアメリカ大陸で逃げ出し、土着猫と交配して誕生した説が有力とされています。
メイン・クーンはイエネコの中でも大型で、体重がメスでは4~5㎏、オスでは6~10㎏になります。体の長さも長く、頭から尾の先まで約100㎝にもなり、ギネス記録のメインクーンは120㎝もあるそうです。耳の先端にはメイン・クーンの特徴でもある、リンクスティップスと呼ばれる房毛があります。鼻筋にも特徴があり、メイン・クーンの鼻筋は緩やかで、流線的な窪みがあります。これをジェントルカーブと呼び、よく似ているノルウェージャン・フォレストキャットにはありません。
メイン・クーンはミディアムロングの毛が密集して生えており、寒い環境でも生活できます。
性格は極めて賢く、器用で好奇心旺盛です。穏やかで飼いやすい猫でもあり、「ジェントル・ジャイアント(穏やかな巨人)」という別名も持っています。
メインクーンの平均寿命は約10~15年です。メイン・クーンは他の猫種と比べて成熟に時間がかかり、完全に成長するのには4年ほどかかります。
遺伝的要因と体質から見た健康リスク
メインクーンにはいくつかの遺伝性疾患が確認されています。肥大型心筋症、脊髄性筋萎縮症、多発性嚢胞腎が主な遺伝性疾患です。現在、遺伝子診断が可能であるため、遺伝性疾患の可能性がある猫同士の交配は行われないようになっていますが、発症のリスクは他の猫よりも高くなっています。遺伝性疾患により、突然死や若いうちに亡くなる猫もいます。
メイン・クーンは長毛で、ダブルコートという毛が密な生え方をしているため、毛の生え変わりの時期に大量に毛を飲み込み毛球症になることがあります。また毛により体温が下がるのを防いでいるため、夏場は熱中症のリスクが上がります。
メイン・クーンがかかりやすい病気一覧

肥大型心筋症
肥大型心筋症はメイン・クーンの代表的な遺伝性疾患であり、メイン・クーンの約3割がこの遺伝子異常を持っていると言われています。
肥大型心筋症は心臓の筋肉が厚くなり、心臓の動きが妨げられることで全身に血液が送り出されなくなる病気です。シニア期のメイン・クーンに発症することが多い病気ですが、若い年齢でも発症し、突然死することが多くあります。
肥大型心筋症の症状は、元気がなくなったり、動くことを嫌がることが初期に見られます。進行すると呼吸困難になり、口を開けて呼吸する開口呼吸や浅く速い呼吸をするようになります。また、肥大型心筋症の心臓の中に血栓が作られると、血栓が後肢の動脈に詰まる血栓塞栓症が起こります。血栓が詰まると、足が動かなくなる、肉球が冷たくなる、紫色になる、激痛が走るなどの症状が見られます。また、これらも症状がなくても心筋症を発症しており、突然死することも少なくありません。
肥大型心筋症の症状が出た場合、迅速に対応しなければ命に関わります。酸素室などに入院し、注射などで治療が行われますが、入院中に亡くなる症例も少なくありません。退院後は内服治療に切り替わりますが、生涯投薬が必要になります。
肥大型心筋症は、メイン・クーンの遺伝性疾患であるため予防することはできません。そのため、早期発見・早期治療が重要になります。1歳を過ぎたら定期的な健康診断や心臓検査を受けることをお勧めします。
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脊髄性筋萎縮症
脊髄性筋萎縮症はメイン・クーンの遺伝性疾患で、両親がこの病気にかかっていると、生まれた子供も100%発症します。どちらかの親が脊髄性筋萎縮症の場合は、子供は発症しませんが、キャリアとして遺伝子を受け継ぐことになります。現在では、遺伝子検査で発見することが可能です。
脊髄性筋萎縮症は、猫の体や足を動かす神経が消失する病気で、筋力の低下や筋肉の萎縮が起こります。生後3~4か月で後肢の力が弱くなり、足が震えようになります。ジャンプができなくなったり、歩行時に後肢が揺れるようになるのも特徴です。筋力が低下すると、長時間歩けなくなってしまいます。
脊髄性筋萎縮症には有効な治療法がないため、症状に合わせた対症療法が中心となります。
多発性嚢胞腎
多発性嚢胞腎は、腎臓に嚢胞と呼ばれる袋がいくつもでき、腎機能が低下する病気です。メイン・クーンは遺伝的に多発性嚢胞腎になりやすいと言われています。
多発性嚢胞腎の猫は、若齢のころから腎臓内に嚢胞が作られ、徐々に大きくなっていきます。そのため、シニアになる前から慢性腎臓病になることがあります。
多発性嚢胞腎は、慢性腎臓病と同じ症状が現れます。多飲多尿、薄いおしっこ、食欲不振、嘔吐などが主な症状です。
多発性腎嚢胞は超音波で容易に診断できます。そのため、メイン・クーンは1歳くらいから腎臓の超音波を定期的に行うのがよいでしょう。
多発性嚢胞腎は治療法がないため、慢性腎臓病と同じ治療を行います。皮下点滴や内服、サプリなどで治療を行いますが、治ることはなく進行していきます。
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股関節形成不全
股関節形成不全はメイン・クーンに多い関節疾患になります。先天的に股関節に異常があり、股関節が脱臼しやすくなります。腰を振るような歩き方が特徴です。
関節炎を伴うことがあるため、安静や鎮痛剤の使用、外科手術による治療が行われます。
毛球症
メイン・クーンはダブルコートという毛の生え方をしており、毛が密に生えています。そのため、毛づくろいをすると毛をたくさん飲み込んでしまいます。飲み込んだ毛は、少ない量であれば便に排出されますが、毛の量が多いと胃のなかで塊(ヘアボール)となり、嘔吐や腸閉塞が起こることがあります。
毛球症を予防するには、こまめなブラッシングが必要です。1日2回が目安になります。
毛球症を繰り返す場合は、食物繊維を多く含む食事や、毛球除去剤を使用することがあります。
病気を早期発見するために

メイン・クーンにはいくつかの遺伝性疾患があります。遺伝性疾患以外にもかかりやすい疾患があります。病気は進行してからでは治療が難しいものもあります。そのために、病気を早期発見することが重要になります。病気の早期発見に重要なポイントをまとめました。
定期的な診察や健康診断を行う
猫の動物病院を受診するきっかけとして多いものは、ワクチンなどの予防、体調を崩した場合がほとんどであり、健康診断での受診はあまり多くないのが現状です。しかし、健康診断で偶然病気が見つかることはよくあります。肥大型心筋症や多発性嚢胞腎は、初期では無症状のことがあります。そのため、1歳頃から健康診断を受けたり、爪切りなどで定期的に受診することで、健康状態を把握することができます。
病気と診断された後も、内服などの治療が必要になります。定期的に診察を受けることで、悪化した場合にも迅速に対応ができます。
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症状を見逃さないためのチェックリスト
症状は病気によっても異なりますが、病院を受診するタイミングとなる主な症状についてまとめました。
- 元気がない
- 食欲がない
- 動きたがらない
- 足を引きずる、歩き方がおかしい
- 息が荒い、口を開けて呼吸する
- 水をよく飲み、薄い尿をする
- 嘔吐、下痢などの消化器症状
これらの症状が出た時には、病気が進行していることも少なくありません。なので、少しでもおかしいなと感じたら、受診のタイミングです。そして、何よりも定期的な健康診断が重要です。
日常のケアでメイン・クーンの健康を維持する方法

メイン・クーンを飼育する上で、日常ケアはとても大切なものです。日常ケアについて説明します。
こまめにブラッシングをする
メイン・クーンは長毛で毛量も多いため、ブラッシングが欠かせません。最低でも1日2回以上のブラッシングが必要です。
ブラッシングをすることで、余分な抜け毛を取り除くことができ、毛球症を防ぐことができます。また、毛玉やほつれの予防になり、皮膚を健康的に保つことができます。
熱中症に注意する
猫はもともと暑さに強い動物ですが、メイン・クーンは長毛のため体温が逃げにくくなっています。そのため、熱中症になるリスクがあります。
サマーカットをするのも有効ですが、空調を27度前後に調整してあげましょう。
運動できるスペースを確保する
メイン・クーンは運動量が多い猫種です。運動量が少ないと肥満になってしまい、関節炎や糖尿病などのリスクが高くなります。キャットタワーで上下運動を取り入れるだけでなく、毎日飼い主さんが遊んであげることも大切です。メイン・クーンは体が大きいので、キャットタワーを固定するなど事故防止の対策が必要です。落とされて困るものなども近くに置かないようにしましょう。
適正な体重を保つ
メイン・クーンは大型の猫なため、10㎏近くになる猫もいます。ふわふわな毛のために、体形がわかりにくく、実は肥満だったということも少なくありません。欲しがるからといって、どんどん食べさせては肥満になってしまいます。定期的に動物病院で体重を測ってもらい、適正な体重かを診断してもらいましょう。
まとめ

メイン・クーンにはいくつか遺伝性疾患が確認されており、予防や完治ができないため、なるべく早い段階で病気を見つけ、悪くならないようにしていくことが重要になります。病気の早期診断には、定期的に病院を受診したり、健康診断を受けることが大切です。
また、ブラッシングや運動などの日常ケアの不足が病気につながることもあります。こまめにケアして、健康的な体を維持しましょう。
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