猫の心臓病は早期発見が難しく、気づいた時には手遅れだったり、突然死を招いたりすることもある――。猫ライターとして色々な猫さんの話を聞く中で、そう知ってはいたものの、私自身、愛猫のジジが「肥大型心筋症」だと診断された時は頭が真っ白になり、改めて心臓病を早期発見することの難しさを痛感しました。
今回は、ジジの心臓病が早期発見できた経緯や現在している治療、愛猫の病気の受け止め方などを紹介。早期発見に役立ったら嬉しいです。
心臓バイオマーカーで心臓病を早期発見できた
2021年11月、自宅のキャットウォークから落下して歩けなくなったジジを動物病院へ連れて行くと、獣医師から予期せぬ言葉を言われました。

「この子、心臓が悪くなってるね。血液検査やエコーで少し違和感があったから、詳しい検査をしたら肥大型心筋症だって分かったよ」
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…え?うちの子が、心臓病?飼い主も心臓病なのに、ジジも心臓病になったの?なんで?苦しい素振りなんて全くなかったのに。
それが、獣医師の言葉を聞いた時の率直な感想でした。戸惑った後、「じゃあ、ジジは長く生きられないんだろうか…」という悲しい疑問が浮かんできて診察室で泣きそうになったことを覚えています。
肥大型心筋症とは、心臓の筋肉(心筋)が厚くなることで、心臓の動きに支障が出て、体に十分な血液を送り出すことができなくなる病気です。ジジの場合は、この腎臓が悪くなっていたことも関係しているようでした。

病気を発見できたのは、経験豊富な獣医師のおかげ。エコーや血液検査で感じた小さな違和感を「まあいいや」と片付けず、心臓バイオマーカー「NT-proBNP」検査を行ってくれたのです。

口呼吸をする、あまり遊ばない、元気がないなど猫の心臓病に関する知識は、自分の中で持っていたつもりでした。実際に肥大型心筋症の猫さんに取材をして、早期発見のポイントを聞いたことも何度かあります。
それでも、私はジジの病気に気づけませんでした。早期の心臓病は、こんなにも無症状なんだ…。その時、改めて心臓病の恐ろしさを痛感しました。
そもそも脱臼自体、よくないことですが、もしあの時、脱臼をしていなかったら…と想像すると今でも怖くなります。
治療薬を飲み始めてからイタズラが増えた!
幸い、病気を早期発見できたため、ジジは「フォルテコール」という薬を1日1回飲みながら治療していくことになりました。今は2ヶ月に1度通院し、経過観察をしています。

今まで至って元気だったジジは、これが初めての服薬。最初は「薬を嫌がりそうだなあ…。飲んでくれるかな…」と心配でした。
でも、猫ってすごいですね。予想を裏切る。我が家ではスプーンで粉々にした薬を「ちゅ~る」に混ぜてあげているのですが、ジジは薬の時間を「おやつタイム」だとすっかり勘違い。「ジジ~、薬だよ」というと、喜んで走ってきてくれます。
仲間が薬を飲んでる時は邪魔せず、そっと見守る我が家のおキャット様の優しさを撮りました🎥 pic.twitter.com/6BTa7pAGHR
— ゆあ | ライター🖊 (@yunc24291) April 27, 2023
そんな単純で、まっすぐなところが大好きだよ、ジジぽん。獣医師にそのことを話すと、「かわいい!バレてないならよかった(笑)」と笑ってくれました。
薬を飲み始めてから変わったのは、イタズラが増えたこととおもちゃに興味を示しやすくなったこと。飽き性な私に似たのか、ジジはおもちゃを出してもすぐに興味を失うことが多いのですが、目で追う、じゃれようとするなどの行動が増えました。

もしかしたら、今までは体がしんどくて動く気になれなかったのかな。そう思うと、自力で早期発見できなくて本当にごめんな…と土下座したくなります。(実際に4回くらい土下座した)
かわいいお尻をプリプリ揺らしながら、いそいそとテーブルに乗り、ボールペンと闘うジジ。その姿を見るたび、「怒りたいけど、今まで遊べなかった時間を取り戻してるのかもしれん」と私の中で葛藤が始まります。
自分を責めた事も…愛猫の心臓病を受け止められるようになるまで
肥大型心筋症は、根治できない病気。今でこそ、「上手く付き合っていこう」と思えるようになったけれど、病気が発覚してしばらくは、“治らない”という現実の重さがしんどかった。

なぜ、発症してしまったんだろう。私がもっと、気をつけていればよかった。我が家での暮らしが悪かったんじゃないか。他の家で暮らしていたら、ジジは健康体だったのかもしれない。
そんな考えても出口が見えない問いばかりが浮かび、自分をダメな下僕だと責めました。
でも、私は自分自身が心臓病だったから気持ちを立て直すことができました。これだけは、持病に感謝です。

病名や症状は違えと、同じ心臓病だ。だったら、この子のもどかしさや感じる悩みは私が一番理解してあげられるはず。普通の猫や人では涼しいと感じる部屋を「寒い」と感じるもどかしさや、動きたいのに体がついていかない苦しさは、私が一番知っている。そういう「知ってきた気持ち」を、この子目線で考え、できる配慮をしていこう。
そう思えるようになると心が楽になり、ジジの心臓病と前向きに向き合っていけるようになりました。
愛猫が病気になると、私みたいに自分を責めてしまう方はきっと多いと思う。でも、そんな気持ちでいることを知ったら、愛猫はきっと悲しい。猫は飼い主の笑顔が大好きな優しい生き物だから、愛猫のためにも自分の心も大事にしてほしいと思うのです。

「病名は違うけど、心臓病なのは一緒だな、ジジ。お互い今をたくさん楽しんで、医者がびっくりするほど長生きしような」
ある日の通院帰りに車内でジジに言った、この目標を叶えたい。そう思うから、悲しい未来はあえて想像せず、これからも1日1日を一緒に生きることに集中して、ジジが猫又になれるように尽くし続けます。
大丈夫だぽん
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