男の子の猫を迎えたら考えるべき「去勢手術」について獣医師が詳しく解説

男の子の猫を迎えたら考えるべき「去勢手術」について獣医師が詳しく解説

皆さんは、男の子の去勢手術について考えたことはありますか?

多頭飼育の場合、女の子を妊娠させないために必要な手術というイメージがあるかと思いますが、1匹のみでの飼育の場合、「妊娠させないのだから必要ないのでは?」と考えている方は少なくありません。また、健康な体に手術を行うため、「健康な体を手術したくない」「かわいそう」と思われる方はけっこういます。特に男性の方が抵抗を示しやすい傾向があります。

今回は、去勢手術を行う重要な意味についてご説明いたします。

猫の去勢手術とは

猫の去勢手術とは

去勢手術は、オス猫がメス猫を妊娠させないために精巣を手術で摘出します。手術は全身麻酔下で、精巣を包む袋(陰嚢)を1㎝ほど切開し、精巣を摘出します。通常、動物病院では生後6か月以降に行われますが、ノラ猫の場合はもう少し早い時期でも手術することがあります。

猫は交尾排卵動物といって、交尾をすると排卵が起こります。猫は春先と秋の年に2回の発情シーズンがありますが、メス猫が発情するとそのフェロモンによってオス猫が発情します。オス猫は行動が活発になり、いつも以上に活動範囲が増えます。そしてメスに出会うと交尾を行い、交尾するとほぼ確実に妊娠します。

避妊手術の記事でも説明していますが、猫の妊娠期間は約60日、一度に生まれてくる子猫の数は1~8頭ほどですが、多いと10頭以上生まれてくることがあります。オス猫が子猫を産むわけではありませんが、去勢手術をしていなければ子猫が増える原因となります。また、オス猫の場合は発情に伴う行動が一番問題視され、近隣とのトラブルになることもあります。


猫の去勢手術のメリット

猫の去勢手術のメリット

去勢手術をすると様々なメリットがあります。メリットについてそれぞれ説明します。

発情特有の行動が起きない

発情すると行動の変化が起こります。発情したオス猫はスプレー行動という、非常にニオイの強いおしっこを壁などの高い位置に吹きかけます。強烈なニオイのため、ニオイは簡単には取れません。このおしっこには、自分の情報が含まれており、メス猫へのアピールになります。

発情したオス猫は行動範囲が広がり、いつもよりも外に出たがります。動く範囲も増えるため、自宅に戻ることができなくなったり、そのまま交通事故に遭ってしまうことはよくあります。筆者が過去に担当した猫で、去勢手術をしていなかったために家を飛び出してしまい、飼い主さんの目の前で事故死したという、悲しい事例があります。

また、メス猫をめぐって他のオス猫とけんかをするため、ひどいケガをしてしまったり、猫エイズや猫白血病に感染してしまうこともあります。

発情特有の行動は猫にとってもストレスになるだけでなく、飼い主さんにも非常にストレスになります。手術をすることで、これらの行動が収まったり、性格が穏やかになることが期待できます。

望まない妊娠をさせない

発情期は興奮しやすいため、外に出たい衝動にかられます。オス猫は力が非常に強いため、網戸を開けたり、破ったりして外に飛び出してしまうかもしれません。もし外に出てしまい交尾をしていたら、知らないところで子猫が増えることになります。

飼い主さんが絶対に外に出さないように注意していても、少しの隙間や飼い主さんが目を離したすきに逃げ出してしまいます。また、自然災害などで逃げ出してしまう可能性もあります。

寿命が延びる

去勢手術のメリットとして、寿命が延びることは研究結果でも明らかになっています。過去の研究結果では、去勢を含む不妊手術した猫としていない猫の寿命を比較すると、手術をした猫の方が2倍程度寿命が延長したと報告されています。寿命が延びる理由として、発情によるストレスの減少、発情が原因で起きる疾患の減少、けんかによる傷や感染症の減少、交通外傷の減少によると考えられています。

生殖器の病気にならない

去勢手術を行うと、精巣の病気を予防することができます。精巣腫瘍は猫での発生自体が稀ですが、去勢をしていない猫で発生します。

去勢手術のデメリット

去勢手術のデメリット

去勢手術は、メリットだけではありません。メリットがあればデメリットもあります。

二度と子供を望めない

猫の去勢手術は精巣をすべて切除するため、手術後に子猫を望んでも叶いません。ペアで飼育していて、子猫を望むのであれば、子猫の飼育ができるのか(育児放棄された場合のミルクが行えるか、最期まで飼うのか、譲渡先があるのか)、飼育に必要な費用を捻出できるのか、猫同士のストレスにならないかなど、しっかりと家族で話し合っておきましょう。

太りやすくなる

去勢手術をした猫は、カロリーの代謝が落ちるために太りやすくなります。また手術前よりもおっとりするため、活動量が低下します。そのため、手術後に今までのフードの種類や量のままでいると、どんどん太っていってしまいます。そのため、去勢手術後用のフードや減量用のフードへの切り替え、給餌量の再計算が必要です。去勢手術後の体重増加は、飼い主さんがしっかり管理することで防ぐことができます。

手術や麻酔のリスク

去勢手術の手術時間は非常に短く、5分程度で終了します。しかし、それ以外に毛刈り、消毒なども含まれるため、麻酔をかけている時間は15分ほどになります。そのため、麻酔による体へのリスクは避けられません。手術を行った猫のうち、手術中または術後になくなるケースはゼロではありません。そのようなことがないように、手術前には必ず飼い主さんへのリスク説明を行います。また、血液検査やレントゲン検査などを行い、少しでも異常があれば治療を優先し、回復を待ちます。また、手術中に点滴の投与や抗生剤などの薬剤を使用し、術後合併症(感染、出血)が起きないように対応します。しかし、どれだけ事前に対策を取っても亡くなることがあります。

猫の去勢手術の費用

猫の去勢手術の費用

去勢手術の費用は動物病院によっても異なります。目安としては、5,000~30,000円ほどになります。費用の中には、手術代以外に検査費や麻酔費用などが含まれます。

去勢手術は通常日帰りで行われますが、出血が多い、麻酔からの覚めが悪いなど、獣医師が入院を必要と判断した場合は入院となります。

猫の去勢手術を行う年齢

猫の去勢手術を行う年齢

去勢手術は、生後6ヶ月から1歳までに行うことが望ましいとされています。逆に早すぎると、尿道の発達が悪くなり、下部尿路疾患になりやすいとも考えられています。

一度発情すると、手術する意味がないと考えている飼い主さんも少なくありません。しかし、発情に伴うスプレー行動などは飼い主さんにとってもストレスになります。発情に伴う行動は去勢手術を行うと治まることも分かっています。発情後なるべく早い時期に手術をすることをお勧めします。

まとめ

まとめ

去勢手術について解説しました。去勢手術のメリットとデメリットを比べても、メリットの方がはるかに多いと思います。去勢手術を受けることで、猫自身もストレスが少なく、不慮の事故や感染症などで命を落とすこともなくなります。これから猫を迎える方、お迎えしたけど手術をしていない方は、今一度去勢手術について考えてみてはいかがでしょうか。


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