猫を保護したり、保護施設から譲り受けたりした時に、目やにや鼻水が出ていることがよくあります。このような猫は、猫風邪をひいている可能性があります。猫の風邪はかかっている猫だけの問題ではなく、他の猫にも感染します。
猫の風邪の原因と症状について詳しく解説します。
猫の風邪の原因と症状とは
▲保護猫の結膜炎の様子(初診時)
猫の風邪の原因は、ヘルペスウイルスやカリシウイルスといった、ウイルスによる感染症です。これらのウイルスは、感染した猫の鼻水、くしゃみ、咳による飛沫感染と、グルーミングなどで感染猫に接触する、接触感染によって感染が成立します。母猫や同居猫から感染することがほとんどです。
獣医学的には、ヘルペスウイルスによる猫風邪を「猫伝染性鼻気管炎」、カリシウイルスによる猫風邪を「カリシウイルス感染症」と区別しています。
猫伝染性鼻気管炎
ヘルペスウイルスによる猫風邪です。くしゃみ、鼻水などの風邪症状以外に、結膜炎を起こすのが、このウイルスの特徴です。ヘルペスウイルスは一度感染すると、猫の神経に潜むようになり、猫の免疫力が低下すると症状を出すようになります。そして、免疫が活性化するとまた神経に潜むため、一見治ったように見えますが、ずっとウイルスに感染した状態となります。
免疫力の弱い子猫や高齢猫が感染すると、鼻水で鼻腔が塞がれてしまったり、肺炎を起こして呼吸困難になってしまったり、食欲低下を起こしてしまい、死亡することもあります。また、結膜炎が悪化すると失明することもあります。
カリシウイルス感染症
カリシウイルスによる猫風邪です。くしゃみ、鼻水などの風邪症状以外に、口内炎を起こすのが、このウイルスの特徴です。カリシウイルスも一度感染すると、長期間ウイルスが体内に存在し、ウイルスをずっと排出し続けます。
風邪症状以外に口内炎が起こるため、よだれがひどく出たり、悪臭を伴う口臭を発することがあります。ひどい口内炎の場合、食事が取れなくなってしまい、死亡する可能性があります。
猫の風邪の治療について
▲抗菌薬の点眼、内服、吸入を行い、2週間ほどで改善(左)
猫風邪はウイルスが原因であるため、基本的には症状を抑える治療や、細菌による二次感染を防ぐ治療、免疫力を高める治療が行われます。
主に、抗生剤の投与や免疫活性のためのインターフェロンの注射が行われます。
結膜炎がひどければ、抗菌薬などの点眼薬を使用することもあります。ヘルペスウイルスの場合は、抗ウイルス薬が使用されることもあります。
口内炎がひどい場合、インターフェロンの経口投与も行われます。
鼻水などで呼吸困難が起きている場合は、気管支拡張薬の吸入なども行われます。
体力を落とさないことが重要となるため、食べやすいご飯を用意したり、保温して体温を保つことも必要です。
猫を保護した場合、猫風邪をひいていることがほとんどです。重症化すると亡くなってしまいます。猫を保護したら、なるべく早く動物病院を受診し健康診断を受け、適切な治療を受けましょう。
猫が風邪にならないためには
猫風邪は一度かかると、一生涯発症のリスクを背負うだけでなく、他の猫に感染させるおそれがあります。そのため、猫風邪にかからないことが重要になります。
猫風邪にならないために、予防法について解説します。
ワクチンを接種する
猫のワクチンには、3種、4種、5種があります。その全てに猫伝染性鼻気管炎とカリシウイルスが含まれています。ワクチンを接種すると、ウイルスが体内に入ってきても感染を防いだり、発症しても症状が軽く済むようになっています。
他の猫との接触を避ける
飼い主さんも愛猫も、他の猫との接触を避けるようにしましょう。症状が出ていないだけで、ウイルスを排出している可能性はあります。愛猫が直接ウイルスをもらってしまうだけでなく、飼い主さんの服などにウイルスが付着する可能性もあります。飼い主さんも、他の猫に触ったら手を洗ったり、服を着替えるなどをしてから愛猫に触れるようにしましょう。
多頭飼育の場合、猫同士の距離が近いため、ストレスが強くかかります。ストレスにより免疫力が低下し、感染する可能性があります。感染が疑われる猫は隔離したり、ストレスに配慮した飼育環境にしましょう。
まとめ
猫風邪は一度かかってしまうと、一生ウイルスを持ち続けます。ウイルスは、母猫から子猫に感染することが非常に多いため、保護猫のほとんどが猫風邪にかかっていると思っていただいた方がいいと思います。また、ペットショップやブリーダーから購入した猫でも、猫風邪の症状を呈している子猫を見かけます。
猫風邪は免疫力がしっかりしていれば、発症を防ぐことができたり症状が軽くなります。免疫力を活性化させるためには、ワクチン接種を行い、食事や生活環境を整える必要があります。
もしかかってしまったら、動物病院で適切な治療を受けましょう。早めに対処すれば早く治ります。しかし、ウイルスが完全にいなくなったわけではないことを理解しなければなりません。
猫風邪をひいている猫を飼育しているのであれば、他の猫に感染させないためにも隔離したり、その1匹だけを最期まで可愛がってあげましょう。
この記事のご感想をお寄せください!(コメントを書く)