てんかんとは、脳から出る電気信号に異常が起こり、体の一部分や全身がけいれんを起こしたり、突っ張ったりする病気です。
突然けいれんが起きてしまうと、多くの飼い主さんがびっくりして動揺すると思います。てんかんが起きたとき、落ち着いて対処することが必要です。
今回は猫のてんかんについて解説します。
猫のてんかんとは
猫のてんかんは、脳の電気信号の異常により体の一部が突っ張る「部分発作」と、全身がけいれんする「全般発作」が起こる脳機能障害です。正常な脳は、電気信号を興奮と抑制により、興奮しすぎないように調整されています。しかし、てんかん発作が起きている脳では、電気信号の調整ができず興奮し続けている状態になります。通常、てんかん発作は30秒~1分ほどで治まります。
てんかんは一度の発作だけでは診断をせず、2回以上起きていることが診断基準となります。初めて起きたてんかん発作で動物病院にかかっても、おそらく「もう一度発作が起きたら教えてください。」と言われ、内服などが出ないかもしれません。それは、一度の発作では「てんかん」と診断できないためです。
猫のてんかんの原因
猫のてんかんは、原因により「特発性てんかん」と「症候性てんかん」に分類されます。
特発性てんかん
特発性てんかんは、脳や脳以外にも原因がないのですが、てんかんが起こります。遺伝によると考えられていますが、まだよく分かっていません。特発性てんかんは1歳~5歳くらいで初めての発作が起こります。
症候性てんかん
症候性てんかんは、脳への外傷、脳炎、脳腫瘍、脳血管疾患、水頭症、感染症などにより、脳に異常が起こることで発症します。猫は症候性てんかんが多いと言われています。
猫のてんかんの初期症状とは?
てんかんの症状は、体の一部が突っ張る部分発作と、全身がけいれんする全般発作、発作が続いてしまう重積があります。また、発作の直前には、落ち着きがなくなるといった前駆症状(前兆)が見られることもあります。
部分発作
部分発作は体の一部がけいれんする発作です。意識がある場合もあれば、ない場合もあります。けいれん以外にも鳴き続ける、口ももぐもぐさせる、よだれを垂らす、顔の一部がけいれんするなどがあります。発作が起きているときに呼びかけても反応がない場合は、意識がない可能性があります。
全般発作
全般発作は、全身にけいれんが起こります。通常1分から3分ほどで治まります。全般発作は、脳からの電気刺激が興奮し続けているため、意識は亡くなっています。全身的にけいれんするだけでなく、手足をバタつかせたり、よだれをだらだらと垂らす、失禁するのも全般発作の症状です。
重積
てんかん発作が30分以上続いていたり、発作がすぐに起きてくる場合を重積と呼びます。重積発作は放置すると脳の損傷が起こり、死亡する可能性が高くなります。
猫のてんかんの治療法
てんかんの治療には、抗てんかん薬が使用されます。
しかし、1度の発作だけでは治療は開始せず、経過観察となります。3か月に2回以上の発作が起きている場合、てんかんと診断され、抗てんかん薬が開始されます。症候性てんかんの場合、原因疾患の治療が行われ、発作のコントロールとして抗てんかん薬が使用されます。部分発作の場合は、発作の頻度が多くなければ、投薬なしで経過を見ることがあります。
抗てんかん薬は、副作用が起こる可能性が高い薬です。そのため、定期的に血液中の薬の濃度を測定し、副作用がないかを見る必要があります。抗てんかん薬は基本的には生涯使い続ける必要があります。また、突然薬をやめると発作が悪化することがあるため、発作がないからといって自己判断でやめてはいけません。
重積はすぐに発作を止める必要があります。注射による投薬が必要であるため、動物病院での対処が必要です。
愛猫がてんかんを起こしたら
全般発作や意識のない部分発作が起きている場合、歯を食いしばって舌を噛んでいることがあります。飼い主さんは慌てて口の中に手を入れてしまうかもしれませんが、ひどく噛まれる可能性があるため、絶対に口に手を入れないでください。よだれで窒息する可能性があるため、顔を横に向けて寝かせてあげましょう。
猫が高いところにいるときに発作が起きたら、落下などの事故を防ぐためタオルなどにくるんで床に寝かせてあげましょう。
失禁することもあるため、ペットシーツをお尻に敷いてあげることも必要です。
てんかん発作が起きた場合、冷静に対処する必要があります。動物病院に行くと、「どんな発作がどれくらいの時間続いたか」と聞かれるかもしれません。
慌てているとうまく説明できないこともあるため、動画で発作の始まりから治まるまでを記録すると良いでしょう。動画の中で呼びかけに反応するかで、意識の有無の判断もできます。重積発作でなければ、発作が治まってから動物病院に受診しましょう。
まとめ
てんかんを初めて目にした飼い主さんは、発作の状態から冷静になれないことが多いと思います。猫のてんかんは、脳の疾患が原因となっていることがほとんどであるため、発作が起きたら動画を持参の上、動物病院を受診しましょう。
てんかんは、飼い主さんの冷静な対応と正確な投薬が治療の鍵となります。記録をしっかり取るようにし、てんかん発作時の対応を見えるところに貼っておくといいかもしれませんね。
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