秋から冬は、猫飼いさんたちを悩ませる換毛期に当たります。ブラッシングの機会が増えるため、皮膚トラブルを発見して動物病院を受診される方がいらっしゃいます。その中でも脱毛は、診察室でよく見かけるトラブルです。
今回は脱毛の原因と対策について解説します。
猫に脱毛が起こる原因とは
まず脱毛とは、本来毛が生えているところが、部分的あるいは完全に、薄くなったり抜け落ちてしまうことをいいます。脱毛は、炎症などの皮膚トラブルによって起こる場合と、皮膚に問題はないのに抜けてしまう場合があります。
脱毛の原因として考えられるものは、感染症、外部寄生虫症、アレルギー、自己免疫疾患、腫瘍、心因性、ホルモン性などが考えられます。
感染症
細菌や真菌(カビ)の感染症により、皮膚に炎症が伴い脱毛します。痒みがあり、湿疹ができることがあります。真菌による脱毛は円形に脱毛しますが、その周辺が赤くただれており、リングワームと呼ばれています。特に真菌症は、他の猫や人にも感染することがあります。
外部寄生虫症
ノミやダニが寄生することで皮膚炎が起こり、脱毛します。
ヒゼンダニというダニは顔や耳のふちに寄生し、かさぶたや脱毛を起こします。激しい痒みも伴います。
ノミが寄生すると、咬みついた時の唾液に反応し、アレルギー反応が起こります。強い痒みと炎症が起こり、皮膚炎と脱毛が起こります。
アレルギー
先に述べたノミアレルギーもそうですが、アレルギーは特定のタンパク質に反応し、痒みや皮膚炎を起こします。
食物アレルギーでは、特定の食べ物を食べた時に目や耳を痒がり、脱毛を起こすことがあります。
また、猫もアトピー性皮膚炎を起こします。アトピー性皮膚炎はほこりや花粉、ダニなどが皮膚につくことで発症します。顔や足、内股、脇の下、下腹部に痒み、赤身、脱毛が起こります。
自己免疫疾患
自己免疫疾患とは、自分の体に対して抗体ができてしまう疾患です。
天疱瘡は猫の皮膚にできる自己免疫疾患です。皮膚にびらんや水泡ができ、脱毛を起こすことがあります。
腫瘍
腫瘍によって痛みを伴う場合、その部分を舐めて脱毛することがあります。
また、白い猫が長時間日光に当たると、耳などの皮膚が薄い場所に日光性皮膚炎が起こり、脱毛することがあります。日光過敏症の6歳以上の猫は、扁平上皮癌という皮膚癌になるリスクが高くなります。扁平上皮癌は耳だけでなく、口周りにも発生することがあります。
心因性
猫は不安やストレスを感じると、気持ちを落ち着かせるためにグルーミングをします。心因性脱毛の場合、同じ場所を繰り返し舐めてしまい脱毛します。舐めるだけでなく毛をかみ切ってしまい、毛切れした脱毛が特徴です。
ホルモン性
ホルモン性の脱毛は猫ではあまり多くありませんが、ホルモンの過剰分泌や分泌不足によって左右対称の脱毛が起こります。去勢・避妊手術を行っている場合、性ホルモンが不足し脱毛することがあります。また、まれではありますが、クッシング症候群や甲状腺機能低下症というホルモンの疾患により、脱毛が起こります。
その他
首輪をしている猫は、首輪の部分が脱毛することがあります。首輪との接触により摩擦で毛が切れたり、首輪の素材で皮膚炎が起きて脱毛すると考えられています。
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猫の脱毛の対策とは
脱毛の対策は、原因に合わせて行います。病気による脱毛の場合は、治療は必ず必要であるため、動物病院で診断を受ける必要があります。
ノミ・ダニ駆除
脱毛の原因がノミやダニの場合、駆除薬を使用すると改善します。駆除薬の中には、ヒゼンダニまで駆除できるものがあります。市販のものでは駆除できないため、動物病院で診断の上、駆除薬を使用します。
薬物療法
感染症による脱毛であれば、抗生剤や抗真菌薬を使用します。アレルギーや自己免疫疾患では、ステロイド剤の内服や塗り薬を使用します。ホルモン性疾患の場合は、ホルモンを補充したり出ないようにしたりします。
これらは、動物病院でしっかり診断が行われた上で処方されます。脱毛が治まっても獣医師から指示がない限り、自己判断で薬をやめないことが必要です。
ストレスの軽減
心因性脱毛の場合、今の生活に何らかのストレスを感じています。多頭飼育の場合、同居猫と折り合いが悪いことがストレスになります。他の猫と距離が取れるような対策が必要です。
また、トイレのトラブルも心因性脱毛の原因になり得ます。トイレのタイプを変えたり、個数を増やしたり、砂を変えたり、場所を変えたり、安心してトイレができるような環境にしましょう。
留守番時間が長いと、暇つぶしで舐め続けてしまうことがあるため、暇にならないようにすることも大切とされています。
心因性脱毛の場合、抗不安薬や不安を抑えるサプリなどが使用されることがあります。ご自宅でできるケアとして、留守番用のおもちゃをいくつかセットしてみましょう。誤食されにくい物で、セットする場所を毎回変えるなどの工夫が必要です。床に直接置くのではなく、ぶら下げておくと長時間楽しめるとされています。
また、コミュニケーションを増やすことも重要と考えられています。猫は芸を覚えるの?と思われる方もいると思いますが、答えはイエスです。おやつを使いながらお手などの芸を教えると、猫も飼い主さんも楽しみながらトレーニングできます。
直射日光が当たらないようにする
白猫の場合、日光に当たりすぎると日光性皮膚炎を起こし、そこから腫瘍に発展することも少なくありません。そのため、直射日光に当たりすぎないようにしましょう。
腫瘍になった場合は、手術で取り除くなどの治療が必要になります。
首輪を見直す
首輪による脱毛であれば、首輪を見直しましょう。大きさや素材、重くないものに変更します。首輪をつける必要がなければ、一度外してしまうのもよいと思います。
まとめ
脱毛は、首輪による病気でないものから、心因性、疾患によって起こるものなど様々です。かさぶたや痒み、赤みがある場合は感染症などの疾患の可能性が高く、同じところをずっと舐め続けているようであれば心因性の可能性が高くなります。左右対称に毛が抜けてくる場合はホルモン性の可能性を疑います。いずれにせよ、動物病院でしっかり診断する必要があります。
たかが脱毛と思わず、動物病院に相談してください。
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