猫の尿石症とは?原因や治療法、予防方法を獣医師が詳しく解説

猫の尿石症とは?原因や治療法、予防方法を獣医師が詳しく解説

冬は猫のおしっこトラブルが多発する季節です。猫のおしっこトラブルのうち、尿石症は膀胱炎に次いで、2番目に多いおしっこトラブルになります。当院でも、寒くなり始めるとおしっこトラブルで来院される猫ちゃんが増えてきます。

今回は、放置すると命に関わる猫の尿石症について、原因、治療法、予防方法について解説します。

猫の尿石症の症状とは

猫の尿石症とは

尿石症とは、尿中の石の成分が固まることにより結石ができ、その結石が尿路(頭側から腎臓、尿管、膀胱、尿道)に詰まるなどして、排尿トラブルが起きる疾患です。結石ができる場所によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と疾患名が異なります。

動物病院で尿検査を受けた際、結晶があると言われた飼い主さんもいると思います。結晶は結石のもととなるもので、結晶が塊を作って石になったものが尿石です。尿石症の例えとして、濃い塩水を想像してみてください。濃い塩水は混ぜても溶けきれず底に沈みます(結晶)。濃い塩水の状態が続くと、やがて大きな結晶ができてきます(尿石症)。

猫の尿石症は、ストルバイトとシュウ酸カルシウムが2大尿石症と言われています。その他にも、尿酸アンモニウム、リン酸カルシウムといった成分も尿石症の原因にもなりますが、数としてはあまり多くありません。

尿石症の症状は、おしっこが出ない、何度もトイレに行く、排尿時に鳴き声が出る、血尿が出る、陰部を舐め続ける、吐く、食欲がない、元気がないなどになります。おしっこが出せないと、数時間ほどで腎臓の障害が起こります。オスは尿道が細く、出口まで距離があるため、オスの方が閉塞しやすい傾向にあります。

猫の尿石症の原因とは

猫の尿石症の原因

尿石症の原因は、猫本来の生活スタイルも原因の一つと考えられています。原因を知っておけば、予防することが可能です。

飲水量が少ない

猫の先祖は砂漠で生活していたため、水をあまり飲まなくても生きられるようになっています。少ない飲水で生活するため、濃い尿が作られます。また、冬になるとあまり動きたがらなくなったり、冷たい水を避ける傾向があり、冬は飲水量が低下します。冬に尿石症が増える理由はここにあります。

さらに、飼われているほとんどの猫がドライフードを主食としているため、摂取できる水分量が少なくなりがちです。

肥満

飼われている猫の多くが肥満体型です。肥満になると活動量が低下し、水飲み場まで動きたがらなくなり、その結果飲水量が低下します。

避妊・去勢手術

避妊・去勢手術を行うと太りやすくなり、尿石症のリスクが上がると考えられています。また、生後6か月よりも早い時期に手術を行うと、特にオスでは尿道が発達しないために尿石症になりやすいと考えられています。

トイレに問題がある

トイレが汚かったり、狭かったり、砂の好みが合わなかったりすると、猫はトイレを我慢してしまいます。また多頭飼育の場合、猫の頭数よりトイレの数が少ないと、トイレに入れなくなる猫が出てきます。トイレを我慢するとおしっこの濃度が濃くなるため、尿石症になりやすくなります。

猫の尿石症は治せるのか?治療法は?

猫の尿石症の治療法

尿石症は、まず検査で詰まっているところを見つけ、尿検査で石の成分を確認します。尿石の治療法は、閉塞の解除、食事療法、手術になります。

閉塞の解除

尿石の多くが、膀胱と尿道に詰まります。尿道に管を通し、膀胱に石を押し戻します。強い痛みを伴うため、全身麻酔下で行われます。これだけで治ることはないので、食事や手術がメインの治療法になります。

食事療法

ストルバイト結石は、尿が酸性になると溶ける性質があります。そのため尿検査でストルバイト結晶が見つかると、専用の療法食に切り替えます。あまり大きくない結石であれば、療法食を使用するだけで治ります。シュウ酸カルシウム結石の場合は、食事で溶けることはありません。

尿石症に一度なると、何度も再発しやすい疾患です。尿石症を再発させないためにも、尿石症専用の療法食に切り替える必要があります。猫の尿石症の療法食は非常に種類が多いため、自己判断ではなく獣医師の指導により購入しましょう。

手術

結石の数が多い、結石が大きい、シュウ酸カルシウムによる結石の場合は手術が適応になります。また、腎臓や尿管が詰まった場合も手術が適応になります。尿石症の手術は緊急性が高いため、診断された当日もしくは翌日に手術となることが多いです。

オスの場合、何度も尿石症になり尿道に傷ができると、さらに尿道が細くなり詰まりやすくなります。その場合は、会陰尿道瘻という手術も行われます。

猫の尿石症の予防方法とは

猫の尿石症の予防方法

尿石症の予防方法は、原因を取り除くことにあります。

水を飲みやすくする

猫は自分の行動範囲に飲み水がないと、積極的に水を飲まない習性があります。猫の生活スペースに、水飲み場を増やしてあげましょう。また、陶器製やガラス製をより好む傾向があります。容器を変更してみるのもよいです。水飲み場の高さを上げてあげる一工夫も必要です。

猫によって好みの水が違います。流水を好んだり、一晩おいた水が好きだったり、好みは様々です。また口内炎があると、冷たい水を避ける傾向があるため、少し温めた水を飲みたがる猫もいます。猫に合わせた飲み水を用意してあげましょう。

体重を増やさない

肥満になると飲水量が減る傾向があります。特に避妊・去勢手術を行うと、太りやすくなるため、尿石症のリスクが上がります。食欲が増しますが、飼い主さんが食事量をコントロールして、太らせないようにしましょう。

食べたがってしまう猫には、フードを投げて食べさせたり、隠したフードを探させるなど、猫本来の狩りの習性を利用すると、少ない量でも満足すると言われています。

トイレを見直す

猫の理想的なトイレの個数は、猫の頭数+1個が望ましいとされています。大きさは猫の体の長さの1.5倍以上とされています。この大きさは、猫がトイレにすっぽりと入り、向きを変えても体が出ない大きさになります。また、屋根付きのトイレはあまり好きではないと言われており、屋根付きの場合はしっかりとした高さがあるものを準備するのが望ましいとされています。

排尿トラブルを起こす猫は、トイレの砂に不満を持っていることがあります。一度、トイレの数や砂の種類を見直してみましょう。

フードを変更する

まず、人の食事は肥満の原因にもなるので、絶対に与えないようにしましょう。

尿石症になった事がない猫であれば、療法食を与える必要はありません。動物病院で取り扱っている避妊去勢後のフードは、ストルバイト、シュウ酸カルシウムの結石ができにくいミネラル設計となっているため、そのような食事に切り替えるのも良いでしょう。尿石症になった猫は、再発する可能性が非常に高いので、獣医師から処方される療法食を使い続ける必要があります。自己判断で購入したり、やめたりすると尿石症の再発に繋がります。

ほとんどの猫がドライフードのみで生活していると思いますが、飲水量が少ないと感じたらウェットフードを足してあげても良いでしょう。

まとめ

まとめ

猫の尿石症は、命に関わる緊急疾患です。様子を見ているうちにどんどん状態が悪くなり、腎臓に深刻なダメージが残ります。夜間に同じような状態になることも少なくありません。夜間対応している病院をリストアップしておくことも大切です。

猫の尿石症は、飼い主さんがちょっと工夫することで、予防や再発防止がある程度可能です。そして、療法食も充実しているので、かかりつけの動物病院でよく相談しながら、愛猫に合った食事を選んであげてください。


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