猫を飼っていると、投薬が必要になることがあると思います。嫌がる猫に薬を飲ませるのはなかなか難しいでしょう。今回は薬の飲ませ方について詳しく解説します。
猫に薬を飲ませる必要性と基本知識

なぜ猫は薬を嫌がるのか?
猫が病気になると、治療のために薬を飲ませなくてはならないことがあります。我々人もそうですが、病気になると治療で数種類の薬を処方されると思いますが、猫も同じです。
薬にはいくつか種類がありますが、動物病院で処方されるものは錠剤、粉薬、液剤になります。猫は薬をそのままあげても決して飲みません。ほとんどの場合が、口の中に入れなければなりませんが、無理矢理口を開けられることを非常に嫌います。また、離乳期に食べた物を好んで食べますが、それ以外のものは嫌がる傾向にあります。さらに、薬によっては苦味があるものがあり、薬はまずいものと認識してしまい、薬を嫌がるようになります。
薬の種類と投与方法(錠剤、粉薬、液体薬)
動物病院で処方される薬には、錠剤、粉薬、液体薬があります。よく処方されるのが錠剤です。錠剤は口の奥に入れ、喉をさすって飲み込ませます。
粉薬はもともと粉のものもありますが、錠剤がどうしても飲めない猫はあえて粉で処方することがあります。水に溶かしてスポイトで飲ませたり、液体おやつなどに溶かして舐めさせたりします。
液体薬はもともと液体のものが多いですが、量が極端に少なかったり、子猫などにはシロップで溶いて液体薬として処方することもあります。液体なので直接口に入れてあがたり、フードにかけて食べさせることもできます。
正確な投薬が健康管理に重要な理由
動物病院から処方される薬は、1日何回などの指示があります。これは、薬が体内で効果を発揮している時間をもとに投薬回数を決めています。そのため、勝手に投薬回数を減らしてしまったりやめてしまうと、効果がなかったり体に負担がかかってしまうことがあります。抗生物質に関して言うと、飲ませたり飲ませなかったりすると、体内で抗生物質に抵抗できる病原体が増え(薬剤耐性菌)、薬がまったく効かなくなってしまうことがわかっています。
薬がしっかりと効果を発揮するためにも、指示された投薬を守る必要があります。
猫に薬を飲ませる具体的な方法

錠剤を飲ませるコツ:直接口に入れる方法と包む方法
錠剤は直接口に入れる方法と、投薬サポートのおやつなどに包む方法があります。
直接口に入れる方法は確実に投薬できるメリットがありますが、噛みつかれるなどのデメリットもあります。猫を少し上に向かせ手で口を開け、喉の奥の方に錠剤を入れます。あまり奥に入れてしまうと嘔吐反射が出たり気管に入ってしまいます。逆に手前に入れると薬を吐き出してしまうため、舌の付け根のあたりに入れるのがポイントです。インプッターと呼ばれる投薬補助器を使うと、口の中に直接手を入れずに飲ませることができ、ケガを防ぐことができます。薬を入れたらすぐ口を閉じ、喉をさすって嚥下を促します。猫は食道の動きが発達していないため、食道に物がとどまりやすいことがわかっています。そのため、薬を飲ませたあと少量の水をスポイトで入れたり、ご褒美のおやつを一緒にあげたりすると、食道から胃に流れやすくなります。
錠剤を投薬サポートのおやつなどに包む方法は、お互いに嫌な思いをしないで飲ませられるメリットがありますが、薬だけを出してしまうこともあります。錠剤をしっかりおやつで包み込むのがポイントです。薬が入っているのに気づかれないように、薬入りのおやつの前後には何も入っていないものをあげましょう。
粉薬や液体薬の飲ませ方:フードとの混ぜ方の注意点
粉薬はそのまま飲ませるのは非常に難しいため、水に溶かして飲ませたり、液体おやつに溶かして飲ませたりします。苦味が強い薬の場合、おやつに混ぜると一切食べなくなる可能性があるため、水に溶かして飲ませてしまう方が無難です。たくさんの水に溶かしてしまうと飲みきれなくなってしまうため、少量の水に溶いて飲ませましょう。
液体薬はそのまま口に入れて飲ませたり、フードにかけて飲ませます。フードをよく食べ、味のない薬であればフードにかける方が楽でしょう。フードにかける場合、少量のフードにかけて、全部食べきったら残りのご飯を追加しましょう。
粉薬や液体薬をスポイトなどで飲ませる際は、口の横から流しこむとよいでしょう。水の量が多かったり、勢いよく流し込むとむせてしまうので、加減しながら飲ませてください。
薬を嫌がる猫への対応策

猫を落ち着かせて飲ませましょう
猫に薬を飲ませるときは、落ち着いて飲ませましょう。まず、飲ませる薬を用意し、その他に水やおやつを用意します。逃げようとする場合は、タオルに包んであげると落ち着きます。
突然薬を飲ませようとしてもうまくいかないため、猫を飼ったら日ごろから投薬練習をしておくと、いざ本番となったときに慌てません。投薬練習の方法は、フードを薬のように食べさせます。そうすると、口に入れられたものは嫌なものではないと学習します。
優しく確実に行うための保定の方法
嫌がる猫を無理矢理押さえて薬を飲ませると、「薬は嫌なもの」と認識してしまい、もっと嫌がるようになってしまいます。そのため、なるべく短時間で飲ませ、ストレスを少なくしましょう。短時間で飲ませるにはなるべく動かないように保定し、一瞬で飲ませる必要があります。タオルで両手足を包み込むようにすると、動きが押さえられるだけでなく、狭いところを好む猫にとっては安心できます。タオルは大きいものを使用し、動きを制限するように包みます。普段からその練習をしておくと、タオルをかけられても嫌がりにくくなります。
投薬後のご褒美やポジティブな経験の積み重ね
薬を飲むことは猫にとって楽しい経験ではありません。そのため、薬をおいしいもので隠したり、飲み終わった後にご褒美をあげていい経験に変えてあげると、次の投薬で苦労しなくなるかもしれません。普段からフードを薬のように食べさせるトレーニングをすると、「口に入ってくるものは嫌じゃない」と学習するため、口を開けられたり喉の奥に物を入れられるのを嫌がりにくくなります。
飲まなくても自然治癒するものもありますが、内服薬でしか治療できない病気もあります。「猫が嫌がって飲まないから飲ませていない」と言われる飼い主さんは少なくありませんが、病気が悪化してしまう危険性があります。そのため、獣医師から処方された薬は、必ず飲ませましょう。
猫の体調や反応に合わせた注意点

投薬中に吐き出した場合の対応方法
飲ませてすぐに嘔吐した場合、薬がそのまま吐き出されます。もし薬を回収できたのなら、もう一度飲ませてください。
飲み込んでから時間が経っていて吐いた場合、薬が吐いたものの中にないかを確認しましょう。もし残っていれば、再度飲ませるのが望ましいですが、残っていないようであれば追加で飲ませるべきかは動物病院に確認しましょう。薬を飲ませるたびに嘔吐を繰り返す場合は、薬の副作用による嘔吐かもしれません。その場合も動物病院に確認しましょう。
副作用が見られる場合の対処法と獣医師への相談タイミング
薬に期待される作用を主作用と言うのに対し、有害な作用を副作用と言います。処方される薬は、体に負担がない量で処方されますが、予期せぬ副作用が出ることがあります。副作用の症状は様々で、軽度のものから命に関わる重度なものまであります。特に抗生剤の副作用でアナフィラキシーショックという重い副作用が出ることがあり、すぐに対応しないと亡くなることもあります。下痢、嘔吐、食欲不振、ふらつき、呼吸困難、意識消失などが起こりうる症状ですが、いつもと違うようであれば薬を中止しすぐ動物病院に連絡しましょう。
多頭飼育の場合の配慮ポイント
多頭飼育の場合、薬をフードボールに入れておくだけでは、他の猫が食べてしまうかもしれないため、確実に口の中に入れるか薬を飲ませるときは隔離して飲ませるようにしましょう。また、抗がん剤を使用中は、おしっこやうんちに抗がん剤の成分が出てくるため、他の猫に対しても影響が出る可能性があります。内服している薬の種類によっては、隔離して飼育する必要もあります。
薬がどうしても飲めない場合の選択肢

獣医師に相談して薬の形状を変えてもらう方法
多くの薬が錠剤で処方されますが、飲みにくい場合は粉薬や液体薬に変えてもらえることがあります。投薬を諦める前に、一度獣医師に薬を変更できないか相談しましょう。
注射や外用薬などの代替手段
短期間で確実に投薬したい場合、注射薬があれば注射で対応することもあります。薬の中には一度の注射で長時間作用するものもあります。逆に、1日に複数回投与が必要な場合は、注射の時間に通院する必要があったり、入院で対応することもあります。
皮膚炎などでかゆみ止めが必要な場合、内服だけでなく塗り薬などの外用薬を使用することがありますが、比較的軽度な症状の場合に使用されます。外用薬を使用する場合は、舐めないようにエリザベスカラーなどを使用することもあります。
獣医師による投薬サービスの利用
動物病院では、どうしても投薬ができない猫に対し、院内で投薬することがあります。確実に飲ませられるメリットがあります。しかし、投薬のたびに受診する必要があり、ストレスを強く感じてしまったり、それ以降の通院を嫌がるデメリットもあります。
まとめ

猫の投薬はかなり苦戦するものです。投薬方法はいろいろあるので、お互いストレスにならない方法を見つけましょう。そして、自己判断で薬を減らしたり、やめてしまうのは非常に危険です。獣医師から指導された通りに飲ませましょう。また、どうしても難しい場合は必ず獣医師に相談しましょう。
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