獣医師が教える猫の術後ケア:元気回復のためのポイントと注意事項

獣医師が教える猫の術後ケア:元気回復のためのポイントと注意事項

もし愛猫に手術が必要になった場合、飼い主さんはどんなことをしてあげればよいのでしょうか?退院時に獣医師から指導がありますが、多くの方が不安になってしまうことでしょう。今回は猫の術後ケアについて詳しく解説します。

猫の術後に必要なケアとは?獣医師が解説する基本ポイント

猫の術後に必要なケアとは?獣医師が解説する基本ポイント

術後ケアの重要性と基本原則

術後ケアは、術後の合併症(感染、出血、術部のトラブル、痛み)などの早期発見のために重要です。猫の手術後は、状態が安定するまで入院になることが多くあり、入院中は異常がないか随時チェックし、異常があればすぐに対処していきます。術後のトラブルなく過ごすことで、回復が早くなり通常通りの生活に戻ることができます。

術後ケアの基本原則は、創部に異常がないか、出血していないか、食欲はあるか、嘔吐や便の異常がないか、元気はあるかなどの状態を確認することにあります。

手術後の猫に見られる一般的な反応

手術の時には痛みを最小限にするために、麻酔や鎮痛剤を複数組み合わせて投与します。そのため手術中は痛みを感じにくくなります。しかし、術後麻酔が切れてくると痛みが発生します。痛みを少なくするように術後も鎮痛剤を使用しますが、それでも痛みはゼロにはなりません。痛みがある猫は震えたり、じっとしていたり、食欲がなくなったりします。中には痛みから狂暴化する猫もいます。

手術内容によるケアの違い

手術後、状態が安定するまで入院することがあります。猫の状態が落ち着き、自宅でのケアが少ない状態で帰しますが、猫の性格によって自宅の方が回復が早いと判断した場合は、自宅でケアをお願いすることがあります。

避妊手術や去勢手術の場合は、術後に麻酔が覚めたら帰宅することが多く、自宅では傷口を1日に1回は観察してもらう程度です。

消化管の手術の場合、傷口の観察以外に食事内容を変更しなくてはならないことがあります。術後数日は消化しやすい食事を流動食からスタートし、数日かけて通常の食事に戻していきます。

膀胱の手術の場合、食事を尿路系の療法食に変更することがあり、さらに水分量を確保するために静脈点滴や経口補水液などを使用します。

手術の傷が大きくなる乳腺腫瘍やその他腫瘍性疾患の場合、手術後の出血や傷が開いてしまう危険性があります。そのため、術後は包帯で保護をすることがあります。また痛みが強く出ることがあるため、鎮痛剤を適宜使用します。

肺の手術の場合、酸素の取り込みを助けるために、酸素室で管理することもあります。

骨折など骨関節の手術の場合は、一定期間固定する必要がある場合があります。包帯やギブスのようなもので固定しますが、腫れや皮膚の異常がないかを確認します。

抜歯などの口の手術の場合、ドライフードは食べづらくなるため、ウエットフードを食べさせます。場合によってはぬるま湯などで洗浄することもあります。

術後の猫の経過観察:どんな症状に注意すべきか?

術後の猫の経過観察:どんな症状に注意すべきか?

術後数日間の猫の様子と正常な回復プロセス

術直後の猫の多くが、痛みから動かなかったり震えたりしますが、痛みが治まってくると通常通りに動けるようになります。その期間は大体1~4日ほどです。その間、食欲がなくなったりしますが、正常であればすぐに回復してきます。骨の手術や大きな傷ができるような手術の場合、痛みが強くなる傾向があり、少し時間がかかることもあります。

傷口の状態チェックと感染症の兆候

傷口は最低でも1日1回は確認します。術直後はじわじわと出血することがありますが、ほとんどの場合、時期に止まってきます。止まりが悪い場合は止血剤を使用したり、ガーゼなどで圧迫止血することがあります。出血の量が増えていないか、毎日確認することが大切です。また、傷口が感染していないかを確認すると同時に、傷口が開いていないか確認します。縫合してある糸が外れて傷が開いていたり、猫自身が舐めとってしまうこともあります。傷口をやたらと気にする場合は、術後服やエリザベスカラーを使用します。

感染が起きている場合、傷口から液体や膿が出てきます。それに伴い発熱や食欲不振、傷口の開きも見られます。

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異常行動や症状が現れた場合の対処方法

術後の異常で多いものは、元気がない、食事が摂れない、傷が開いている、倒れてしまった、嘔吐したなどになります。術後の合併症によって起こります。術後に異常が現れた場合、すぐに動物病院を受診してください。様子を見ても回復はしないと思ったほうがよいでしょう。もし夜間だったり休診中の場合は、診察してもらえる動物病院に連絡し、「どんな手術をいつしたか」を伝えましょう。

術後の生活環境づくりとストレス軽減の工夫

術後の生活環境づくりとストレス軽減の工夫

静かで安全な環境の整え方

術後は特に安静の必要がありませんが、同居猫がいて走り回ってしまうようなことがあれば、キャットケージで数日過ごすのもよいでしょう。手術をすると、猫は本能的に隠れようとします。それは、敵に弱っていると思われて襲われるのを防ぐためです。たとえ術後元気があっても、隠れてあり休めるような場所、たとえば段ボールハウスなどを設置しておくのもよいでしょう。

骨の手術をしたり、体力が落ちて高いところに登れないこともあります。しばらくはキャットタワーなどに登らせないようにすることも必要です。

猫のストレスを軽減するための工夫

術後の猫は過敏になっています。甘やかしてあげようと必要以上にかまったりすると、逆にストレスになってしまいます。飼い主さんは普段通り接してあげてください。また、術後に家の中で何かイベント(引っ越し、来客、物の移動など)があると、強いストレスとなりますので避けましょう。

他のペットとの距離の取り方

他に猫や犬などを飼っていると、いつもと違う匂いから必要以上に追いかけまわすことがあります。場合によっては、攻撃されることもあるため、静かな部屋にキャットケージを設置し、数日はその中で過ごさせてあげましょう。キャットケージから出すときは、お互いの匂いがついたタオルなどを嗅がせてから出すと、トラブルが少なくなります。

術後の猫の食事管理と運動制限のポイント

術後の猫の食事管理と運動制限のポイント

術後に適した食事内容と食事量

術後の食事は、獣医師から指示されたものを与えるようにしてください。特に指示がなく、食べづらそうにしているのであれば、ふやかしたりウェットフードに変えてみるのもよいでしょう。食事量に関しても獣医師の指示に従ってあげましょう。まったく食べない日が1日以上続いた場合は、動物病院で状態を確認してもらう必要があります。

飲水量のチェックと補水の重要性

猫はもともと飲水量があまり多い動物ではありませんが、術後まったく飲まなくなることは少なくありません。特に尿石症などで泌尿器系の手術をした場合、術後にしっかり水を飲むことが必要になります。猫に必要な飲水量は、1日あたり体重1㎏につき約50mlとされています。それくらいの水を用意し、どれくらい飲めているのかチェックするのもよいでしょう。あまり飲んでいないようであれば、経口補水液を使用したり、飲み水にウェットフードのスープを混ぜてもよいでしょう。それでも飲まなければ動物病院で点滴が必要になることもあります。

運動制限の期間と具体的な制限方法

多くの手術の場合、特に運動制限はありませんが、傷口をぶつけたりすることで出血や傷口が開く可能性があります。そのため、獣医師から許可が出るまではキャットケージなどで休んでもらう方がよいでしょう。落ちてケガする危険性のあるものは、あらかじめ撤去しておいた方がよいでしょう。

獣医師が推奨する術後ケアの注意事項とフォローアップ

獣医師が推奨する術後ケアの注意事項とフォローアップ

術後ケアで最も注意すべきポイント

術後ケアで最も注意すべきポイントは、傷の状態と食欲、元気、排泄の状態、嘔吐などになります。通常異常がある場合は、術後4日程度で何らかの異常が起こってきます。傷の抜糸は術後10日から2週間で行われますが、その間は注意して観察しましょう。

術後健診の重要性と最適なタイミング

術後健診のタイミングは、手術の内容と獣医師の判断によって変わります。そのため、退院時に獣医師から指示された日に受診するようにしましょう。もしその日に来院できない場合、どうしたらよいかをあらかじめ確認しておきましょう。

もし受診日前に少しでも異常があれば、すぐに受診することが大切です。

早期回復のための獣医師への相談のタイミング

術後にトラブルなく過ごせることが、早期回復のポイントになります。そのため、少しでもおかしいと思ったら獣医師に相談することが大切です。明日になればよくなるかもと思っても、術後の合併症の場合、決して回復しません。様子を見ずにすぐ獣医師に相談してください。

まとめ

まとめ

避妊手術や去勢手術を含めると、飼い猫さんは生涯で1度は手術を受ける可能性があります。術後は体の中でいろいろなものが変化します。手術自体成功しても、術後に合併症が起きてしまうことも少なくありません。手術後は獣医師の指示を守り、少しでもおかしいと思ったらすぐ相談するようにしましょう。


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