血管肉腫とは、血管にできる悪性腫瘍です。主に皮膚や肝臓や腸などの内臓に発生します。猫では稀な腫瘍ですが、お腹の中で出血を起こしていたり、見つかった時にはすでに転移していることもあります。
今回は猫の血管肉腫について詳しく解説します。
猫の血管肉腫とは

血管肉腫の定義
血管肉腫は、血管内皮細胞と呼ばれる血管の一番内側、血液と接触する部分にある細胞に生じる悪性腫瘍です。犬では発生率の高い腫瘍ですが、猫ではかなり稀な腫瘍となります。血管肉腫は血管があるところであればどこでも発生しますが、主に皮膚や皮下に発生する皮膚型、肝臓や腸、脾臓などに発生する内臓型があります。
発症の頻度と猫種・年齢の傾向
猫の血管肉腫の発生は稀であり、100頭に2頭くらいです。発生が多い猫種は特にありませんが、8歳以上のシニア猫に発生が見られる傾向にあります。しかし、若くても発生することがあります。
猫の血管肉腫の主な症状

皮膚型血管肉腫の症状
皮膚や皮下にできる皮膚型血管肉腫は、皮膚に赤紫色の腫瘤ができます。腫瘤は大きくなる傾向にあります。
内臓型血管肉腫の症状
内臓型の血管肉腫は、肝臓、腸管、腹部リンパ節、脾臓などに発生します。血管肉腫から出血が起こりやすく、腹腔内出血で見つかることがあります。また、出血による貧血や血小板の減少も見られます。お腹の中で腫瘤が大きくなるため、元気消失、食欲不振、嘔吐、呼吸困難などの症状が現れます。
症状の進行と重篤度
皮膚型は内臓型と比べ、挙動が悪くないと考えられています。皮膚型であれば、腫瘤に気づいて切除すれば長期生存する場合があります。内臓型は転移や病変が多くできる傾向があります。内臓型では治療を開始した段階で転移が始まっていることがあり、治療しても余命半年程度になります。
猫の血管肉腫の原因

血管肉腫の原因ははっきりとわかっていません。犬では特定の犬に好発するため、遺伝が関係しているとも考えられていますが、猫ではわかっていません。猫では異物による血管肉腫の報告もあるため、紫外線や外傷などが原因になっている可能性があります。
猫の血管肉腫の診断と治療法

診断方法
皮膚にできた腫瘤は触った時にわかるため、飼い主さんがすぐに気づくことはあります。しかし、内臓型はお腹の中で大きくなるため症状が出てから気づくことがあります。
触診にて腫瘤だけでなく、リンパ節の腫れなども確認します。また、貧血や止血異常などが起きていることもあり、口腔粘膜の確認や皮膚の内出血(紫斑)などを確認します。
血管肉腫にはレントゲンやエコーなどの画像検査が重要になります。画像検査で腫瘤の場所や転移の有無、お腹の中での出血(腹腔内出血)の有無を確認します。
腫瘤が確認された場合、生検が必要になりますが、血管肉腫は針を刺して調べる針生検ではわかりにくく、実際に腫瘤を摘出して調べる病理検査が必要になります。
治療法
血管肉腫は手術が第1選択となります。皮膚型は切除にて長期生存が可能なことがありますが、内臓型の場合は手術後に転移が確認されることがあり、抗がん剤を併用していきます。
手術の前に状態が悪化している場合は、まず全身状態を改善することが必要になります。
治療後の経過観察
皮膚型の血管肉腫はしっかり切除されていれば長期生存が可能なことがありますが、皮膚の深くまで広がっている場合は再発する可能性があります。
内臓型の場合、腫瘍の摘出や抗がん剤治療を行っても、半年以内に亡くなってしまうほど進行が速い悪性腫瘍です。数か月で転移や再発が見られます。皮膚型にしろ内臓型にしろ、治療がいったん終了しても定期診察は必ず必要になります。
猫の血管肉腫の予防と早期発見のポイント

定期的な健康チェックとマッサージの重要性
皮膚型の血管肉腫であれば、皮膚のしこりに気づかれることがあります。そのため、スキンシップを兼ねて体全体のブラッシングやマッサージを行うと良いでしょう。
内臓型は残念ながら早期に発見することが難しく、症状が出て初めて病院を受診することになります。健康診断は1年に1回は受けるのが望ましいのですが、血管肉腫は進行が速いため、毎年健診を受けていても早期発見が難しいことがあります。血管肉腫はシニア期に発生しやすいため、半年ごとに健康診断を受けるのが望ましいでしょう。
日常生活での注意点(紫外線対策、外傷予防など)
血管肉腫は発生の原因がわかっていないため、予防はできません。しかし、人の皮膚ガンでは紫外線などが原因と考えられているため、極度に紫外線を浴びるなどは避けた方がよいと思います。
異常を感じた際の迅速な対応と獣医師への相談
血管肉腫は早めに対応しないと、転移が始まってしまうかもしれません。特に内臓型の場合、出血や止血異常などでショック状態になることもあります。その段階では、ぐったりして動くことができず、口や舌が白っぽくなっているため、飼い主さんも異変に気づくことでしょう。その場合は一刻を争う事態となるため、すぐ受診できる病院を探しましょう。その間の段階として、食欲がなくなるなどの症状が出ることがあります。ちょっとした変化でも動物病院にかかることが大切です。
まとめ

猫の血管肉腫は稀な悪性腫瘍ではありますが、腹腔内出血で発見されることがあります。血管肉腫は進行が早いため、特に内臓型であれば早期に発見することが難しい腫瘍です。少しでも異常を感じた場合はすぐに動物病院を受診しましょう。そして、シニア期の猫は半年に1回の健康診断を受けましょう。
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