飼い主さんの中には、食べ物などで蕁麻疹が出た経験がある方も少なくないかと思います。これらの症状はアレルギー性皮膚炎と呼ばれますが、猫も人と同様にアレルギー性皮膚炎があります。今回は猫のアレルギー性皮膚炎について解説します。
猫のアレルギー性皮膚炎とは?症状と特徴を解説

アレルギー性皮膚炎の定義と発症メカニズム
アレルギー性皮膚炎とは、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が猫の体内に入ることにより、免疫が過剰に反応することで、痒みや湿疹などの症状が起きている状態をアレルギー性皮膚炎と言います。毎年、同じような時期に発症する季節性があることがあります。
厳密に定義すると、アレルゲンに対する反応が皮膚、消化器、呼吸器に起こる過敏性疾患を、猫アトピー症候群と言います。猫アトピー症候群にはノミアレルギー性皮膚炎、猫アトピー性皮膚症候群、猫食物アレルギー、猫喘息があり、皮膚に症状が出るノミアレルギー性皮膚炎、猫アトピー性皮膚症候群、猫食物アレルギーをアレルギー性皮膚炎と呼んでいます。
■猫アトピー症候群に含まれる主な疾患
疾患名 | 主な症状が出る部位 | 説明 |
ノミアレルギー性皮膚炎 | 皮膚 | ノミの唾液に含まれる物質にアレルギー反応を示します。ノミの数に関わらず、刺されたところだけでなく全身的に皮膚炎が出現します。 |
猫アトピー性皮膚症候群 | 皮膚 | 花粉やハウスダストなど、環境アレルゲンに反応し皮膚症状が出る。 |
猫食物アレルギー | 皮膚・消化器 | 特定のタンパク質に対する反応で、皮膚炎や下痢・嘔吐などが起きる。 |
猫喘息 | 呼吸器 | ハウスダストやたばこ煙などへの反応で、咳・喘鳴(ゼーゼー)など呼吸器症状が現れる。 |
かゆみ、脱毛、赤みなどの代表的な症状
猫のアレルギー性皮膚炎は、顔や耳を痒がることがあり、顔や耳、首などに引っ掻き傷が見られます。また、ブツブツとした湿疹が出ることがあります。痒みにより頻繁に舐めるため、脱毛や皮膚の赤み、ただれが出ることがあります。
これらの症状は他の皮膚炎でも出ることがあるため、見た目だけでアレルギー性皮膚炎と判断することはできません。
猫のアレルギー性皮膚炎の主な原因

食物アレルギー
猫の食べ物に入っている、特定の物質に対してアレルギー反応を示すことがあります。猫の食物アレルギーの原因物質は、鶏肉、魚、牛肉が可能性として高いと報告されています。
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの唾液に含まれる物質にアレルギー反応を示します。ノミの数に関わらず、刺されたところだけでなく全身的に皮膚炎が出現します。
環境アレルギー
環境アレルギーとは、ハウスダストや花粉など環境中にあるアレルギー物質に対して反応します。アレルギー物質が多くなる時期に起こるため、特定の時期に症状が強くなることがあります。
接触性アレルギー
直接皮膚に接触したものに対してアレルギー反応が出ることを、接触性アレルギーと言います。シャンプーや洗剤、フードボールに使われるプラスチック製品が原因となります。
猫のアレルギー性皮膚炎の診断方法と治療法

獣医師による診断プロセス(皮膚検査・アレルギー検査・除去食試験)
猫のアレルギー性皮膚炎の診断は、まず皮膚炎の状態を確認し、アレルギー以外の皮膚炎(真菌、ニキビダニ、疥癬、ウイルス、細菌、腫瘍、心因性)を鑑別します。それらの皮膚疾患を除外していき、アレルギー性皮膚炎に特徴的な皮膚症状があるか、脱毛があるか、顔や口に病変があるかなど、診断基準を満たしているか確認します。診断基準基準を満たしている場合、アレルギー検査や特定のアレルゲンを除去した除去食試験を行い、アレルギー性皮膚炎を診断します。
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治療薬の選択肢
アレルギー性皮膚炎の治療は、ステロイド剤や免疫抑制剤によって行われます。犬のアトピー性皮膚炎では分子標的薬という、かゆみに関係する物質をピンポイントで抑える薬剤が用いられており、猫でも使用されることがあります。
ノミアレルギーの対策
ノミアレルギーは、ノミの数に関わらず症状が全身に出ます。そのため、定期的な駆除薬の使用が大切です。室内では年中ノミが発生する可能性があり、ノミ駆除薬を通年で投与することも必要です。また、室内の掃除をこまめに行い、ノミを除去しましょう。
食物アレルギーの場合の対応
食物アレルギーでは、フードに含まれるアレルゲンに反応してアレルギー反応が起こります。食物アレルギーの診断にはアレルゲンの特定が必要になります。アレルゲンが特定されたら、それが入っていない除去食を使用したり、アレルギーを起こしにくいタンパク質を使用したアレルギー食へ切り替える必要があります。
猫のアレルギー性皮膚炎を防ぐための予防策

食生活の見直し
猫のアレルギー性皮膚炎は、ある程度予防することができます。食物アレルギーは、食べているものにアレルギーを起こすため、完全に予防することはできません。しかし、添加物が多く含まれていたり、人の食べ物を与えているとアレルギーだけでなく、体に負担がかかります。あまり安価なフードは添加物が多く含まれていることがあるので、信頼できるフードを与えるようにしましょう。皮膚の健康を守るためには、オメガ3脂肪酸などが含まれているフードも良いでしょう。
住環境の整備や定期的な駆虫
猫のアレルギー性皮膚炎は、ノミアレルギーで起こることがあります。ノミは外にいると考えられがちですが、人の服や靴、鞄などに付着して室内に入り込む可能性があります。ノミは平均気温が14度以上であれば活動し、繁殖します。そのため、室内に入り込んでしまうと、増殖してしまう可能性があります。こまめに掃除機をかけて清潔にするほか、寝具を干したりすることでノミを駆除しましょう。
室内環境を整えるだけでは、ノミ予防に十分でないこともあります。アレルギーでなくても、ノミの駆除薬は定期的に行うことが大切です。
まとめ

猫のアレルギー性皮膚炎は、ノミやフード、ハウスダストなどに反応した皮膚炎です。痒みが強く、何度も繰り返します。治療は痒みをコントロールすること、アレルギー物質に接触させないこと、定期的なノミの駆除が必要です。また、フードを切り替える、室内を清潔に保つことも大切です。
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