猫の腎臓病とは?原因や治療法、予防方法を獣医師が詳しく解説

猫の腎臓病とは?原因や治療法、予防方法を獣医師が詳しく解説

冬は猫のおしっこトラブルが多くなる季節です。膀胱炎や尿石症が多いですが、高齢の猫の場合は冬に腎臓病になったり、悪化したりすることがあります。猫の腎臓病には急性腎臓病と慢性腎臓病の二つがあります。

今回は、猫の腎臓病の原因・治療法・予防方法について解説します。

猫の腎臓病の原因とは

猫の腎臓病の原因

猫の腎臓病には、急性腎臓病と慢性腎臓病があります。急性腎臓病と慢性腎臓病の原因は大きく異なります。それぞれについて説明します。

急性腎臓病

急性腎臓病は、何らかの原因で急激に腎機能が低下し、腎臓が働かなくなった状態です。急激に進行するため、数時間ほどで腎機能が低下します。腎機能が低下すると、体内の老廃物をうまく排出できないため、毒素が溜まってしまいます。

主な原因としては、脱水や出血、手術、尿石症などによる閉塞、腎臓に影響のある毒物や薬物、有毒植物によって起こります。

特に冬は膀胱炎や尿石症が増える季節です。膀胱炎や尿石症は、急におしっこが出せなくなり体内に溜まってしまいます。おしっこが出なくなると、腎臓が受けてしまい急性腎臓病となります。

急性腎臓病は放置すると1~2日で亡くなりますが、原因を取り除けば速やかに回復します。

慢性腎臓病

慢性腎臓病を患っている猫は高齢猫に多く、7歳以上の猫の3~4割、15歳以上の猫の8割が慢性腎臓病を患っており、腎臓病は猫の死因の第1位を占めています。

慢性腎臓病は急性腎臓と違い、腎臓が数か月以上障害を受けることで起こります。慢性腎臓病は治療をしても治りません。徐々に進行し続け、最終的に末期の腎不全や尿毒症に至ります。

主な原因としては長年明らかになっていませんでしたが、近年「AIM」という物質が腎臓の老化に関係しており、猫ではAIMが機能していないために慢性腎臓病になると考えられています。

アビシニアンやペルシャ、エキゾチック・ショートヘアーは遺伝的に腎疾患にかかりやすい傾向があります。また、高齢猫の尿路結石や膀胱結石は急激に慢性腎臓病を進行させることがあります。

猫の腎臓が悪いとどんな症状が出るのか?

猫の腎臓病の症状

急性腎臓病と慢性腎臓病の症状は非常に似ています。急性腎臓病は急激に症状が出ますが、慢性腎臓病はゆっくりと症状が現れます。慢性腎臓病はゆっくりと進行するため、症状が現れたころには病気のステージが進んでいることがあります。

急性腎臓病は、急激な元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、尿量の低下、低体温などが起こります。急激に進行するため、放置すると数日で死亡します。

慢性腎臓病は、初期、中期、後期、末期とステージが分かれますが、初期の段階では症状はほとんどありません。中期以降で症状が現れますが、多飲・多尿、脱水、貧血、口内炎、嘔吐、食欲不振、元気消失、削痩、けいれんなどが出てきます。末期は尿毒症期とも呼ばれ、尿毒症の症状が現れます。食欲はまったくなくなり、頻回に嘔吐します。毒素が体内に溜まってしまうため、体中からおしっこの臭いがしてくることがあります。

猫の腎臓病は治るのか?治療法は?

猫の腎臓病の治療法

急性腎臓病と慢性腎臓病では治療法が異なります。両疾患とも、放置すると危険な状態になるため、気づいたらすぐに動物病院にかかりましょう。

急性腎臓病

急性腎臓病は必ず原因があるため、原因が解消されれば速やかに改善する可能性があります。そのため、まず何が原因なのかしっかり検査を行い、原因を見つけます。

急性腎臓病の治療は原因に合わせて行います。点滴を行って脱水や中毒の中和などを行います。尿石症などで尿閉塞が起こっている場合は、尿道に管を通しておしっこを出す処置を行うことがあります。場合によっては手術を行い、閉塞している場所から結石を取り除きます。

急性腎臓病が進行し、腎機能がかなり失われてしまうと回復の見込みはありません。慢性腎臓病に移行することもあります。

慢性腎臓病

慢性腎臓病の場合、残念ながら現段階では決定的な治療法はありません。慢性腎臓病の治療目的は、進行を抑えたり、症状を抑えることが目的となります。

慢性腎臓病は、食餌療法や薬物療法、皮下輸液などが治療の中心となります。ステージによっても治療法が異なりますが、基本的に延命治療となります。

初期の段階であれば、腎臓病用の療法食で維持します。。

中期の段階では、初期と同じく食餌療法がメインになります。また、腎臓病の進行を抑制するために、降圧薬などが使用される場合があります。抗酸化作用を持つサプリなども有効とされています。

後期に入ると、吐き気などから食欲が低下します。基本的には食餌療法がベースとなりますが、輸液療法も必要になります。輸液療法は基本的には毎日行います。貧血も起こる時期になるため、造血剤を使用することもあります。体内の毒素を吸着する、活性炭の内服薬も使用されることがあります。

末期の段階では、輸液療法がメインになります。点滴は毎日行うため、自宅での皮下点滴の指導が行われます。末期になると食欲はほぼなくなります。強制的に食べさせたり、カテーテルでの栄養補給を行うことも必要です。

猫の腎臓病の予防方法とは

猫の腎臓病の予防方法

急性腎臓病は、原因があるためそれを避けることで予防できます。慢性腎臓病については、残念ながら予防ができません。しかしながら、水分補給やトイレを整えることで、腎機能の低下を緩やかにできるかもしれません。

水を飲みやすくする

猫の祖先は砂漠で生活していたため、少ない水分量でも生活できるような仕組みになっています。しかし、その分腎臓に負担がかかっていると考えられています。腎臓の負担が少なくなるように、常に飲み水を欠かさないようにすることが大切とされています。水飲み場は何か所かに分けて用意します。高齢猫になると、自分の活動範囲内でしか水を飲まなくなる傾向にあります。猫の目の付くところに水飲み場を用意しましょう。

容器についても猫の好みがあるようです。猫は陶器やガラスの器を好む傾向にあります。容器を変えてみると、水を飲めるようになるかもしれません。

水の種類にもこだわる猫がいます。色々な種類の水を用意してみましょう。

トイレを見直す

猫はトイレが気に入らないと、トイレを我慢してしまうことがあります。トイレを我慢することで尿石症になったり、腎臓への負担が大きくなってしまいます。猫の理想的なトイレの数は、猫の頭数+1個とされています。トイレの大きさも、猫の体長(頭の先からお尻まで)の1.5倍が理想とされています。この大きさは、猫がトイレにすっぽりと入り、向きを変えても余裕がある大きさになります。小さいトイレだと、トイレ中に体が出てしまったり、トイレの隅に足をかけて排泄してしまいます。このような姿を見かけたら、猫にとって使いづらいトイレと思っても良いでしょう。大きなトイレを用意してください。

また、トイレ砂が気に入らなくてもトイレを拒否します。猫は砂漠のような粒の小さい砂を好む傾向にあります。おしっこトラブルを起こしたことがある猫は、特に砂にこだわってみましょう。

汚いトイレは人でも嫌だと思います。それは猫も同じです。基本的には、トイレをしたらすぐに片付けるようにしましょう。

肥満にさせない

現在、飼育されている猫の多くが肥満体型です。肥満になると活動量が減るため、水も飲まなくなります。その結果、肥満の猫は尿石症になりやすいと考えられています。

食事の量をコントロールしたり、猫と遊ぶことで少しづつ減量しましょう。猫は絶食には非常に弱い動物です。特に肥満猫が絶食状態になると、肝リピドーシスという肝機能障害を起こし、亡くなる事があります。猫のダイエットは専門的知識が必要になります。動物病院で相談することをお勧めします。

食べてはいけないものを置かない

腎臓を傷つける物を食べてしまうことで、腎臓病を発症することがあります。特に急性腎臓病の原因となる毒物は、意外と身近にあります。昔の不凍液に含まれるエチレングリコールや殺鼠剤に含まれるヒ素、ブドウ、ユリ科の植物が代表例になります。このような物は絶対に置きっぱなしにしないようにしましょう。また保管する場合は、猫が開けられないようなところに保管しましょう。

健康診断を受ける

猫を動物病院に連れていくのは、なかなか大変だと思います。飼い主さんの多くが、ワクチンや体調が悪い時以外の受診は控えているというデータも存在します。猫の慢性腎臓病に関しては、早い猫では5歳ごろから腎機能低下が認められます。

動物病院では年1~2回の健康診断を推奨しています。特に高齢猫は年2回の健康診断を推奨しています。健康診断を受けることで、早期診断・早期治療に繋がり、愛猫と長く一緒にいることができます。猫のストレスになるからと言って動物病院に行かないのではなく、定期的な健康診断を受けましょう。

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まとめ

まとめ

腎臓病は猫の死因の上位を占めます。特に慢性腎臓病の場合、治すための治療法は確立されておらず、高齢猫であればどの猫も慢性腎臓病で亡くなるといっても過言ではありません。慢性腎臓病は、初期の段階ではほとんど症状がなく、健康診断などで偶然見つかるケースがほとんどです。症状が出て病院を受診したときには、かなりステージが進んでいます。早期の段階で腎臓病を発見するには、1年に1~2回の健康診断と、日ごろからの飼い主さんの観察力が重要になります。

急性腎臓病に関しては、飼い主さんが注意することで予防できる可能性が非常に高いです。愛猫が元気に長く生きられるように、今一度生活環境を見直してはいかがでしょうか。


コメント:1


  • ひな

    腎臓病のこと、大変分かりやすく理解できました。また初めて定期検診の大切さも知ることができました。ありがとうございます。


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