2024年の酷暑とは反対に、大雪のニュースが飛び込んで来ています。気候的には冬ですが、猫の世界ではもう少しすると発情期に入ってきます。今回は猫の発情期について詳しく解説します。
猫の発情期とは?基本的なメカニズムとタイミング

発情期が訪れる年齢とシーズン
猫は生後6か月ごろになると発情が始まります。しかし個体差があり、生後4か月ごろから発情してしまう猫もいますし、成長がゆっくりな猫種(ノルウェージャンフォレストキャットやメインクーンなど)はやや遅くなる傾向があります。
猫は年2回の発情シーズンがあり、2月~4月の春と6月~8月の夏から秋にかけて発情が起こります。猫は長日繁殖動物という、日照時間が14時間以上あると発情が起こる動物です。そのため、日照時間が長い春と夏に発情シーズンを迎えます。しかし、照明がずっとついている室内飼育であったり、夜間も明るい地域では年中発情が起こることがあります。
雄猫と雌猫の発情行動の違い
雄猫と雌猫の発情行動は、ほぼ同じ行動を取ります。大きな声でなく、濃くにおいの強い尿を壁などに吹きかける(スプレー行動)、脱走するなどが見られます。
雄猫の場合、他の雄猫と雌猫の取り合いをするため、攻撃的になります。雌猫の場合は、お尻を高く持ち上げたり、背中を床にこすりつけたり(ローリング)する行動が現れます。
猫の発情期のサイクルとその長さ
雄猫には発情周期はありません。雌猫が発情し、そのフェロモンを感じ取ると、雄猫も発情します。
雌猫の発情周期は2、3週間ほどあり、その間に交尾が行われます。発情期に交尾がなかった場合、再び発情が始まります。
発情期に見られる猫の主な症状

雌猫がよくする声を上げる行動(鳴き声の特徴)
発情期に見られる雌猫の鳴き声は特徴的で、非常に大きな声で鳴きます。いつもの鳴き声とは明らかに違う「あお~ん」という声で鳴きますが、活発になる夜中に鳴き続けるため、飼い主さんの大きなストレスになります。鳴き声は1週間ほど続きます。雌猫だけでなく、雄猫も雌の声に応えて鳴いたりします。
雄猫のマーキング行動
猫の尿中には、自分の情報(年齢、性別、体格など)が含まれており、尿をすることで自分の縄張りを主張します。発情している雄は、雌猫に自分の存在をアピールするために、尿を濃縮してより高い位置に排尿します。これをスプレー行動と言います。他の猫ににおいを消されないように、壁や柱、電柱など垂直に立っているものに、勢いよく尿を吹き付けます。
食欲や行動の変化の具体例
雄、雌両方ともに当てはまりますが、発情中の猫は落ち着きがなく、外に行きたがります。また、興奮して攻撃的になったり、食欲が低下することもあります。
雌猫は雄猫を受け入れるために、お尻を高くつき上げる行動や床に体を擦りつける行動も見られます。
猫が発情期中にできる家庭での対処法

必要以上に構いすぎない
発情中はいつもより甘えやすくなることがあるため、とてもかわいい印象を受けるかもしれません。しかし、必要以上に構いすぎてしまうと、発情を助長する可能性があります。普段通りに接しましょう。
ストレスを減らすための具体的なケア方法
発情期の間は興奮しやすく、ストレスの強い状態になります。本能による行動のため、しつけで解決することはありません。夜鳴きに悩まされることも多いため、日中のうちに遊びで体力を発散させてあげるのもよいでしょう。猫は上下運動が必要なため、キャットタワーを使った運動を取り入れるようにしましょう。
発情期が終わるまでに必要な心構え
発情は本能による行動のため、抑えることが難しいです。しつけで解決することはできず、叱るのは逆効果になりかねません。そのため、飼い主さんが発情期を乗り切る覚悟が必要です。雄猫の場合、発情した雌がいれば発情が続きます。雌猫の場合、交尾が行われないと発情が終わっても2週間ほどすると次の発情が来てしまい、シーズンの間は繰り返されてしまいます。
発情期は夜鳴きに悩まされることが多く、飼い主さんも眠れないほどに鳴き続けます。日中に運動させるなどの対策が必要です。スプレー行動は雄猫で起こりますが、雌でも起こることがあります。非常ににおいの強い尿を壁に吹きかけるため、簡単ににおいは取れません。防水シートやペットシートなどを壁に貼り付けて置くなどの対策が必要です。脱走するリスクも高くなるため、普段以上に脱走対策が必要になります。
猫の発情期を乗り越えるために考えたい不妊手術

不妊手術のメリットとデメリット
不妊手術とは、雌猫であれば子宮と卵巣、雄猫であれば精巣を除去し、発情が起きないようにする手術です。
不妊手術のメリットは、不妊手術により発情が起こらなくなり、発情に伴う行動がなくなり、望まない妊娠も防ぐことができます。さらに寿命が延びることもわかっていますが、これは発情によるストレスがなくなるためと考えられています。また、卵巣や子宮、精巣の疾患を予防することができ、雌猫の場合は乳腺腫瘍の予防にもつながります。
メリットだけでなく、デメリットもあります。不妊手術は雄も雌も全身麻酔下で手術を行うため、それによるリスクは少なからずあります。また、生殖機能を完全になくすため、二度と子供を望めなくなります。そして、最大のデメリットは太りやすくなることです。ホルモンバランスや活動量が低下するため、太りやすくなってしまいます。
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手術が猫の健康にもたらす影響
ほとんどの場合、手術による影響は少ないと考えられますが、前述したとおり不妊手術によって太りやすくなり、肥満による糖尿病、関節炎、尿路疾患などのリスクは上がります。また、ごくまれではありますが、自己免疫疾患になることもあります。
適切な手術の時期と注意すべきこと
不妊手術は生後6か月以降に行われます。一度発情してしまうと、不妊手術をしても発情行動がわずかに残ることもあり、また乳腺腫瘍の予防のためにも初回発情前に手術をすることが望ましいと考えられています。もし発情してしまっても、なるべく早く手術をすることで乳腺腫瘍の発生リスクは下げられます。
発情中の手術については、獣医師によっても考えが異なりますので、発情中に手術ができるかは事前に確認しておく必要があります。
獣医師がアドバイスする適切な行動と対策

発情期のストレスを軽減するアイデア
発情中は興奮しやすく、ストレスが溜まりやすくなります。そのため、発情中はストレスを発散することが必要になります。
夜中に活発になることが多いため、日中はいつも以上に遊んで運動させましょう。フードを投げて探させたりすると、狩猟本能が満たされてストレスが発散されるかもしれません。
しかし、必要以上に構うと発情行動が強く出ることがあります。いつも以上に甘えてくるときは甘やかさず、普段通りに接しましょう。
専門家への相談が必要なケース
発情中は猫のストレスも強くなりますが、夜鳴きや攻撃、スプレー行動により飼い主さんが悩まされてしまいます。発情行動に耐えられない場合は獣医師に相談しましょう。
また、発情中は陰部を気にして舐めてしまい、皮膚がただれることもあります。多頭飼育の場合は、猫同士のけんかが激しくなり、ケガをしてしまうことも少なくなく、治療が必要になります。発情を止めるには不妊手術のみとなるため、発情を継続させるかどうかをしっかり考えておきましょう。
家族で共有しておきたい注意事項
発情中は出会いを求めるため、脱走のリスクが非常に高くなります。外に興味を持たない猫でも、発情中は外に行きたがるようになります。網戸を突き破ってでも脱走する猫もいるくらいです。そのため、脱走できる場所がないか家族でしっかり確認し、出かける際は家族で確認しながら、猫が出ないように注意するようにしましょう。
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まとめ

発情行動はシーズン中繰り返し起こります。猫も興奮しやすく、ストレスを抱えやすくなりますが、飼い主さんも発情行動に非常に悩まされます。脱走するリスクも高くなるため、交通事故や迷子、猫同士のけんかによるケガや感染の危険もあります。発情期のトラブルは不妊手術で解決するため、自然に任せるべきかはしっかり考える必要があります。
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