猫を飼い始めた方は、猫に首輪をつけたいと考えているかもしれません。首輪をつけることでメリットもありますが、デメリットもあります。今回は、猫の首輪について詳しく解説します。
子猫に首輪は必要?|猫に首輪を着ける目的とは

首輪の役割(身元表示・迷子対策)
完全室内飼育の猫が非常に多いかもしれませんが、何かの拍子の外に出てしまうかもしれません。完全室内飼育の場合、外に出たことでパニックになり、自力で帰れないこともあります。そんな時、首輪に連絡先などが書かれていると、保護した人が連絡してくれることが あります。
首輪自体をファッションとして着けることはあまりおすすめできないため、迷子防止グッズとして取り入れるのがよいでしょう。
完全室内飼いでも必要?
完全室内飼育の場合、外に出たことがないため、猫はまったく外の状況がわかりません。万が一外に出てしまい、少し自宅から離れてしまうと、猫は位置関係を把握できなくなる可能性があります。そのため、どんどん遠くに行ってしまいます。また、車や他の猫や犬に接触した場合、初めての経験でパニックになり、予想もつかない行動を取ってしまいます。そうなると自力で戻れなくなってしまいます。首輪をしていると、保護した人も飼い猫であることがすぐわかり、飼い主さんのもとに戻れる可能性があります。
自然災害などで離れ離れになった場合も役立つ可能性があります。
首輪とマイクロチップの違いと補完的な関係
マイクロチップとは、体内に個体を識別する番号が割り振られており、飼い主の情報を登録することで所有者がわかるようになっています。
令和4年に動物愛護法が改正され、ペットショップで販売されている猫はマイクロチップの装着が義務付けられています。また、保護したり譲渡された猫については努力義務といって、「装着するように努める」とされています。飼い主さんの意識が高まり、保護猫でもマイクロチップを装着する人が増えています。
しかし、マイクロチップは専用の読み取り機がないと番号がわからず、飼い主の情報は登録機関でしかわからないため、すぐに所有者が判明しません。
一方、首輪を装着していると、すぐその場で連絡先がわかるため、保護されたらすぐに戻る可能性があります。しかし、脱走などで走り回っていると、首輪による窒息の危険性や首輪が外れる危険性があり、そうなると飼い主さんのもとに戻れなくなってしまいます。マイクロチップは脱落の恐れがないため、脱走しやすい猫であれば両方つけておくのもよいでしょう。
子猫の首輪はいつから着けるべき?|月齢と慣れさせ方

何ヶ月から着用が可能?
子猫の動きが活発になる生後2、3か月ごろから装着できます。また、首輪にはサイズがあるため、大きすぎる首輪をつけると思わぬ事故につながります。首輪のサイズなどから装着する時期を考えてもよいでしょう。
いきなりではなく、慣らし期間を作る大切さ
猫は首輪というものを知りません。そのため、首輪をつけると非常に嫌がることがあります。初めから無理につけるのではなく、少しずつステップアップすると受け入れやすくなります。無理につけることでストレスがかかりすぎてしまったり、首輪に対する恐怖を植え付けてしまうこともあります。
まず、首輪にいい印象を与えることが必要です。首輪を目の前に置いておき、おやつをあげます。首輪が置いてあってもおやつが食べられるようになったら、おやつを与えながら一瞬首輪をつけ、すぐ外す動作を何度か繰り返します。嫌がる様子がなければつけている時間を徐々に長くし、半日装着でも嫌がらなければそのまま1日中つけておきます。それでも嫌がらなければ装着訓練は完了です。
首輪に慣れないときの工夫と注意点
首輪に慣れないときは、先述した装着訓練をもう一度初めからやり直してみましょう。首輪にいい印象を持てないと猫も受け入れにくいため、首輪の近くでおやつを与える時間を長くしてみるとよいでしょう。また、飼い主さんが首輪の取り扱いに慣れていないと、装着に時間がかかり嫌がってしまうこともあります。首輪をつける前に、首輪の扱いに慣れておくことも必要です。
どうしても嫌がってしまったり、装着するとパニックになってしまう場合は首輪の装着を諦めましょう。無理につけると思わぬ事故につながります。その場合はマイクロチップなど、他の手段で身元を証明するようにしましょう。
子猫の首輪の選び方|素材・サイズ・安全機能をチェック

軽くてやわらかい素材が安心(コットンやリネンなど)
子猫の首は細いため、あまり重い素材のものは首に負担がかかってしまいます。また、素材によっては皮膚にダメージを与えてしまい、脱毛や皮膚炎の原因となってしまいます。そのため、軽くて柔らかい素材のものを選ぶようにしましょう。
成長に合わせてサイズ調整できるものを
子猫はあっという間に成長します。そのため、首輪も定期的に調整しないと、首を圧迫してしまいます。ほとんどの製品がサイズを調整できるものですが、中には人のヘアアクセサリーであるシュシュを首輪にしている人を見かけます。シュシュはサイズが調整できないだけでなく、引っかかって首に負担を与えかねません。必ずサイズが調整できる首輪を使いましょう。首輪の大きさの目安は、指2本が入る大きさです。
セーフティバックル付きで万が一の事故防止
猫用の首輪は、万が一何かに引っかかった場合、首輪が外れるように設計されたバックルのものが主流です。子猫は突発的な行動が多く、危険意識も高くありません。そのため、何かの拍子に首輪が引っかかり、首を吊ってしまう事故が起きることがあります。脱走した場合、パニックになって走り回り、木の枝などにも引っかかってしまいます。そのような事故が起きないように、ある程度の強い力がかかるとバックルが外れるように設計されています。そういった製品を選ぶようにしましょう。シュシュであったり、ベルト式の物はおすすめできません。
首輪ハゲってなに?|子猫の肌にやさしい首輪の選び方

首輪ハゲの原因(摩擦・素材・サイズ不適合)
首輪をつけていると、その部分が脱毛してしまい地肌が見えてしまうことがあります。それを首輪ハゲと呼びます。首輪ハゲは首輪による摩擦や素材への皮膚炎によって起こります。首輪による摩擦は、硬い素材や重い素材でできていたり、首輪がきつくてもこすれて脱毛します。素材への皮膚炎は接触性皮膚炎とも呼びますが、素材に対し炎症を起こしてしまい脱毛が起こります。
ハゲを防ぐために見直したいポイント
首輪ハゲは、首輪による摩擦や炎症によって起こるため、首輪の重さや素材、硬さなどが適しているか見直しましょう。柔らかく、軽い素材のものを選択し、首輪がきつすぎないように調整しましょう。
異変があった場合の対処法と受診の目安
摩擦による脱毛であれば、皮膚に強い炎症は起こりません。素材に対して過敏に反応する接触性皮膚炎の場合、脱毛以外に皮膚の赤みや痒み、湿疹が現れます。その場合、首輪をつけ続けると悪化してしまうため、一旦首輪を外し動物病院を受診しましょう。治療が終了したら、別の素材の首輪を選んだり、首輪をつけない選択肢も必要です。
マイクロチップとの併用でより安心な迷子対策を
マイクロチップだけでは発見率が低い現実
マイクロチップは、個体識別番号が登録されたチップを体内に埋め込みます。そのため、見た目だけでは飼い猫かどうかわかりません。そのため、野良猫と思われて見過ごされる可能性があります。マイクロチップが入っているかどうかは、専用の読み取り機が必要であり、動物病院や警察、愛護センターなど、限られた施設にのみ置かれています。そのため、一般の人がマイクロチップが入っているかどうか判断できません。それに比べ首輪の場合、誰が見ても飼い猫であることがわかるため、保護した人が飼い主を探してくれる確率が高くなります。
首輪+迷子札+マイクロチップでトリプル対策
首輪も迷子札もマイクロチップも、それぞれ1つだけでは万が一何かあったときに効力を発揮してくれないかもしれません。首輪や迷子札は外れてしまったり、時間経過とともに文字が読めなくなったりします。マイクロチップは先述したとおり、飼い猫かわからない、マイクロチップを番号や個人情報を調べられる機関が限られているなどのデメリットもあります。それらをすべてカバーするためにも、なるべく首輪、迷子札、マイクロチップのトリプル対策を取りましょう。
獣医師としておすすめする安全管理のスタイル
迷子にならないために、完全室内飼育が絶対です。脱走しないような対策がまず必要になります。しかし、突然の脱走や災害などで離れ離れになる可能性は少なからずあります。そういった万が一に備えて、首輪、迷子札、マイクロチップを装着することをおすすめします。
まとめ|子猫に優しい首輪デビューを

子猫の月齢に合わせた安全な首輪選びが大切
子猫の首は細く、突発的な行動が多いため、負担がかかったり思わぬ事故につながることがあります。子猫の月齢に合った首輪を選び、成長とともにサイズアップしていくことも必要です。
首輪とマイクロチップを併用して、安心な毎日を
首輪もマイクロチップもそれぞれメリット、デメリットがあります。できれば首輪とマイクロチップの両方を装着することが望ましいでしょう。
見た目だけでなく「猫目線」で首輪を選びましょう
首輪にファッション性を求める飼い主さんもいらっしゃいますが、猫は飾りではありません。首輪の意味をよく考え、猫に負担の少ない物を選ぶように心がけましょう。
この記事のご感想をお寄せください!(コメントを書く)