獣医師が解説:猫が冬になりやすい病気と予防対策

獣医師が解説:猫が冬になりやすい病気と予防対策

今年は暑い夏がかなり続き、11月でもまだ暑く感じる日があります。しかし、寒暖差が激しい日もあり、人も猫も体調を崩しやすくなっているのではないでしょうか。

今回は、猫が冬になりやすい病気について、詳しく解説します。

冬に猫がかかりやすい病気の種類とは?

冬に猫がかかりやすい病気の種類とは?

猫風邪などの呼吸器感染症

人間でも、冬は呼吸器感染症が増えますが、猫も同じように呼吸器感染症が増える傾向にあります。 

いわゆる猫風邪と呼ばれるものですが、「猫伝染性鼻気管炎」や「猫カリシウイルス感染症」、「クラミジア感染症」による呼吸器感染症のことを言います。猫風邪は、ヘルペスウイルスやカリシウイルス、クラミジアといった病原体が原因で発症しますが、体内に病原体が長く残ったり、免疫力が弱いと感染します。冬は寒さにより免疫力が落ちることに加え、冬は乾燥しやすく病原体が体内に侵入しやすくなります。そのため、冬は猫風邪になりやすい季節と言えます。

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低体温症と凍傷のリスク

地球温暖化の影響で、昔より冬は寒くなくなっているかもしれませんが、暖房を入れていないと低体温症になることもあります。特に、体温調節がうまくできない子猫や高齢猫、持病のある猫は注意が必要です。また、外に行く猫の場合、夜の冷え込みで体温が低下してしまうこともあります。

金属類は冬の寒さでかなり冷たくなることがあります。また、降雪地では氷点下にまで冷え込むため、凍傷になることもあります。猫は毛でおおわれていますが、肉球や血流の少ない耳は凍傷になる可能性があります。

関節炎の悪化と寒さの影響

人でも寒い時期に関節が痛む方がいると思いますが、関節炎のある猫も寒い時期に痛む傾向があります。寒くなると筋肉や関節がこわばったり、血流が少なくなります。また、冬は寒さからじっとしていることが多くなります。さらに、冬を越すために栄養を蓄えようとし、食欲が増え体重増加につながります。それにより、関節炎の猫は関節に負担がかかりやすくなり、痛みが強く出ることがあります。

なぜ冬は病気になりやすい?猫の体と冬の関係

なぜ冬は病気になりやすい?猫の体と冬の関係

免疫力低下と寒さの関係

猫は我々人間と同じく寒くなると体温が低くなりやすく、ストレスにもなるため、免疫を担う細胞の活性が落ちます。そのため、普段は感染しないような病原体にも負けてしまいます。また、冬は乾燥しやすいため、鼻や気管支の粘膜も乾燥してしまい、病原体が侵入しやすくなるのも、冬に風邪を引きやすい一因となります。

冷えによる血行不良とその影響

我々人間も猫も恒温動物と言われ、体温が一定に保たれるように調節されています。寒くなると、皮膚や筋肉など表面に近い血管が収縮し、体の熱が奪われないように調整されます。それにより、耳や肉球などは血行が悪くなることがあり、極端に寒い環境では凍傷になることもあります。また、筋肉の血行も悪くなるため、筋肉や関節の動きが悪くなります。関節炎がある猫は痛みが出やすくなります。

冬場に多い泌尿器疾患

冬場は猫の泌尿器疾患が増える季節です。冬場の猫はあまり水を飲みたがりません。飲水量が減りやすくなります。また、トイレに行くのを控えてしまいます。冬は動かないためにカロリーオーバーになりやすく、肥満になる季節でもあります。それにより、尿路結石や膀胱炎になりやすくなります。冬場の寒さがストレスとなり、膀胱で炎症が起こりやすくもなります。一度でも膀胱炎や結石症になったことがあると、再発する可能性が高いです。

慢性腎臓病も冬場に悪化することがあります。泌尿器疾患は一刻を争うことが多く、少しでもおかしいと思ったら動物病院を受診するようにしましょう。

冬の病気予防のために家庭でできる工夫

冬の病気予防のために家庭でできる工夫

暖かい寝床や毛布の提供

猫は暖かい布団で寝るイメージがあると思いますが、ふかふかした場所を好んで寝ます。寝る場所は自分で探して寝るため、飼い主さんが寝てほしいところで寝ないかもしれません。しかし、柔らかい布団などを好んで寝る傾向があるため、冬は猫用の布団や毛布を用意してあげるのもよいでしょう。布団の中に潜らない猫も多いため、潜らなくても無理に上からかけなくてもよいです。あまり寒そうであれば、暖房をかけるなどして暖めてあげましょう。

猫は飼い主さんのにおいが大好きなので、毛布でなくても飼い主さんが着古した服でも喜んでくれますよ。

栄養バランスの取れた食事と水分補給

冬の猫の体は、冬を乗り越えるために脂肪を蓄えて太ります。冬を乗り越えるためには、カロリーがかなり必要です。逆を言えば、しっかりカロリーが取れないと痩せてしまい、体調を崩してしまいます。カロリーが増えすぎると太ってしまい、肥満もまた病気の原因になります。猫の総合栄養食を与えるようにし、与えすぎたり極端に減らしすぎたりしないようにしましょう。猫のフードの量は、猫の体型から目安の量を計算します。まずはフードに書いてある給餌量を目安にし、体型に変化があれば調整しましょう。動物病院ではフードの量の相談にも乗っていますので、一度相談するのもよいでしょう。

冬場の水分補給も重要です。冬場は乾燥しているため、体内から水分が逃げ出してしまいます。そのため、こまめに水分補給する必要があります。しかし、猫は寒いと水を飲まなくなるため、冬場の飲水量は減ってしまいます。飲水量が減ると、様々な泌尿器疾患になりやすくなります。水飲み場は窓際など冷え込みやすいところを避けて、何か所かに分けて設置しましょう。飲み水の器を陶器やガラスに変えてみたりするのもよいでしょう。それでも飲まない場合は、猫の経口補水液を使用したり、飲み水にウェット缶のスープを混ぜてみましょう。ドライフードからウェットフードに変えるだけでも、水分摂取量が増えます。

猫に快適な室温

冬場の猫にとって快適な室温は、20~23℃くらいです。気温差が5℃以内の方が、体調を崩しにくいと思います。寒い日は暖房をつける方がよいと思いますが、あまり設定温度を上げすぎないように注意しましょう。床暖房をつけている方は、猫のいるスペースが暑くなっていることもあります。猫が暑さから逃げられるような場所も用意しておきましょう。

猫に大切なのは温度だけでなく、湿度も重要です。冬は乾燥しやすいので、加湿器などを設置して、湿度が40~60%程度になるようにしましょう。

猫が冬に元気で過ごすための健康チェック項目

猫が冬に元気で過ごすための健康チェック項目

毎日の行動観察で異変に早く気づく

冬場に多い猫の病気は、呼吸器疾患や泌尿器疾患、関節疾患などがあります。呼吸器疾患は咳やくしゃみが出るため、早く気づくことができます。泌尿器疾患は、毎日のトイレ回数や量を把握できていれば、大事に至る前に気づくことができますが、多頭飼育をしていたり、外にトイレをしに行く場合、おしっこトラブルに気づけないこともあり、ひどくなって気づくことも少なくありません。普段のトイレの回数を把握しておくことは重要です。また、猫の尿の回数などを記録するデバイスを使用するのもよいでしょう。

関節疾患はいつもより動かなくなりますが、「冬場だから動かないのかも」と認識されてしまうこともあります。ご飯を食べに行くときの歩き方が今までと違わないか観察しましょう。また、体を触って嫌がる箇所があれば、関節炎があって動かないかもしれません。

定期的な健康診断で病気の早期発見

健康診断は病気の早期発見につながります。定期的に健康診断を受けておくと、正常な状態を知ることができ、異常があれば悪化する前に治療が行えます。もし冬場に悪化しやすい病気になっているのであれば、冬場に備えることもできます。ひどくなる前に診断を受け、冬に備えましょう。

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獣医師がすすめる冬場の健康管理と注意点

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病気が疑われる場合の早期受診

冬は外出を控える方もいるかもしれません。実際、冬の動物病院受診率は低下する傾向があります。そのため、ひどくなるまで様子を見てしまう飼い主さんも少なくありません。動物病院を受診したときには、すでに手の施しようがない状態ということもよくあります。少しでもおかしいと思ったら、なるべく早く受診するようにしましょう。

また、冬は年末年始が休診になる病院がほとんどです。夜間や休日診察を行っている病院を確保しておく必要もあります。

関節のケアと快適な室内環境作り

関節炎のある猫は、冬に痛みが強くなることが考えられます。そのため、関節に優しい環境を整えてあげましょう。滑りやすいフローリングはマットやカーペットで滑らないようにし、段差はスロープなどを設置して関節に負担がかからないようにしましょう。

関節痛がある場合、痛みで動かなくなり、太りやすくなってさらに関節炎を悪化させてしまいます。動物病院で鎮痛剤やサプリメントを処方してもらい、痛みから解放してあげましょう。

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まとめ

まとめ

冬は呼吸器感染症や泌尿器疾患、関節炎が起きやすく悪化しやすい時期です。元気に冬を乗り越えるためにも、定期的な健康診断を受けて健康を維持しましょう。

すでに病気がある子は、体調が急激に変化する可能性もあるため、ストレスの少ない生活を送れるように配慮してあげましょう。


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