高齢猫にワクチンは必要?獣医師が推奨する接種の判断基準と注意点

高齢猫にワクチンは必要?獣医師が推奨する接種の判断基準と注意点

皆さんは愛猫に、定期的なワクチン接種をされていることと思います。しかし、「高齢だから接種しなくてもいいよね」と思う飼い主さんも少なからずいらっしゃいます。今回は高齢猫に対するワクチンについて解説します。

高齢猫にワクチンは必要?年齢による免疫の変化

高齢猫にワクチンは必要?年齢による免疫の変化

猫の免疫システムは加齢とともにどう変化する?

猫は7歳を超えるとシニア期と呼ばれています。シニア期に入ると体の変化が起こりやすくなりますが、免疫力の低下もその一つです。

免疫とは、病原体による感染症にならないように、白血球という免疫をつかさどる細胞が病原体を排除・攻撃をすることです。高齢になってくると白血球の機能が落ちてくるため、免疫力が低下します。がんはシニア期に発生が多く見られますが、それは加齢による免疫機能の低下により、腫瘍細胞を発見・破壊できにくくなるからと考えられています。

高齢猫がかかりやすい感染症とは?

猫風邪と呼ばれる、猫ヘルペスウイルス感染症(猫伝染性鼻気管炎)や猫カリシウイルス感染症は、高齢猫に限らずどの年齢の猫でも感染します。しかも、鼻水や咳などがしつこく出るため、体力を消耗してしまうことがあります。

ワクチン接種が推奨されるケースと必要性の判断

ワクチン接種は、世界小動物獣医師会の「犬と猫のワクチネーションプログラム」に基づいて接種している動物病院が多いと思います。成猫以上の猫の接種はワクチンの種類や飼育環境、ペットホテルの利用、外に出るかなどによっても変わりますが、3年ごとに接種することが推奨されています。しかし、ペットホテルの利用があったり、2頭以上の多頭飼育している場合は年に1回の接種が推奨されています。

高齢猫であっても基本的には同じ考えに基づいて接種されます。ワクチンは基本的には病気がなく健康な猫に接種するため、体調が明らかに悪かったり治療中である場合は接種を延期することがあります。その判断は、診察をした獣医師によっても変わります。

高齢猫に推奨されるワクチンの種類と接種スケジュール

高齢猫に推奨されるワクチンの種類と接種スケジュール

猫用ワクチンの基本

ワクチンは、「犬と猫のワクチネーションプログラム」で「コアワクチン」「ノンコアワクチン」に分けられています。

コアワクチンは世界的に致死率が高く、伝染性が高い病気で、すべての猫に接種が推奨されています。猫の3種混合ワクチンがコアワクチンで、「猫汎白血球減少症」「猫ヘルペスウイルスⅠ型」「猫カリシウイルス感染症」がこれに含まれています。

ノンコアワクチンは飼育環境など、猫の状況に応じて接種を検討するワクチンです。「猫白血病ウイルス」「猫クラミジア感染症」のワクチンがノンコアワクチンになります。

高齢猫に特に推奨されるワクチン

高齢猫でもワクチン接種は必要です。高齢猫は飼育環境にもよりますが、コアワクチンである3種混合ワクチンは接種しましょう。必要に応じて4種ワクチンや5種ワクチンを検討します。

ワクチン接種の適切な頻度と獣医師の推奨する接種間隔

成猫以上の猫のワクチン接種は、飼育環境や多頭飼育、外に出るか、ペットホテルに預けるかなどで変わります。特に当てはまらない場合は、コアワクチンを3年毎、ノンコアワクチンであれば1年毎に追加接種します。ペットホテルに預けたり、多頭飼育だったりする場合は、コアワクチンを1年毎に追加接種することが推奨されています。

高齢猫のワクチン接種時のリスクと注意点

高齢猫のワクチン接種時のリスクと注意点

ワクチン接種による副作用やアレルギー反応

ワクチン接種をしたあと、嘔吐や発熱、痒みなどのアレルギー反応が起こることがあります。特に注意したいのが、ワクチン接種をしてから30分以内に起こることが多いアナフィラキシーショックです。アナフィラキシーショックは急激に起こる反応で、適切に対応しないと命に関わることもあります。嘔吐やよだれを垂らす、口の粘膜が白くなる、倒れるなどの症状が急に起こります。そのため、ワクチンを打ってから30分は病院内で待つようにしましょう。

それ以外にもアレルギー反応が起こることがあり、接種してから数時間後に嘔吐や発熱、体の痒みなどが出ることがあります。これらの反応は数日でよくなります。ワクチンによるアレルギー反応はワクチンを打った回数に関係ないため、前はよくても今回アレルギー反応が出ることがあります。

その他、接種した部位が痛んだり、腫れたりすることがありますが、通常一時的なものですぐ回復します。また、非常に稀ではありますがワクチンを接種した部位の肉腫というがんができる場合があり(ワクチン接種部位肉腫)、切除が必要になります。再発しやすいがんのため、切除しやすい足に接種します。

 【関連記事】

体調不良時や持病がある猫への対応方法

ワクチン接種は、基本的に健康に問題がない猫に接種します。そのため、体調不良時や持病がある場合はワクチン接種を見送ることがあります。それは獣医師が判断するため、決して飼い主さんが「接種しない」判断をしないようにしてください。体調が悪い場合、悪化させる原因になりうるため、必ずワクチン接種の前に相談しましょう。

接種前後に飼い主が注意すべきポイント

ワクチン接種前は、体調がいつもと変わりないかを確認しておく必要があります。

特に注意が必要なのはワクチン接種後であり、接種してから30分以内に起こるアナフィラキシーショックは命に関わることがあります。30分の間は病院内で待つようにし、嘔吐やぐったりする、口の粘膜が白くなるなどのショック症状が起きてないかを確認しましょう。

自宅に帰ってからも注意が必要です。同居猫と激しく遊ばせたりすると、アレルギー反応が強く出ることもあります。なるべく安静に過ごしましょう。ワクチンを打ってしばらくは免疫反応が起こるため、体調を崩すことがあります。また、ワクチンの中には病原体自体を弱めているものを使用していることがあるため、その病気の症状が出ることがあります。ワクチン接種後はいつも以上に体調変化に注意しましょう。シャンプーなどは接種後1、2週間は行わないようにしましょう。

高齢猫の健康を守るためにワクチン以外にできること

高齢猫の健康を守るためにワクチン以外にできること

定期的な健康診断と早期発見の重要性

高齢期に入ると、猫も様々な病気にかかりやすくなります。免疫力も低下するため、猫風邪などの感染症の症状が強く出ることがあります。ワクチンは、ワクチンに含まれている病気にかかりにくくしたり、かかっても症状を抑えるための予防行為です。ワクチン自体が病気を治すわけではありません。そのため、早期発見・早期治療が重要になります。また、定期的に健康診断を受けることで、今の健康状態を把握することができます。7歳以上の猫は年2回の健康診断をお勧めします。

 【関連記事】

食事管理と免疫力を高める生活習慣

高齢猫が健康的な生活を送るためには、ライフステージや体調に合わせた食事が重要です。高齢になると活動量や代謝が落ちるため太りやすくなったり、消化機能が落ちることで逆に痩せてしまうことがあります。適正な体重を維持すると、免疫機能を始め健康を維持することができます。

また、ストレスは免疫機能を低下させることがわかっています。なるべくストレスがかからないように配慮しましょう。

ストレスを減らすための環境づくり

前述しましたが、ストレスは免疫機能を低下させます。特に高齢猫は、環境変化に弱くなっています。引っ越し、家族が増える(減る)、部屋の模様替えをする、工事などで大きな音がするなどがストレスの原因になります。そのようなストレスを減らす対策が必要です。猫が高齢になったら、なるべく環境を変えないようにしましょう。

まとめ

まとめ

高齢猫は免疫低下が起こり、感染症などにかかりやすくなります。「もう高齢だからワクチンを打たない」と判断せず、ワクチンは高齢になっても接種するようにしましょう。体調に不安がある場合は、ワクチン接種の前に獣医師に相談するようにしましょう。


この記事のご感想をお寄せください!(コメントを書く)

このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。


RuffRuff Apps RuffRuff Apps by Tsun
RuffRuff App RuffRuff Apps by Tsun
ハゲにくい猫首輪に替えませんか?
獣医師が推奨

ハゲにくい猫首輪に替えませんか?

ぽぽねこ公式オンラインショップ
詳しく見る

あわせて読みたい記事

猫が首輪ハゲになる理由とは?

体に合わない首輪を着けることで、皮膚が炎症を起こしたり、首の毛が猫首輪のラインに沿ってハゲてしまう子は少なくありません。