スコティッシュ・フォールドは非常に人気のある猫種で、猫種ランキングの第1位をキープしています。スコティッシュ・フォールドは関節や骨の疾患にかかりやすいことが知られています。
今回は、スコティッシュ・フォールドがかかりやすい病気について解説します。
垂れ耳が特徴のスコティッシュ・フォールドの歴史とは

スコティッシュ・フォールドは1960年代のスコットランドで生まれた、スージーという1匹の垂れ耳の雌猫が由来とされています。その猫が産んだ子猫に、垂れ耳の猫が複数頭確認され、計画的に繁殖されるようになりました。その後、アメリカ合衆国にてブリティッシュ・ショートヘアーやアメリカン・ショートヘアーとの交配が行われ、1994年に「スコティッシュ・フォールド」という猫種として公認されました。猫の歴史の中では比較的新しい猫種になります。
スージーの垂れ耳は遺伝子の突然変異によって起きた、いわゆる「奇形」に当たります。垂れ耳の遺伝子は子猫にも遺伝しましたが、立ち耳の猫も生まれています。垂れ耳のスコティッシュは関節に深刻な障害が出ることがわかっています。特に、垂れ耳同士を交配すると、深刻な関節障害を持った子猫が生まれるため、現在では垂れ耳同士の交配は禁止されており、必ず両親のどちらかが立ち耳の猫が交配に用いられています。しかし、それでも垂れ耳のスコティッシュの関節障害は非常に多い疾患となっています。
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スコティッシュ・フォールドに多い病気と原因

スコティッシュ・フォールドに多い疾患は、骨軟骨異形成症、多発性嚢胞腎、肥大型心筋症、外耳炎などがあります。それぞれの病気について解説します。
骨軟骨異形成症(こつなんこついけいせいしょう)
垂れ耳のスコティッシュ・フォールドに特徴的な遺伝性の関節疾患です。前肢や後肢の関節などに、骨瘤と呼ばれるこぶが形成され、強い痛みを伴います。そのため、ジャンプできない、動かない、しっぽの付け根が硬直するなどの症状が出ます。診断はレントゲン写真、CT、MRIなどの画像診断にて行います。
原因は垂れ耳に関連する遺伝子によるものであるため、現在では垂れ耳同士の交配は禁止とされています。遺伝子による疾患のため、予防はできません。
骨軟骨異形成症の有効な治療法はなく、鎮痛剤で痛みをコントロールする対症療法になります。また、放射線療法による治療も行われていますが、治療時に麻酔が必ず必要になり、治療費が非常に高額になります。放射線療法で必ず治るものでもありません。
垂れ耳のスコティッシュは非常にかわいいですが、骨軟骨異形成症になる可能性があることを頭に入れておく必要があるでしょう。
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多発性嚢胞腎(せいたはつせいのうほうじん)
腎臓に嚢胞という袋がいくつもできてしまう腎障害です。多発性嚢胞腎は遺伝性疾患で、スコティッシュによく見られる傾向があります。通常、腎疾患は高齢期に発症しやすいですが、多発性嚢胞腎のある猫では若齢から腎疾患を発症することがあります。多飲多尿、薄い尿、嘔吐、下痢、食欲不振などが見られます。無症状でも健康診断時に偶然見つかることもあります。
こちらも遺伝性疾患のため、予防法はありません。常に水が飲める状態にし、人間の食事など腎臓にダメージを与える食事はやめましょう。また、定期的に血液検査や超音波検査などで腎臓の評価をすることが大切です。
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肥大型心筋症
肥大型心筋症は、猫の心臓の筋肉が分厚くなり、動きが制限されてしまう心疾患です。肥大型心筋症はアメリカン・ショートヘアーで起きやすいとされており、スコティッシュ・フォールドと交配された経緯から、肥大型心筋症になりやすい猫種と考えられています。
肥大型心筋症は心臓の動きが悪くなるため、開口呼吸、呼吸困難、胸水、腹水などの症状が現れます。疲れやすいために、すぐに遊びをやめてしまうこともあります。また、肥大型心筋症の猫には心臓の中に血栓ができやすくなるため、血栓が後肢の動脈に詰まると、足の冷感やチアノーゼ、麻痺、強い痛みなどの症状が現れます。レントゲン検査、超音波検査、血液検査などから診断します。
肥大型心筋症の予防法はありません。しかし、猫に必要なタウリンという栄養素が欠乏すると、肥大型心筋症になることがわかっています。キャットフードにはタウリンが十分に含まれているので、キャットフードを与えるようにしましょう。
肥大型心筋症は、症状が出たときには状態が悪くなっていることがあります。スコティッシュの場合、定期的に健診などで心臓の評価をすることが大切です。
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外耳炎
垂れ耳のスコティッシュの場合、耳の通気性が悪いことが多く、外耳炎になりやすい猫種です。耳の中に耳垢が多く見られたり、よく首を振る、足で耳を掻くしぐさが見られた場合、外耳炎になっている可能性があります。外耳炎の治療法は、抗菌薬やステロイドの入った点耳薬の点耳が必要です。動物病院で洗浄を行うこともあります。
外耳炎は日々のお手入れである程度の予防が可能です。濡らしたコットンなどで、優しく耳を拭いてあげましょう。綿棒を使った耳掃除は、耳の中を傷つけるだけでなく、耳垢を奥に押し込んでしまうため、絶対にやらないようにしましょう。耳掃除のやり方がわからなければ、動物病院でやってもらっても良いでしょう。
また、外耳炎の中には、ミミヒゼンダニによるものもあります。ダニ駆除剤の中にはミミヒゼンダニを駆除できるものもあるため、動物病院で定期的に駆除することも大切です。
まとめ

スコティッシュ・フォールドは垂れ耳に丸い顔で、とてもかわいらしい猫種です。しかし、関節や腎臓、心臓の病気にかかりやすい猫種でもあります。これらの病気は治ることはなく、生涯投薬などが必要になるため、医療費も高額になることが予想されます。スコティッシュを飼っているのであれば、これらの病気への備えが必要ではないでしょうか。
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