猫の死因ランキング|獣医師が解説する病気の予防法と寿命を延ばすためのケア

猫の死因ランキング|獣医師が解説する病気の予防法と寿命を延ばすためのケア

近年、獣医療の発達や猫の飼育環境の向上により、猫の平均寿命が15歳ほどになっています。しかし、大好きな猫といずれはお別れしなければなりません。猫の死因は病気によるものが多いため、知っておくと寿命を延ばすことができるかもしれません。

今回は猫の死因ランキングについて解説します。

猫の死因ランキング|日本で多い病気とは?

猫の死因ランキング|日本で多い病気とは?

猫の死因ランキング

猫の死因について、2020年に調査されたデータがあります。この研究は、全国40病院から抽出されたデータをもとに調査されています。

トップ3を発表します。

  1. 泌尿器系の疾患(29.8%)
  2. 腫瘍(20.3%)
  3. 循環器系の疾患(11.6%)

猫に多い泌尿器系疾患ですが、明らかな病名までは記載されていませんでしたが、高齢猫に多い慢性腎臓病によるものと推測されます。

 【出典】

日獣会誌 75, e128~e133(2022)

75_e128:動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命と死亡原因分析

年齢別に見た死因の違い(子猫・成猫・高齢猫)

前述の研究の死亡年齢をもとに、年齢別の死因を紹介します。

子猫~まだ若い成猫の場合は感染症や中毒・外的損傷が多く、成猫では腫瘍や呼吸器系の疾患や血液・免疫系の疾患、高齢猫では死因のトップ3と同じ、泌尿器・腫瘍・循環器疾患が多くなります。

室内飼いと外飼いでのリスクの違い

完全室内飼育の猫の場合の平均寿命は約15歳に対し、外に出る猫は約13歳と2歳の差が開いています。外に出る場合、交通事故や他の猫との喧嘩による外傷、感染症などのリスクがあるため、平均寿命に差が出ていると考えられています。

猫の死因第1位:猫の慢性腎不全とは?症状と対策

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なぜ腎臓病が猫に多いのか?

猫の慢性腎臓病の原因はいろいろありますが、加齢や遺伝、腎臓への血流の変化(高血圧、低血圧)、中毒、感染症、尿路結石などが原因と考えられています。

猫の祖先は砂漠で生活していたため、水分をあまり摂らなくても生活できるようになっていました。現代の猫でも水分をあまり摂らず、腎臓の負担が増えていると考えられています。それにより高齢になると猫の腎臓が障害されていくと考えられています。また、ペルシャ猫やアメリカンショートヘアーなどの特定の猫種では、多発性嚢胞腎と呼ばれる遺伝性疾患により、若いうちから腎臓病を発症することもあります。

数年前にAIMという物質が猫の腎臓病に関与しているのではないかと発表されました。AIMは腎臓の老廃物の除去を促す働きがあり、猫はこの物質が働かないために慢性腎臓病が多いとされています。

猫の慢性腎臓病の症状

慢性腎臓病は徐々に進行していき、腎臓の機能が十分に働かなくなると症状が現れます。そのため、初期でも症状はあまりはっきりと気づかれないため、症状が出たときにはかなり進行していることも少なくありません。

猫の慢性腎臓病の症状は、多飲多尿食欲不振嘔吐脱水元気消失口臭貧血などが現れます。

腎臓の機能が低下すると体に必要な水分を腎臓で濃縮できず、そのまま体外に排出されてしまうため薄い尿をたくさんするようになり、その分脱水となるためたくさん水を飲むようになります。また、毒素が尿に排出できなくなるため食欲がなくなったり嘔吐します。口腔内の環境が変わるために口臭や口内炎が起こるようにもなります。また、腎臓で作られるエリスロポエチンと呼ばれる、赤血球を作るホルモンが低下することにより貧血が起こります。

進行を遅らせるため対処法

残念ながら慢性腎臓病は治らない病気です。しかし、適切な治療を行うことで進行を遅らせることはできます。進行を遅らせるためには、食事療法、薬物療法、皮下点滴などを行います。

腎臓病に対する療法食があります。腎臓の負担を軽減するためにリンやナトリウムなどが制限されています。腎臓病の病期(ステージ)によっても適切なフードが異なります。

腎臓病になると血圧が上昇し、それによりさらに腎臓がダメージを受ける悪循環になります。そのため、血圧を下げる薬を使用します。また、食欲が低下するのを防ぐため食欲増進剤を使うことがあります。貧血が出ている場合、エリスロポエチン製剤を使用します。その他に、老廃物であるリンや毒素を吸着するような製剤、乳酸菌サプリ、抗酸化成分の入ったサプリなどがあります。

腎臓病になると自宅で皮下点滴をするイメージがあるかもしれません。腎臓病により脱水がひどい場合、皮下点滴を定期的に行う必要が出てきます。

そして、初期の段階で発見できるように定期的に健康診断を受けることが大切です。慢性腎臓病は7歳以上の猫で発症が増えてきます。そのため、6歳までは年に1回、7歳以上では年に2回の健康診断を受けることで早期発見につながります。

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猫に多いがんの種類

猫に発生するがんは様々ですが、特に多い5つを紹介します。

リンパ腫

お腹の中にできるがんの中で最も多いがんです。血液中にあるリンパ球ががん化します。皮膚、リンパ節、内臓など様々な場所で発生しますが、腸管にできる消化器型リンパ腫が特に多く見られます。

乳腺ガン

乳腺にできるがんです。避妊手術を受けておらず、発情を繰り返すことで発病のリスクが上がります。猫の乳腺のしこりは約9割が悪性腫瘍で、発見時にはすでに転移が始まっていることが多く見られます。

肥満細胞腫

血液中にある肥満細胞ががん化したものです。内臓に発生する内臓型と、皮膚に発生する皮膚型があります。皮膚型はあまり悪い挙動をしませんが、かゆみなどが出ます。内臓型の場合は、内臓に腫瘍ができ症状が現れます。

扁平上皮癌

皮膚の扁平上皮という細胞ががん化してできたものです。猫の顔面に多く発生します。毛の薄い部分に発生しやすく、白毛の猫に多く発生する傾向にあります。

線維肉腫

皮膚にある線維芽細胞ががん化したものです。四肢や腹部、顔などでできやすい傾向にあります。手術が第1選択ですが、再発しやすいのが特徴です。ワクチンとの関連も指摘されていますが、明らかな原因はわかっていません。

早期発見のための健康チェック方法

がんの早期発見にはよく観察することが大切です。食事量や飲水量、尿や便の量や色や形、元気があるか、吐いていないか、体を触って膨らんでいるところがないか、痩せてきていないか、お腹が膨らんでいないか、痛がるところがないかなどを確認します。少しでも異変を感じた場合は、すぐに動物病院に相談しましょう。

がんは7歳以上の高齢猫に発生しやすくなります。6歳までは年に1回、7歳以上は年に2回の健康診断を受けることも大切です。

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猫の心臓病で最も多い肥大型心筋症とは?

猫の心臓病の中で最も多いのが肥大型心筋症です。心臓の筋肉(心筋)が異常に大きくなる病気で、左心室に最も多く起こります。心筋が大きくなることで、十分に血液を拍出できなくなり、肺水腫により呼吸困難が来たり、胸水や腹水がたまったりします。心臓内に血栓ができることも多く、主に後ろ足に血栓が詰まる血栓塞栓症で足が冷たく動かなくなることがあります。肥大型心筋症は症状がまったくない場合もあり、偶然発見されるケースも少なくありません。

猫の肥大型心筋症の原因ははっきりと明らかになっていませんが、メインクーンやノルウェージャン・フォレストキャットと言った大型の猫種に発症しやすい傾向があるため、遺伝が関与していると考えられています。これらの猫種では2歳程度の若齢で発症することがありますが、通常は高齢の猫に見られます。

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無症状でも要注意!定期検診の重要性

猫の肥大型心筋症は必ずしも症状があるわけでなく、15%の猫が症状のない無症候性心筋症だったという報告もあります。そして、無症候性の肥大型心筋症の恐ろしいところは、突然死の原因にもなることです。そのため、症状がないから大丈夫と思わず、定期的に健康診断や心臓の検査を受けることが重要になります。

食事での体重管理がポイント

肥大型心筋症には予防法はありません。また、肥大型心筋症は一生涯治療が必要となり、治療中に急死することも少なくありません。治療には投薬だけでなく、体重コントロールが重要になります。肥満体型では心臓に負荷がかかるため、体重を適正に保つ必要があります。心筋症の猫に激しい運動は負荷がかかるため、食事量を調整して体重をコントロールしましょう。

猫の死因を減らすために飼い主ができること

定期健康診断を受けるタイミング

どんなに健康な猫でも健康診断は必要です。猫は7歳以上をシニアと考え、腎臓病、腫瘍、心筋症、それ以外にも様々な疾患がシニア期に発症することが多い傾向にあります。そのため、6歳までは年1回、7歳以上は年2回の健康診断を受けることをお勧めします。

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食生活と運動習慣の見直し

肥満と疾患の関係は、様々な疾患で指摘されています。例えば糖尿病やがんは肥満と関係があるという研究結果も出ています。また、肥満により体に負荷がかかりやすくなり、病気を悪化させてしまう可能性もあります。そのため、猫を肥満体型にさせないためにも、食事コントロールで体重管理しましょう。また、適度な運動はストレス解消になり、肥満を予防することができます。すでに治療中の猫の運動は病気によっては悪化させることがありますが、現在健康と言われている猫は適度な運動も大切です。

ストレスを減らす環境づくり

ストレスが多いと免疫低下につながり、様々な病気の引き金になります。猫のストレスになりうるものは、多頭飼育、生活環境、感染症などがあげられます。多頭飼育の場合、猫同士の距離が近くなりすぎるため、ストレスの度合いが高くなります。また多頭飼育では、トイレや食事スペース、水飲み場を十分に確保したり、隠れる場所などを確保しないと強いストレスになってしまいます。

ノミやダニなどの外部寄生虫症や感染症は猫の免疫力を低下させるだけでなく、ストレスの原因となります。感染症が腫瘍の原因の一つにもなりうるものもあり、定期的な予防が必要です。特に外出する猫は、感染症にかかる可能性が高いため、完全室内飼育をすることが重要です。

まとめ

まとめ

猫の死因は、慢性腎臓病、がん、肥大型心筋症がトップ3に入ります。どれも予防することが難しい病気ですが、定期的な健康診断で早期発見をすることは可能です。症状がないから様子を見るのではなく、症状がなくても6歳までは年に1回、7歳以上は年に2回の健康診断を受けましょう。


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