女の子の猫を迎えたら考えるべき「避妊手術」について獣医師が詳しく解説

女の子の猫を迎えたら考えるべき「避妊手術」について獣医師が詳しく解説

猫の避妊手術について聞いたことはありますか?

猫をお迎えして初めて動物病院にかかると、必ず避妊手術についての説明が行われていると思います。近年、猫の避妊手術の認知度が上がり、手術に抵抗を示す方は非常に少なくなりました。しかし、筆者が動物病院で診療をしていると、「健康な体を手術したくない」「外に出さないから妊娠しない」「自然に逆らうのはよくない」というご意見も少なくありません。

今回は、避妊手術を行う重要な意味についてご説明いたします。

猫の避妊手術とは

猫の避妊手術とは

避妊手術は、メス猫が妊娠しないために子宮と卵巣、もしくは卵巣のみを手術で摘出します。手術は全身麻酔下で、お腹を3cmほど切開します。動物病院によっては腹腔鏡で行っているところもあります。通常、動物病院では生後6か月以降に行われますが、ノラ猫の場合はもう少し早い時期でも手術することがあります。

猫は交尾排卵動物といって、交尾をすると排卵が起こるため、ほぼ確実に妊娠します。猫は春先と秋の年に2回の発情シーズンがありますが、室内飼育の場合はそれ以上の可能性もあります。避妊していないメス猫が妊娠したら一体どうなるのでしょうか?

猫の妊娠期間は約60日です。交尾して約2か月後には子猫が誕生します。一度に生まれてくる子猫の数は1~8頭ほどですが、多いと10頭以上生まれてくることがあります。

環境省の計算によると、1頭のメス猫が子猫を産むと、1年後には20頭以上、3年後には2000頭以上も猫が増えるとされています。避妊手術をせず、自由に妊娠ができる環境にあれば、どんどん増えていってしまいます。

猫の避妊手術のメリット

猫の避妊手術のメリット

避妊手術をすると様々なメリットがあります。メリットについてそれぞれ説明します。

望まない妊娠をしない

先ほど述べましたが、猫は交尾排卵動物のため妊娠が成立しやすい動物です。室内で飼っていても、外に出てしまうことはないとは言えません。特に発情期は興奮しやすいため、外に出たい衝動にかられます。もし外に出てしまい交尾をしていたら、2か月後には子猫が誕生します。

飼い主さんが絶対に外に出さないように注意していても、自然災害などで逃げ出してしまう可能性もあります。再会できた時には妊娠している状態かもしれません。

避妊手術をしていれば、望まない妊娠をしません。

発情特有の行動が起きない

発情すると行動の変化が起こります。発情した猫は赤ちゃんが泣くような独特な声で、大きく鳴くようになります。また、出会いを求めて外に出たがります

発情した猫はお尻を高く上げて足踏みをしたり、ゴロゴロと転がることが増えます。

食欲が一時的になくなる猫もいます。

これらの行動は、猫にとってもストレスになるだけでなく、見ている飼い主さんにも非常にストレスになります。

寿命が延びる

避妊手術の最大のメリットといっても過言ではありません。過去の研究結果では、避妊手術した猫としていない猫の寿命を比較すると、避妊手術をした猫の方が2倍程度寿命が延長したと報告されています。寿命が延びる理由として、発情によるストレスの減少、発情が原因で起きる疾患の減少によると考えられています。実は、発情はものすごいストレスなのです。

乳腺や生殖器の病気にならない

避妊手術を行うと、乳腺腫瘍や子宮・卵巣の病気を予防することができます。特に猫の乳腺腫瘍は9割が悪性であり、しこりに気づいた時にはすでに転移していることも少なくありません。乳腺腫瘍の発生は性ホルモンが影響しているため、生後6か月以内に手術をすると9割ほど発生リスクが低下し、生後1歳以内では86%の予防効果が確認されています。

また、子宮蓄膿症や卵巣腫瘍などの子宮や卵巣の疾患は、手術で子宮・卵巣を摘出するため、予防することができます。

猫の避妊手術のデメリット

避妊手術のデメリット

避妊手術は、メリットだけではありません。メリットがあればデメリットもあります。

二度と子供を望めない

避妊手術を行うと、そのあとに子猫を望んでも叶いません。もし子猫を望むのであれば、しっかりと家族で話し合いましょう。

太りやすくなる

避妊手術をした猫は、カロリーの代謝が落ちるために太りやすくなります。手術後に今までのフードの種類や量のままでいると、どんどん太っていってしまいます。そのため、避妊手術後用のフードや減量用のフードへの切り替え、給餌量の再計算が必要です。避妊手術後の体重増加は、飼い主さんがしっかり管理することで防ぐことができます。

手術や麻酔のリスク

全身麻酔をかけて、開腹手術を行うため、やはり体へのリスクは避けられません。手術を行った猫のうち、手術中または術後になくなるケースはゼロではありません。そのようなことがないように、手術前には必ず飼い主さんへのリスク説明を行います。また、血液検査やレントゲン検査などを行い、少しでも異常があれば治療を優先し、回復を待ちます。また、手術中に点滴の投与や抗生剤などの薬剤を使用し、術後合併症(感染、出血)が起きないように対応します。しかし、どれだけ事前に対策を取っても亡くなることがあります。

猫の避妊手術の費用

猫の避妊手術の費用

避妊手術の費用は動物病院によっても異なります。目安としては、10,000~40,000円ほどになります。費用の中には、手術代以外に検査費や麻酔費用、入院費も含まれることがあります。

避妊手術は通常日帰りで行われることが多いですが、動物病院によっては1泊入院で経過を見る場合もあります。また、出血が多い、麻酔からの覚めが悪いなど、獣医師が入院を必要と判断した場合も入院となります。

猫が避妊手術を行う年齢

避妊手術を行う年齢

避妊手術は、生後6ヶ月から1歳までに行うことが望ましいとされています。乳腺腫瘍の発生を考慮すると、生後6ヶ月以降で初めての発情が来る前に行う方が良いでしょう。

一度発情すると、手術する意味がないと考えている飼い主さんも少なくありません。乳腺腫瘍は発情の回数が増えると、発生のリスクが高まります。少しでもリスクを下げるためにも、発情後なるべく早い時期に手術をすることをお勧めします。

まとめ

まとめ

避妊手術について解説しました。避妊手術のメリットとデメリットを比べても、メリットの方がはるかに多いと思います。避妊手術を受けることで命に関わる病気を予防でき、より長く一緒に過ごせます。これから猫を迎える方、お迎えしたけど手術をしていない方は、今一度避妊手術について考えてみてはいかがでしょうか。


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